第2話
学校のチャイムが昼休みに入ったことを伝える。
僕は授業の内容をメモしていたノートをしまう。
今の状態になってしまった僕は、どうやら知能が低下しているらしい。
思考力だったり、記憶力だったり、そんな能力が下がっているのだ。
授業の内容を覚えようとするのにも、一苦労だった。
そもそも集中力が保てないので、勉学に関して本当に苦労している。
さて、お昼になったわけだが、友達のいない僕は誰もいないだろう屋上へと向かう。
少し前までは便所でご飯を食べていたのだけど、少しでも自分の気持ちを楽にするために、暗い場所や狭い場所は避けるようになった。
「はぁ~」
屋上での昼食を終え、落下防止のための柵を少し邪魔に思いつつも、景色をぼーっと眺めながら息を吐く。
今日の天気は少し雲があるようだけど、晴れといって問題ないだろう。
僕はただただ遠くを眺める。
そんな風に過ごしていると、たまに自分の意識がぼんやりとしてくるときがある。
その状態になったら、いつか屋上から飛び降りてしまうのではないかという気がする。
だから、最近では屋上でぼーっとするときは意識が薄くなり過ぎないように、授業でメモしたノートを見るようにしている。
おそらく勉学に真面目に取り組む学生に見えているだろうと思う。
まあ、他人からの評価や見え方を気にしても仕方ないのだが……。
午後の授業の開始前の予鈴が鳴る。
調子がいい日ならそのまま教室へと向かうのだが、どうやら今日は行けそうにない。
自分の心の状態や体調をはっきりと評価できなくなっている今の僕は、あまりにも不安定なように思う……。
ともあれ、自分自身を真面目な人間だと思っている僕としては、早く教室に向かうべきなのだろう。
だけど、今の僕に他人と接触し続けるのはかなり精神的に負担を感じるはずだ。
実際、校内へと戻る扉の前で僕は動けずにいる。
手は震え、不自然なまでに汗をかき、頭はぼーっとしている。
少しでもストレスを感じたら、いまにも涙が出そうなほどの状態だ。
こんな風になっていつも思うのが、僕はどうして他人を恐ろしいと感じているのだろうということ。
人の目線だったり、声だったり、ただの物音だったり、他人から発生するすべてに僕は緊張と恐れを抱いているように思う。
僕に注目しているような人間が、そもそもいるはずがないというのに……。
少しも扉の前から動けないまま数分近く葛藤していると、午後の授業が始まるチャイムが鳴った。
その音を聞いた瞬間に、僕の緊張の糸は切れてしまい、その場に崩れ落ちた。
限界だった。
僕の精神は身体を支えようという力が全くなく、授業をサボってしまったという罪悪感が募る。
そして、サボることによって自分の心の中に安堵の感情が生まれていることにも嫌悪感を覚える。
学生として頑張ろう、自分の状態のハンデがあっても頑張ろうと、そう決意したはずなのに、その決意を反故にするような現状に強いストレスを感じる。
一頻り落ち込んだ後、僕はゆっくりと深呼吸する。
僕は罪悪感や、ストレスで頭がおかしくなりそうなときは出来るだけ呼吸を落ち着けるようにしている。
一種のマインドリセットのつもりで、息遣いと共に精神を落ち着かせる。
そうして、ほんの僅か緊張が和らいだときに思うのだ。
「あ~、なんて生きづらいんだろう……」
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