2話 早々の回収と浸る夜

「お前の所為で、散々な結果なんだよ!本当、腹の立つ奴だな」

「邪魔なのよ。此処に居られると。さっさと消えてくれる?班の話で重要な部分なの。空気は読めるでしょ?」

「お前なんて居ても居なくても大して変わらねぇんだよ!お前なんて」

「お前が居るとむしゃくしゃするんだよ」

「頼む。皆の為なんだ。此処から消えてくれ」

「お前が居たところで邪魔なんだよ!」

「皆必要な存在だけどやっぱ、お前だけ不要なんだよなぁ」

「さっさと失せてくれる?邪魔なのよ」


「ーすみませんでした」


 ******************

その言葉で思わず飛び起きた。随分と憂鬱的な悪夢だったと溜息を吐く。水を飲む為に降りようとして落ちた。

不審に思って寝てた場所を見るとソファの上だった。意味深に思っていると段々と記憶が戻ってきた。

「そっか。彼奴を泊らせたんだった。すっかり忘れてた。うん、痛いな」

腰を摩りながら俺は立ち上がり水を注ぐと勢い良く飲んだ。

「水、冷てぇな。眠気吹っ飛んだんけど」

仕方ない、勉強でもするか。俺はそう思うと鞄から参考者を取り出した。

「そういえば、あの後。どうなったんだっけ?」

眠気が飛んだんだ。記憶もゆっくりと思い出してくる。それは6、7時間前の出来事である。

 ******************

俺が教室に入ると既に居た先客が俺を訝しむ目で睨んだ。

「誰なんだ、お前。用がないならさっさと帰った方が良いですよ。先輩」

「俺は今から担任との面談があるんだ。お前には関係のないことだろう?」

「へぇ?俺は女子を呼び出しるって噂を聞いたのですが知ってます?

「何でその情報を。何しに来た」

「俺は唯、その子の代わりに話に来たんですよ。彼女は今、別の用事があるので」

「話?俺はお前と話をするつもりはない」

「そうですか。では、勝手に聞いてくれて構いません。相談に乗った話なんですが先輩って問題児なんですね」

「何だと?」

その瞬間、空気が変わった。どうやら、早速俺の挑発に乗ってくれたらしい。警戒しないのだろうか?

「お前、先輩を問題児扱いするって正気か?」

「正気ですよ。体格の良い男子が何でこんな遠いところに来て女子を呼び出すんですか?」

そう今、居るのは俺らの教室から離れた第2図書室保管庫。こんな場所に来る人なんてまず居ない。

「俺が黙ってたら良い気に乗りやがって!」

距離を詰めていきなり拳を振るってくるが勿論、

「体格の割に沸点は短いんですね。正直、意外でしたよ」

「逃げんなよ!」

「逃げてないです。避けてるだけなので。後、暴力振るなら俺も動きますけど!」

話が通じ合わなかったようだ。うーん、もうちょっと説得するべきだったかな。避けながら考える。

「避けるんじゃねぇよ!」

「避けるに決まってるでしょ。当たったら痛そうだし」

そういうと俺は身を翻し蹴りを避けるとそのまました。

「後は先生とお話ししたらどうですか?」

倒れ込んだ先輩にそう言うと俺は部屋を出る。そして入れ違いで入る先輩の担任。

「俺は用済みだな。まぁ、話し合い出来て良かったよ」

俺はそうう呟くとその場から去るのだった。

 ******************

「すみません、会長。急に呼び出してしまって」

「僕の方こそごめんね。もっと話す時間を作れたら良かったのに。それで話って?」

「会長って校内の規則覚えてますよね?」

「それは勿論。全て暗記してるよ」

「そうなんですね。それでは、規則4について質問しても良いですか?」

「規則4。そういえば、規則の廃止可決寸前で取り止めになったよね。はぁ」

「それで、聞きたいんですけど。廃止しようって言ったの会長ですよね?」

「どうして、そう思うの?僕は率先となって廃止しようとしてた立場だけど」

「別に言い訳なんて要らないんですよ、会長。逃げ道に使おうとしたって知ってますから」

「ど、どうしてそれを」

「会長って副会長のこと好きなんですよね。そんな中で規則が廃止される。当然、恋愛ブーム待ったなしですし副会長は人気も高いですからね。告白に失敗したらどうしようって思ったんじゃないですか?」

「そ、それは」

「もし、失敗したとしても規則で縛れますし成功すれば廃止で良い。凄く便利ですね。しかし、それを私用するのは余り良くないと思います」

「柊木さん。彼女は僕のこと、好きだと思う?」

「それは分かりません。でも、少なくとも自分の為に規則を利用する人は好きになれないと思いますよ」

「それも、そうだね。明日、先生たちと話し合ってみるよ」

「それが最善策だと思います。私も手伝いますので。唯、私の被害の尻脱いはちゃんとして下さいね」

「それは悪かった。ちゃんと対応しておくよ」

そうして会長は静かに諭されたのだった。

 ******************

俺が教室へと戻る丁度、有栖も戻って来た。

「その顔を見ると説得出来たようだな」

「最初は懸念点こそあったけどやっぱり会長はちゃんとした人だったよ。振り回されただけで」

「それは良かったな。俺の方もちゃんと説得出来たって言っておくよ」

「ありがとう。代わりに行ってくれて。お陰で私の汚名も晴れそうだよ」

「そうか。じゃあ、俺はお役御免だな」

「取り敢えずはね。規則も無くなるだろうし私の肩の荷もやっと降りたよ」

確かに汚名も晴れて課題だった規則の廃止も確定的。有栖の立場からすれば楽になったのか。

「喫茶店に行かない?お礼に何でも奢るよ」

「それはありがたいけど俺は遠慮しないタイプだぞ。高価な奴でも大丈夫なのか?」

「ふふーん。ちゃんと予見して金を貯めてたので大丈夫なんです」

「其処はちゃんと予見してるのかよ。無駄がないな」

そう呆れたのだった。

 ******************

「じゃあまた明日な」

喫茶店を出たのが8時過ぎだからそろそろ帰らないとなと思っていると

「明日な、って私寄るんだけど?」

「寄るって、何処へ?」

思わず首を傾げると有栖が呆れた顔をした。

「言わなくても分かってるでしょ。君の家に泊まるの。大丈夫でしょ?」

「駄目に決まってるだろ。取り敢えず今日は素直に帰れ」

何で人の家に泊まろうとしてるんだ。此奴は。昔、泊まったことあるよね?と抗議するが俺は逃げ帰った。

「はぁ、はぁ。何で彼奴は隙あれば泊まろうとするんだ」

高校生なのだし有栖は女子なのだからちゃんと警戒心くらい持って欲しい。そう溜め息を吐く。そうして、暫く歩くと自分の住んでるマンションへと辿り着いた。

「あ、風呂沸かしたから」

部屋に入るなり声がした。その声の主は勿論、

「何で勝手に部屋に入ってるんだ。ちゃんと喫茶店で別れただろ、有栖」

髪を後ろにまとめた状態でソファの上から顔を出した。

「逃げただけじゃん。それに、私たち幼馴染なんだから関係ないって」

そうう俺と有栖は昔からの幼馴染だったのだ。だから、2人の時は名前で呼ぶし学校と変わって家では言葉も崩してるのだが些か学校とのギャップとの違いがどうにも慣れなかったりする。まぁ、有栖は余り気にしてなさそうだったが。

「ちゃんと勉強してるの?」

「勉強してるよ。『平均』を取る程度にな。それ以上は出来てもしないのが俺の意義なんだ」

「ちゃんとしたら上位取れる成績なのに。本当に勿体無いよね」

「皮肉だろ、そんなんこと。はぁ、御飯出来るまで待ってて」

「やっぱり、優しいよね。雄斗は」

俺の過去を知るのは有栖だけだ。深く言わなくても彼女がくらいは読み取れた。

「ちょっと小説借りるね。読み終えれなかったらパクるけど」

「堂々と借りパク宣言してないで料理を手伝ってくれても良いんだぞ?」

「待っとくんじゃなかったの?まぁ、手伝うけどさ」

そういうと彼女は少し間を空けて切り出した。

「ちゃんとへ出たらどう?そろそろ」

そう意を決したように。でも、何処か真剣味を帯びて彼女は言った。それに対して俺は

「何度も言ってるだろ。出ることはないって」

「でも、もう前と違う環境だから。大丈夫だよ。それは私が保証するしそうなったら私が許さないから」

「前なぁ。そうだな。また、出れると思うさ」

「何でそうやって逃げようとするの?それとも、?自分の価値を」

「本当にすまん。でも、俺はちゃんと自分の価値を見定めてるから」

なら。と言葉を続けようとする有栖を制し俺は口を開く。

「でも、今はまだ無理なんだ。有栖のお陰で今があるのは分かってる。でも、何時かは前に出るから」

「なら、さっさと私へ伝えてくれても良いのに」

伝えるって何を?と思いながら俺は料理へと戻ろうとし、ソファより投げられたペンを避ける。

「本当、雄斗は駄目ね。私が居ないとすぐに泣く癖に」

「それもそうだが有栖こそ俺が居なくなるとすぐ寂しくなるしな」

「そんなことあった?私の記憶だと去年の冬に雄斗が」

「塾の合宿で雷雨の中、夜が怖くて俺と会ったら号泣した時のこと?」

「そ、それは。その節はすみませんでした」

「もう終わったことだろ。ほら、さっさと食べるぞ」

うん。と頷き有栖と御相伴を預かった。そして有栖が風呂へ入ると言ったので俺は勉強をすることにした。

「数学、困ってるでしょ?後で教えてあげるから」

と入る前に言ってたけど何で俺の苦手な科目を知ってるんだ?マジで。俺は彼女自身の素性を他の人より知ってるつもりだ。学校での彼女が表の姿だってことも冷静に見えて天然なところも真面目そうに見えて泣きついて相談に来るなど色々知っている。でも、彼女は俺よりももっと知っていたりする。これは何の差なのだろうか?

「(有栖の奴、俺のことを知り過ぎな気がする)」

それこそ趣味や日常生活も知っているのだ。何故知ってるのか?結局、考えることを諦め参考書を取り出した。

暫く勉強をふと壁に掛かっていたカレンダーを眺めてるともう3月なことに気が付いた。

「そういえばそろそろ有栖の誕生日なんだなぁ」

とはいえ月末だからまだ気にすることじゃないが頭の中には入れておくべきだろう。

「幼馴染として毎年祝っている以上、殆ど好きな物を贈ってたしなぁ。とはいえ被るのは癪だし」

「まぁ、彼奴が食べたい料理は作るとして今年は、ケーキでも焼くとするか」

そしてふとスマホを開くとメールの通知が来ていた。

「誰だ?って怜奈かよ。アイス買っててって?」

謎にパシリを要求してくるが取り敢えず断った。普段なら乗るかもしれないが今日は有栖も居る。

「今日は無理だな。彼奴、謎の独占欲を発揮するし」

そのことを知ったのは大分過去の話である。

 ******************

小学校の卒業まで1ヶ月と迫った日のことだ。

「あ、有栖。何をそんなに考え込んでんだ?」

「何ってバレンタインの予定を考えてたんだけど。勿論、雄斗のね」

「残念だけどバレンタインは女子と何もねぇぞ?」

「なら、好都合だね。その日は休みなんだし私に付き合って」

「え?友達と遊ぶんだけど」

「友達。女子ね?」

「ねぇ、話を聞く気あった?女子と何もないって言ったよね?」

「なら、その遊びを予め断って私と付き合うべきだと思う」

「何でそんなに、はい。分かりました。大事な幼馴染ですからね。付き合いますよ。はい」

彼女のみ知る「情報」を突き付けられば俺は頷くしかなかった。

「ふふっ、楽しみだわ」

そう呟く有栖にその日はずっと拘束され続けたのだった。勿論、楽しかったけど疲労もとんでもなかった。

 ******************

「別に悪くなかったけどさぁ。友達の冷徹な目を見た時は、うぅ。嫌だなぁ」

次の日に事情を知った友達から浴びた視線を考えると行動せずには居られなかった。何とか説明をして誤解を解いたが。因みに、有栖へ「何であんなことしたんだ?」と聞いたが無言の圧で答えてくれなかった気がする。今なら答えてくれるのだろうか?結局、あれはバレンタインだから幼馴染として優しを見せたのだと結論付けた。

「まぁ、今も拘束が酷かったりするけ。待て、もしかして学校とのギャップなのか?」

学校でを演じる反動を俺へ当ててると。普段、自分の意見を潰して他人を優先させる有栖。幼馴染の俺だから自分の事をを優先させて居るのではないだろうか?

「なら、しょうがない部分もあるのかな?」

もし、そうであれば有栖の休息代わりになるのは幼馴染としての役目だし仕方のない事だろう。休める場所がなければ誰だって必ず壊れてしまうから。そのことを良く痛感した身だから分かるのだ。

「本当、手間の掛かる幼馴染だよな。有栖の可愛い部分だけど」

勿論、此方側へもは還元されているのだろう。その後、風呂から戻った彼女に色々と振り回されるのだがそれはまた別の話である。

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