第3話

 はい。こんにちは世界。

 俺が転生して更に三年が経過して、俺は目出度めでたく八歳となり、社交界デビューする事になった。


 簡単に言うと今日、俺の誕生日パーティーがある。面倒くさいがパーティーには強制参加だし、婚約者候補を今日中に見つけなければならない。

 因みにこの世界は一夫多妻だ。思春期男子諸君おめでとう。


 いや、そんな事はどうでも良くて。今回のパーティーで必要な事は二つ。それは警備の確認と協力者又は協力者候補の発見である。


 警備の確認は一年後に控える弟の誕生日パーティーの日に計画のかなめを盗りに行く。今日はその為の予行演習の様なものだ。面倒くさい事は嫌いだが、それで失敗するのはもう前世で懲りた。


 さて、協力者については両親はマストだが、残りはどうするべきか……

 条件は城内での立場があり、俺と二人きりで話しても違和感の無い者……居るのかそんな奴?

 後々、考えるか?いや、こういうのはさっさと終わらせた方がらくだな。


 しばらく目を瞑り顎に手を当て考える。


 …………あぁ、そうだ。婚約者の親ならば不自然ではなく無いか?幸い俺の顔自体も悪くないし、王太子の嫁ならば最低でも伯爵家の人間だ。それくらいなら有能な奴も居るだろ。


 当然、最高は上位貴族の公爵家だ。と言っても俺の建てた計画上あまり気にする必要もない。

 

 よし、良い感じに考えが整理出来た。後は今日それを実行するだけだな。

 

 丁度、考え終わったタイミングで部屋の扉がノックされた。


「殿下、もうすぐお時間です。準備の為ご入室の許可を」


「入れ」


 俺はに声音を数段落として冷たく言った。


「失礼します」


 メイドが綺麗な一礼をして部屋に入った。


「では、身支度をさせていただきます」


「早くしろ。無能が」


 ここ数年でようやく演技も板に付いたな。と言うか、自分で建てた計画とは言え罪悪感がすごい。

 俺は表情には一切出さずメイドに心の中で謝罪する。前世からポーカーフェイスだけは上手かったからな。


 そこから数分ほどで着替えが終わり、部屋から出てメイドの後ろを歩く。


 今日が俺の計画の第一関門。これで失敗したら笑い者としてこの国に残る事になる。それだけは嫌だ。元々、目立つのは好きじゃないんだ。なのに王太子になって期待されて、頑張らないといけない。本当に面倒だ。


 はぁ〜、と無意識に大きな溜め息を吐いた。その様子にメイドは疑問を持たずに俺を会場まで案内する。流石は国王に仕えるメイドだな。

 

 まぁ、愚痴はこのくらいで良いだろう。さてと、今日も自堕落な生活のために偽悪と成りましょう。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 パーティー本番十分前


 俺はまだ会場には入らず、王族専用の待合室のような場所で柔らかいソファに座り頬杖をつきながら足を組んで横柄な態度で果実水に飲んでいた。


 目の前には目を瞑り休んでいる国王と静かにワインを嗜む第一皇妃の母がいる。因みにこの世界の成人は十五歳からで酒が飲めるのも成人した後である。


 会場とはカーテンで区切られており、騒々しい音が聞こえてくる。ソファから立たずにカーテンの隙間から会場を覗くと会場は多くの貴族で溢れ返っていて、更には俺と同じくらいの令嬢令息がいた。おそらく、若い内から俺と関係を結びたいのだろう。全く分かり易い連中だ。


 というか、あの子供の中から婚約者を探すって……子供は好きだが恋愛対象にはならんぞ。まぁ、適当に扱い易そうな奴を選べば良いか。


 そんなこんなで各々時間を潰していると会場から楽器の音色が聞こえた。王はすぐに目を開け立ち上がる。


「時間だ。行くぞ二人とも」


「はい」


「…………」


 母はしっかり返事をしたが俺は意図的に無視をした。その態度に王は呆れた表情を見せた。

 

 カーテンがゆっくりと開いていき、両親と俺の姿が顕になる。会場は拍手に包まれており、王が右手を少し挙げると音楽と拍手が止んだ。


「この度は我が息子、クリアノートの生誕会に集まって貰った事、感謝する!今宵のパーティーを存分に楽しんでくれ!」


 王が声を張り上げ、会場を俯瞰する。


「クリアノート、挨拶を」


 王に促され、一歩前に出る。そして、息を大きく吸い込み言った。


 「私はクリアノート・ファルクこの国の王太子である!そして次期国王として宣言しよう!私は歴代最強の国王となる!」


 端的にそれでいて力強く。傲慢で無知を演出しろ。愚かであれ。一歩間違えば不敬と取られる言葉。この言葉に誰か釣られる事を願う。


 これで後には引けなくなった。本来なら王である父の株を上げる様な事を言う必要があった。形だけでも敬っていると証明しなくてはならない。だが、俺はこの公の場で現国王を超えると宣言してしまった。これで超えられなかったら、俺は王族の恥として王家の顔に泥を塗る事になる。


 故に実行した。真に王国をそして王族に忠誠を誓っているのであれば俺の行いを咎めに来るだろう。いや、行動を起こさないにしても怪訝の視線くらいは向けてくるだろう。此処で貴族たちをふるいに掛ける。俺に媚を売ってくる者はクロだ。俺の協力者に相応しくない。咎めにきた者を俺の協力者にする。理由は後で説明しよう。これ以上は長くなる。


 俺はゆっくり周囲を見渡した。


 はてさて、誰が釣れたかな?

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