8話 彼女の賭博と提案

「賭けって?内容によっては乗らないからな」

「簡単だよ。次の考査で平均を取ったら君の負け」

「は?何でだよ。俺が平均を取る為に頑張ってるのは知ってるだろ?」

「うん。でも、条件を達成う首位を死守するより簡単でしょ?」

「俺だって平均を死守してるんだけど」

「でも、雄斗は乗るしかないんだよ?状況的にね」

「はぁ。それで、賭けの報酬は何なんだよ?」


「負けた方は勝った方の言うことを聞く。これでどう?」


「俺かrしたらそんなもの理不尽じゃないか」

「まぁね。でもそうしなきゃ平均を取ろうとするでしょ?分かってるんだよ」

「兎に角、そんな理不尽な賭けには乗らないから」

「仕方ない。奈々へ返信しなきゃ。雄斗の過去について」

「そうやって人の弱みを利用するのは良くないと思うぞ。乗ってやるから。何だ?」

「即、釣られてるじゃん。駄目だね、雄斗」

「そもそも脅迫なんだよなぁ。それって」

有栖の凄んだ顔を見て思わず溜息を吐いた。

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「お前、何処へ行くんだ?」

「頼まれた不足してる機材の購入だけど」

「お前って何でそんな無愛想なんだ?もっと元気出せって」

「そうだな。まぁ、出せるだけ出しておくよ」

「余裕そうに交わしやがって。それで、何を買うんだ?手伝うぞ」

「そんな手伝う程のものでもないけどな。でも、ありがとう」

「断らず黙って手伝って貰うべきだからな?此処は」

そう愛想あって笑った彼を_後々裏切ることとなるなんて当時の俺は考えてなかったのだった。

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「おはよ。起きた?」

「随分と乱暴な起こし方をしてくれるな」

「幼馴染が起こしたのにその反応は酷くない?それにしてもまた唸ってたしね。大丈夫なの?」

「最近、寝付けが悪くてさ。気にする程じゃないけど」

「そうなんだ?影響出る前辺りでちゃんと休んでおくんだよ?」

「それを訴えられると何も言えねぇけど_まぁ、考査さえ終わったら寝るつもりだし」

「そう。なら早く行きましょ。ほら、早く起きて」

「え、何で?」

「知ってるでしょ?考査の3日前になったら出来ることがあるじゃない」

「えぇ?結構、混雑するよ?嫌だよ、って引っ張るな。分かった、動く。動くから!」

説明してなかったが俺たちが通う高校では3日前になると普段、昼休みや放課後での利用のみ使うことの出来る図書館が朝から解放されるのだ。その為、考査を頑張る人らで毎回混雑してる印象がある。因みに、有栖は最速で行って並ぶ程のガチ勢である。流石は学年末1位を維持する実力か。

「味噌汁飲んだら行くよ」

「味噌汁なんて昨日作った覚えがないんだけど。何時起きなんだ?」

「何時だと思う?因みにこの味噌汁は雄斗のお母さんが作った奴だよ」

「普段だし4時だと思う」

「残念だったね。私は3時に起きて外を走って朝風呂して身体解してるよ」

「人の家で朝風呂する習慣をそろそろ止めようか?マジで」

「最近は使ってなかったし親も公認だから大丈夫だよ」

「マジで他の人にその話を言うと騒がれるって」

「寧ろ、尊敬されるか嫉妬の嵐だと思うな。まぁ、私は言わないし雄斗は言えないだろうけど」

「公言してみようかな。本当に」

「そんなことで訴えてくる君の自業自得でしょ?一緒に風呂に入った経験のある幼馴染だよ?」

そうだけどさぁ。と言葉を濁し顔を洗う。冷水で叩き起こされた感覚を覚えた。

「味噌汁は雄斗の好きな豆腐とわかめと油揚げの大好きな奴」

「何で俺の好みを分かってるんだよ?って思ったが俺の母さんが作ったって言ってたな」

「本当は私が作ったって言ったらどうする?」

「その時は普通に恐怖を覚えるかな」

「大丈夫。私は作ってないから。でも、作るなら同じものを作るかな。その組み合わせは私も好きだし」

成程。自分も好きだしお前も好きだろ理論(雄斗命名)を展開してくると。厄介な強敵だな。

「じゃあ。4分で支度しな。待ってるから」

「デジャヴ感じるし止めろ。後、そんな早く出なくても絶対に間に合うって」

「駄目なの。ずっと確保し続けてきた特等席を取らなくちゃいけないんだから」

特等席。そんなものあったっけ?と考えてると散漫してると怒られたので慌てて残りを飲み干した。

 ******************

「寒過ぎだろ。もう3月なんですけど。って文句言ってカイロ買ってたところで無駄になるしなぁ」

「前も言ってたような。手でも繋いであげようか?」

「人前で何時噂になっても可笑しくないんだぞ?止めろ」

「そうやってすぐ保険に走る。そんなことじゃ人生楽しくないよ?もっと攻めなきゃ」

「残念だけどお前の人気とモテる所為なんだけどな。俺が此処までする原因は」

「私、別にモテようと思って生活してないし」

「なら、学校での口調も俺と同じようにしようよ。そうしたら有栖のの本性がきっと出るよ」

「やっぱり、世間体の目も気にする必要だってあるでしょ?今時さ」

「俺も世間体の枠組なんだけどね。幼馴染って概念を取っ払えば」

「残念だったね。その属性は生まれた時にあるよ。後天的じゃなくて」

「お前の性格_正しくは口調の変化を直してくれ_そうだな、清楚を希望する」

「それって、普段の世間体を意識した私じゃん。駄目だよ。そんなのじゃ」

「何でだよ。それで充分だろ。それ以上のモノを求めてません」

「ギャルになれと」

「副生徒会長の話をなかったことにする?じゃあ」

「すいませんでした。ってか、してくれるの?」

その時、出した話題を間違えたと思ったがもう仕方なしだ。

「まぁ、な」

「流石!信じてたよ。私の幼馴染。これならもう無敵だよ。ふふーん」

「フラグを建ててるが俺のスペックを舐めるなよ。凡人中の凡人だぞ」

「でも、それを死守する才能があるじゃん」

「才能って判断して大丈夫なの?それ。俺が言うのも駄目な気がするけど」

「あ、もう着くよ。ほら、急がなきゃ」

話題を急に終わらされて少し不服だったが安心した。

 ******************

「おはようございます、汐屋くん。随分と早いですね。5番手ですよ」

先に行った有栖と合すると世間体(?)の口調へ変化を遂げた有栖が凄くニコニコしていた。嫌な予感がする。

「次の人どうぞ」

「ありがとうございます」

券を受け取って有栖と別れようとして無事、引き留められた。

「あ、汐屋くん。どうせなら、一緒に勉強しませんか?」

「いえ、間に合ってるんで」

「それなら、今日の話題を過去の話にでも咲かせようかと」

「そうだな。天才な柊木さんが誘ってくれるなら遠慮なく」

マジでこの脅迫を何時か止めないと乱用される。ってかもうされ始めてるんだよなぁ。そう改めて決意した。

「此処です。どうです?朝日が綺麗でしょう」

まぁ。と言葉を漏らす。朝日を浴びて眩しいかと思えばそうでもなく捗りそうなだった。

「私、何時も此処で勉強してるんです。死守しなきゃって思うとやる気も出るんですよ」

「そうだな。じゃあ、俺は物理するから」

「どうせなら、英語したらどうですか?苦手ですよね」

昨日の続きを教えてあげるとノートに書かれたので今度は遠慮なく教えられることとなった。暫くして、

「わ、分からん。どうしたら解けるんだ?」

「難しいですよね。其処の問題。汐屋さんって仮定法、苦手でしたっけ?」

「文法は覚えてるけどその応用が無理なんだよね」

「そうなんですね。では」

その時だった。後方からポンと肩を叩かれた。ゆっくり振り返ると其処に居たのは

「よっ、雄斗。生きてるか?」

怜奈、ではなく告白向け奮闘中の親友の姿があった。

「おっ、航。お前、今日は早いんだな。普段は7時台で学校に来るのに」

「まぁな。昨日も話したけど俺は本気なんだよ」

「それは知ってる。昨日の頑張りでな」

「分かってるじゃねぇか。今日も頼むぜ」

「あの、早瀬さん。私も参加して良いですか?」

「柊木さんも?それはありがたいかもしれない。でも、残念だが」

「是非、お願いします!」

えぇ?と困惑すると有栖が笑みを浮かべた。手を回してたな、此奴。

「ありがとうございます。早瀬さん」

結局、航をを加えた3人で勉強会をすることとなった。暫く勉強を続けてると用事で航が一度離れた。

「お前って航と仲良かったっけ?」

「別に仲良くはないですよ。幼馴染なのは事実ですが其処まで交流はありませんでしたし」

うん、即答するの止めない?航が悲しむよ。

「私としては雄斗がちゃんと勉強してるのかを確かめたいだけです」

「あっ、そうですか」

「その顔は信じてないですね」

当たり前だろとジト目をする。理由なんて決まってる。

「そんなに勉強したいのか?俺と」

「自意識過剰では?」

ぶっ飛ばそうかと思った。航が居なくなって2人になったらすぐである。

「何でそうなるんだ。なら、俺は教室に戻るけど」

「そうですか。偶には、休憩も必要ですしね。私も戻ります」

「それは、航が困るから止めてやれ。後、冗談だ。本気にするな。ところでさ」

「な、何でしょう?」

「何で、そんなにぷるぷる震えてるんだ?何かあったのか」

「ふ、震えて、ま、ませんよ!唯、その。な、何でもないから!」

「やっぱ、強がってんじゃん。何に強がってるのかは分からないけど」

強がってませんと背中を叩いてくる有栖に思わず苦笑いしてしまった。明らかな事実でしょ。

「何でその姿を人前で出さないんだ?本当に」

「処世術って言ったでしょ」

表情を戻した有栖が答えるが些か不自然だ。本当に手の掛かる幼馴染を持って大変だ。でも

「(ずっと、友達のままで居てくれたらな)」

そう思っても口に出すことはなかった。

 ******************

「応用も出来るようになりましたね」

「合ってる。お前の成長速度が異常なんだけど」

「柊木さんの教え方の上手さだよ」

「成程な。つまり、俺との戦争を望んでると?」

「冗談だって。そんな怖い顔すんなよぉ」

「怖がってますよ?汐屋くん」

謎の有栖の援護射撃もあり黙ってしまった。有栖はどっちの味方なんだろう。

「それで、俺は渚に勝てるのか?」

「それは結果次第だから正直、分からん。問題傾向にも寄るだろうけどな」

「そうですね。因みに今の状況だと上位成績表に乗るかどうかで五分五分って感じですね」

「全然届いてないじゃないか」

「まぁ、載るだけでも十分なんだけどな」

上位成績表。全ての考査の結果を返却した後、靴箱前に張られるモノであり学年の25位まで掲載される表だ。それだけでも十分凄いとは思うのだが何しろ今回の航は天乃さんに勝つ必要がある。そんな天乃さんは常連も常連だし1桁にも余裕で食い込む成績。つまり、壁を超えるにはまだまだなのだ。

「そっかぁ。まぁ、最後まで頑張ってみるよ」

「あぁ。頑張ってくれよ。そして、惚気話を聞かせてくれ」

そう意気込む親友の姿を応援するのだった。

「もし、勝ったら奢ってね。高級アイス」

俺の気持ちを返してくれ。そう呆れた。やっぱり、航は航のようだ。

 ******************

「次の考査も大丈夫そうですね」

「あぁ。こそ大丈夫なの?」

「雄斗様と勉強してるので大丈夫ですよ」

「でも、俺と勉強してて不安じゃないの?」

「御冗談を。ずっと上位の成績。それも学年3位以内を死守してるではないですか」

「でも、俺って英語苦手だしさ」

「私も理科は苦手ですよ?互いの苦手科目を補ってこその勉強なのです」

そう彼女は息を吐くと

「仮に今回失敗したとしても雄斗様と普段から助け合ってるので心配は御無用ですよ」

「そっか。なら、もうちょっと手伝ってくれる?此処を解きたいんだ」

「はい。雄斗様の為なら何時までも」

「ありがとう、若菜。本当にね」

そう笑うと彼女の頭を撫でた。

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