「凡人」な俺を「天才」な君が堕とした件
ReMiRiA
1話 凡人は天才へ手を貸した
『規則4 校内及び公共施設での恋愛を禁止する。発見次第、退学処分とする』
俺はその規則を静かに読み上げると後ろの席に座る航が話し掛けて来た。
「随分と辛そうな顔してるなってちょっと待って。今、流しかけたがお前って彼女居たの?俺の知らぬ間に」
「航、それは勘違いだ。俺は恋愛経験0だぞ」
「あ、そう。それはすまん。まぁ、でも大丈夫だ。別に俺も同類だしな。気にすることじゃない」
恋愛経験0の親友と笑い合い生徒手帳に書かれた規則を眺める。まぁ、無縁なことだ。分かってるさ。
「お前も落ち込むなって。校舎内の恋愛が禁止なだけだしよ。頑張ろうぜ」
「そうだなぁ。まぁ、でも。今は彼女要らんしな」
無縁じゃなくなるのは何時になる事だろうか?
******************
『恋愛禁止』と書かれたこの規則。批判も多く時期
「あの、
放課後。食堂の椅子へ腰掛けながら菓子を摘みながら呟く。
「クラスLINEでも皆騒いでたな。そういえば。まぁ、俺らには関係ないが」
「デジャヴ感じるから止めない?それ」
恋愛を許されるのでは?と期待した『陽』の者らの屍を拝みながら思わず苦笑した。
「何で無くなったんだろうなぁ。何か知ってるか?航」
「さぁな。でも、噂では『姫様』の提案だとか違うだとかで」
「その噂デマなんだろ?それは有栖から聞いた。ってか誰なんだ。姫様って」
「勿論、性格も人柄も良く文武も完璧で真面目で芸も秀でる柊木さんだ」
「有栖なのかよ。で、何で有栖が関与してるんだ?結果論を言ってくれ」
そう航へ返そうとし航の固まった姿を見た。微かな違和感。そして、
「その噂は私としても、鎮静化をする為で奔走してて、凄く困ってるんですよね」
唐突な声で背筋を凍らす。そしてゆっくりと振り返ると笑みを浮かべる有栖。
「あ、その。柊木、さん。えっと、噂だよ?俺は嘘だと思ってるから。じゃな!」
「おい、航!ちょっと待っ」
てと全速力で逃亡した彼のニの次へなろうとし阻まれた。そして、口を開き。
「汐屋くんって暇ですよね?」
え?と言葉を返し黙った。だって、目が。感情籠ってないんだもん。恐過ぎだろ。
「話しませんか?どうせ、暇ですよね?部活は帰宅部ですし。汐屋くん」
その冷徹な発言へ対し俺の出来ることなど決まってる。ー黙って頷くのみだった。
自己紹介が遅れた。俺は汐屋雄斗。唯の高校1年生で趣味は読書って答えておく。あ、先に言っておくけど俺は凡人だからな。天才じゃない。唯の凡人だ。それ故に凡人なりの平凡を目指してる最中だ。平均を取るのが生き甲斐だ。因みに航へそれを伝えたら狂気だろって呆れられた。何でだろうなぁ。家は校舎から少し離れたマンションに住んでるんだ。妹が居て両親も居る4人家族。唯、両親は居るんだけど共働きで殆ど居ないから
俺の親友も紹介しないとな。早瀬航って奴で昔からの幼馴染の1人だ。並みの成績だけど部活推薦も相まって身体能力の権化だと思ってれると助かる。体力テストで、全国の1桁へ入る実力を持ってるんだ。まぁ、他にも何人か交流のある友達は居るが今はこれだけしよう。追々、紹介するさ。ちゃんと友達は居るからな。
どうせなら、クラスでの立ち位置も話すとしよう。さっきも述べたが俺は『平凡』な奴だ。
つまり漫画とかで良くある「不在だと癪だけど目立った活動してなくね。でも、居ないと不自然」って感じだ。
因みに航は普通にカースト上位で女子からも人気がある。彼奴は否定してるけどな。
「話って?」
「さっきの噂の件。本当に厄介なんですよね。勿論、私は関与してませんが疑惑の目を向けられるんです」
はぁ。と溜息を吐き頬杖を付いた。
「成程な。つまり、俺にそれを援護して欲しいって訳ね。何で俺に?」
「言わなくても分かることだと思うのですが。それに、相談出来るのは汐屋くんくらいなんです」
「でもなぁ。俺は別に関係ないし表立って動かなくても良くないか?」
「私の立場を考えてくださいよ。私からしたら深刻な問題なんです」
「えぇ。じゃあ、手伝うから表立って言うなよ?」
「分かってます。私も余りこういったことで迷惑は掛けたくないので」
そうして俺は噂の鎮火を手伝うこととなった。手伝うとするなら最優先ですること、は言うまでもなく「噂の鎮静化」と「汚名の払拭」だろう。有栖が本当に関与してないなら名誉毀損になるからだ。
「それにしても噂の鎮静は既に手を回してるんだろう?誤解の解消はまだだろうけど」
「そうですね。生徒会に支障が出ますので先輩たちには協力して貰っています」
「成程なぁ。ってちょっと待て、生徒会が居るなら俺は要らないだろ?」
「それはそうかもしれませんが私を良く思ってない方も居るみたいで」
「そういえば航が言ってたな。追っ掛けが居るって」
告白された回数が増える度に諦め切れない生徒も増えるらしい。そんな彼らが裏で卑下しているのを聞いた。
「そうですね。私としては何度も止めて欲しいと言ってはいるのですが」
「多分、付き合っても終わらないから放っておきなよ。何かあったらそれはそれで相談に乗るから」
「ありがとうございます」
「じゃあ、話は終わりだな。帰るかぁ」
「どうしてですか?まだ終わってないのですが」
「もう終わったじゃん。名誉毀損の件は生徒会に任せて噂は時間を待つ。それで完璧だろ?」
「仕方ないですね。では、汐屋くんの過去の昔話でもしますか?」
「よっし!じゃあ、対策を考えようか」
此奴。俺が昔の話を嫌ってるのを知ってる癖に脅迫材料に使いやがって。
「それで、どうしたら良いと思いますか?」
「俺なら、噂を捏造するけど。それこそ、自分の身を守る為にさ」
「それって、噂を正当化するってことですし。それって本末転倒だと思うのですが」
「それもそうか。因みに、突然だけど、
「まぁ、そうですね。後、教室で名前を呼ばないで下さい。聞かれたらどうするんですか」
「それはそうだな」
「まぁ、話を戻しますが自分がモテるなんて自覚はないですけど告白は多いですね。全部振りましたが」
「なら、『自分へ対する告白の数の減少を意図で意見を述べた」って感じで話せば?」
「噂の正当性としては有効ですが他の人からすれば喧嘩を売ってるようなものでは?」
「そうだなぁ。因みに有栖って好きな人が居るって公開してるの?」
「いえ。私は彼氏を作るとも作らないとも言ってないですね」
「なら、それを使ったらどうだ?」
そうして作戦を練ること数分。有栖も納得したように頷いた。
「そうですね。でしたら、汐屋さんも手伝ってくれます?」
「え。面倒だし目立ちたくないし断っ」
と断ろうものなら「過去の話を」と脅迫する彼女へやれやれと首を振った。それしかないのか?説得の手段。
「随分と舐められたものだな。そんな脅迫へ乗ると思うのか?」
「乗らないんですね?では、早瀬さん辺りにでも」
「本当に面倒な奴だな。手伝うさ」
「随分と素直ですね。脅迫はしたものの過去のことだしもっと決別すべきだと思うのですが」
「脅迫材料として使った人の発言だと到底思えないんだけどな。それで?」
「それでって?どうかしたんですか?」
「どうせ、呼ばれてるんだろう。放課後になって態々、俺を探し出して呼び止めた辺り」
「知ってたんですか?私が呼び出されてるって」
「知らなかったけど、お前のことだ。言わなくても分かるさ」
そういうと彼女はゆっくりと溜息を吐いた。その中に微かな笑みを込めて。
******************
「俺は行くから。ちゃんとそっちも説得するんだぞ」
「勝算はありますよ。まぁ、恐らく
「そうなのか。まぁ、その結果で柊木さんが迷惑被った訳だし文句でも言ったらどうだ?」
「そうですね。ちゃんと代償は求める予定ですよ」
「じゃあ、俺は行くからお前も頑張れよ?」
「汐屋くんに任せてるのですから私自身が失敗する訳にはいかないじゃないですか」
「それもそうだな。じゃあ」
そうして俺は有栖と別れたのだった。
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