11話 各々の嫉妬と視点の語部

そして話は生徒会室の2人へと戻る。

「それにしても大胆に行動したな」

「というか多分だけど渚ちゃんも早瀬くんのこと好きっていうかもはや両想いだと思う」

「え、そうなのか?じゃあ、試験云々じゃなくても彼奴の告白は成功するじゃんか」

「え、其処なの?気にするところ。私的にはもっと別なところで気にしてたのだけれど」

「その発言からして放課後デートのことを言ってるのか?俺的には結果論のような気もするけど」

「違うよ?ちゃんと計画してたことなんだから」

そうなのだろうか?確かに有栖が両想いなことをある程度読んでいたのなら有り得た話だが。

「それは、気が利いてるけど。ちゃんと見てるんだな、何気に」

「私は生徒会の役員だよ?学校のことをちゃんと見なくてどうするの?」

「でも、何で好きって分かったんだ?航は何となく分かってたけどさ」

「結構前にね、渚ちゃんが私に相談して来たんだよ。友達が好きな人が出来たけどアクションの起こし方が分からないって相談しにね。最初は私も半ばで聞いてたんだけど。どうにも、そのって人の印象が渚ちゃんに似てたし好きな人ってのも早瀬くんに似てたんだよね」

「成程な。それで、天乃さんの好きな人が航じゃないかって予想した訳だ」

「まぁ、幼馴染として何年も過ごしてるからね。渚のことはある程度分かってるつもりだよ」

「そうだったのか」

「うん。それに渚ちゃん。注意して見てないと分からないけど授業中も早瀬くんのことを視線で追ってたこともあるし早瀬くんと喋る時だけ声のトーンが違うなぁって思ってたんだ」

「もう其処まで来ると探偵か相談役に適任だよ」

「ううん。勘違いしてるから言っておくけど私は初心者だよ?それも昔から。ずっとね」

ずっと。という言葉に少し違和感を覚えたがこれ以上言及することはしなかった。

「よし!これを棚に戻したら終わりだよ」

やっとか。そう溜息を吐きゆっくりと身体を解した。

「そう?私からすれば案外早かったけどね、雄斗と話してたのもあるし。それじゃ、私たちも行こうか」

そうして有栖に手を引かれた俺は難色の色を示した。

「え、航と天乃さんの所に行くのか?流石に不味くないか?」

「行かないに決まってるでしょ。私の頑張りはな何だったのよ?君の家に行くの!」

また来るのか?とジト目を向けるとまぁね。と笑みを浮かべた。本当に何なんだ?

「またも何も私の家とすぐ近くだしさ、こういう運命だと思って諦めたら?親公認なんだし」

前にも話したような気がするが俺と有栖の家は近くなのだ。俺はアパートに住んでて有栖は一軒家と違うものの徒歩3分の距離である。個人的には幼馴染だとしても限度があると思うのだが両親が公認だからどうしようも出来なかった。

「と言う訳で雄斗の家で2人での打ち上げを開催します!」

「人の家で勝手に宣言しないでくれ」

「そう言っておきながら随分と乗り気じゃない」

まぁ、図星だからな。そうして家に着くと

「うん、やっぱりね。私の予感は正しかった」

「何だよ、人の家に入って早々。何か気になるのか?」

「女の匂いがする。それも最近のね」

「それは自分のじゃないのか?ちゃと風呂に入ってるのか?」

「ちゃんと風呂に入ってるから!じゃなくて。コレ、女子高校生の部屋着でしょ。私以外の」

「それは多分、俺の妹のだと思うよ」

流石に隠し通すのは無理だと諦めた。幼馴染に嘘を貫くのは罪悪感も湧くし名前を伏せれば大丈夫か。

「実は義妹が居るんだ」

固まった有栖に改めて切り出すと有栖が目を見開いた。

「え、年齢は?」

「俺と同じだよ。因みに義妹が居るのは数年前からだ」

「数年前。どうして私に言わなかったの?」

「え、だって無理に言う必要はなかったし、親に余り口外するなって言われてたから」

「でも、幼馴染の情報は互いに知るべきでしょ?」

そう有栖は抗議するけど俺も有栖のは情報あんまり知らないんだけどな?そう彼女にジト目を向けた。

「そ、それは。まぁ、私も君も思春期だし?多少はしょうがないと思うんだけどね」

その後、何とかはぐらかして話題を逸らすことに成功したがそれでも多少は怪しまれた。それはそうか。

その時だった。幸か不幸かその義妹怜奈からのメールが届いたのだ。


「今日、家に行っても大丈夫?1人だとすることないし」

「今日は駄目だ。何しろ、有栖が来てるんだよ」

「有栖さん?2人で何をしてるの?」

「え、打ち上げだけど」

「打ち上げ。私も参加するから、じゃあ今から」

「何でだよ。怜奈が来たら絶対に揉めるじゃん。関係もバレるし」

「最近になって思ったんだよね。もう隠さなくても良いかなって」

「駄目に決まってるだろ。まぁ、義妹が居ることは話した。怜奈のことについては言ってないけど」

「大丈夫。私たちで口裏合わせてたらバレないって」


念の為に怜奈が来ても良いかを有栖へ聞き

「駄目って訳じゃないけど、あんまり嫌かも。うん、嫌だなぁ」

と即答された。それも凄く冷徹な答えだった。え、本当に玲奈は有栖に何をしたんだ?。

「え、何でだよ」

「義妹は仕方ないけど私以外の女性は入れたら駄目。私は幼馴染って権限ああるよ?でも、雪代さんは雄斗と何の関係性もないでしょ?だから、駄目。雄斗が良いって言っても私が駄目だから彼女には断って」

「それはもう、嫌って言うより駄目に走ってるような気がするけど(というか俺と怜奈は義妹なんだよな)」

「まぁ、確かに雪城さんは有栖みたいな関係性はないな」

「そうでしょう?残念だけど、そういうことね。あ、夜御飯は私が作るから」

綺麗に斬り捨てられたな。マジで怜奈が何をしたのかが気になるが教えてくれないしなぁ。因みに


「私、義妹なんだけど?幼馴染の柊木さんより関係深いのだけれど」

「まぁ、義妹も幼馴染も血が繫がってないし其処はどうとも言えないけどさ」


その後、落ち込む怜奈を何とか宥めさせることには出来た。勿論、明日家に呼ぶことを約束して。


「夜は唐揚げです。え?って思った?実はね、練習して出来るようになったんだ!」

「人の心を見透かしたような発言だが不安過ぎる。本当に大丈夫なのか?」

「失礼な。私もちゃんと出来るからね?」

そうして遠くから見ていたのだが、

「ほ、ほら出来たでしょ?」

「そうだな。ちゃんと出来たな」

まぁ散々だった。料理は魚系しか無理な有栖だが(意味不明だが)それ以外は基本的に駄目なのだ。

「俺が手伝わなかったら苦戦してて終わらなかったな」

「難しいんだね、揚げ料理って。雄斗の見てたしある程度練習したから出来ると思ったんだけど」

そりゃあなぁ。と思いつつも机の上に並んだ料理はまた豪華だった。

「何時の間に買ったんだ?惣菜」

「さっきメールしてた時に走った」

「え、あの短時間で?嘘だろ。あ、でも其処のコンビ二ならって其処まで豪華にするか?」

「まぁ、打ち上げだし。雄斗に期待の意味を込めてね?」

「期待?あぁ、ホワイトデーってことね。明々後日に控えてる。うん、急だな」

「雄斗、楽しみにしてるね」

「有栖って甘めが好きなんだっけ?」

「そうだよ。ふふっ。今年は去年を越えてくれるって信じてるから」

まぁ、楽しみにしててくれ。そんな感じで今日を終えた。

 ******************

「さて、どうするか」

学校も考査を終えると話題もホワイトデーへと移って行く。ふと教室の前方を見ると航と天乃さんが居た。

「それにしても彼奴等の距離、凄く縮まってるじゃんか。元気そうだな、航」

「元気そうだな。じゃないんだよ、雄斗」

な、何だよと聞くとありがとうと小さく言われ頭を叩かれた。お礼半分恨み半分ってことか。

「あ、あぁ。その様子だと楽しめたようだな。良かったじゃないか」

「ま、まぁな。渚と楽しい時間だったけどってそうじゃないんだよ」

「なぁ、さっき凄く仲睦まじかったけど告白したのか?」

「告白は考査の結果次第って言っただろ?」

「俺的にはもう告白しても付き合えると思うんだがやっぱり、自分の枷は外せないのか?」

「当たり前だろ。自分に出した課題を成せなくて渚に告白出来る訳がないだろ?」

「なら、頑張ってくれとしか言えないな。でも、親友として応援はしてるからな」

「何だろう。応援されてるようで皮肉を言われてる気がする」

事実、その通りだったりする。幼馴染で仲も良く放課後に喫茶店でデートをしてるのにだ。

「(お前ら、もう付き合えよ)」

最近読んだ漫画の名言を引用しつつ溜息を吐く。

「それで、俺から見れば考査の結果云々で告白出来なかったとしても付き合えると思うけど」

「そんな訳ない。幼馴染だからある程度、忖度されてるだけだって」

その反論に思わず唸ってしまった。何故にそうやってネガティブ思考へと走ってしまうのだろう。

「(まぁ、でも有栖との関係を考えるとそうなるのも分からないでもないけど)」

本気の恋愛を出来てない俺が言うのもお門違いだし。

「まぁ、俺から言うことはない。強いて言うなら惚気は程々にな」

ヘタれる親友に呆れるのだった。

 ******************

「お兄ちゃん、随分と疲れてますね。そんなに大変だったのですか?」

「まぁな。大変も大変で色々あった。マジで嫌になりそうだよ、お兄ちゃんは」

「何があったの?そんなに雄斗のことを苦しめるなんて」

待って、怜奈ってそんなお姉さん系だったけ?と聞くと急に無言になった。え、何?怖いんだけど。

「親友に彼女が出来そうでさ。勿論、俺としてもしあわせなって欲しいから手伝ってたんだけど」

「彼女が欲しくなったの?」

「今、欲しいって訳じゃないけど。でも、話題を振られても答えられない日が来るかもって思うとさ」

「まぁ、そんなに気を落とすことないと思うけど。それに、早瀬くんでしょ?友達って」

「流石に分かるか。彼奴は彼女が出来るかもしれないけど俺は彼女が出来ないしさ」

「そうかな?お兄ちゃんを好きになる人も必ず居ると思うよ」

「そう思っておくよ。怜奈、早く食べないと冷めるぞ?」

「あ、本当だ。忘れてた」

「そういや、怜奈にも気になってる人って居るのか?」

「居ないけど。でも、好きとまでは行かないけど気になってる人は居るかな」

意外な発言だった。怜奈は男子を毛嫌ってたし興味を引く男子など居ないと勝手に思ってたが。

「(でも何か変な気分だなってこれだとシスコンそのものじゃないか)」

「冗談だよ?お兄ちゃん」

「冗談なのかよ。焦ったんだけど。でも、まぁ怜奈は男子が苦手だしな」

「うん。それはそうなんだけど。其処まで焦るのは流石にシスコン過ぎない?」

「別にシスコンって訳じゃない。唯、義妹でも大事な妹だから気になるだろ」

そっか。そう零し切なそうな顔をする怜奈に訳を尋ねてみても答えることはなかった。

 ******************

中学校で恋愛なんて正直甚だしいと思っていた。だから、俺は勉強を優先させた。そして、全部失った。

「君の中学校ってどんなものだったの?」

誰かにそう聞かれて俺はどう答えたのだろうか?もう聞かれることもないだろうから俺は答えないけど。でも。

「言うならば、全部間違ってた。小学校の頃から俺は何も変わらなかった。それだけです」

自分で自分を嵌めた。今、思えば何もかも中途半端で何の取り柄もない「凡人」だった。だから、俺は決めた。

「どうせならとして生きると」

「何で凡人を目指してるの?」

俺は凡人じゃなきゃ駄目だ。誰にも迷惑を掛けず称賛されず居るべきなのだ。

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