第29話 奇跡のような面白さ

 皆さんはKick-Ass(キック・アス)という映画はご存知でしょうか。

 ぼくが見たのは、もう十年以上は前になるんですが、映画の神様が降りてきて作るのを手伝ったんじゃないかと思うくらいに面白いんですよ。


 誤解してほしくないのですが、これは決して監督やスタッフの費やした労力をないがしろにしてるわけじゃないんですよ。それくらいの傑作だと思っているということなんです。


 2010年に公開された本作には、ヒーロー・コミックへのオマージュ的な部分もありつつ(原作もアメ・コミみたいですね)、皮肉とギャグが入り交じったストーリーの映画です。B級感溢れる感じなのですが、なんと子どもの頃のクロエ・グレース・モレッツやニコラス・ケイジといった豪華な俳優も出ています。


 全編を通じてポップで残酷な雰囲気が流れていまして、いとも簡単に人が殺されたり、エッチな場面(これもポップなんですよねえ)も、ちょいちょいあるのですが、それが嫌じゃないんですよね。むしろ、爽快感を感じたり、クスっと笑ってしまったりするんですよねえ。少し後ろめたい感じはあるのですけど(^^ゞ


 主人公はデイヴというアメリカン・コミックのスーパーヒーローに憧れるオタクの少年です。彼は、誰もヒーローになろうとしないことに疑問を持ち、自分で本物のヒーローになろうと思いたつと、ネットで買ったスーツを着てヒーロー活動を始めます。序盤は、スクール・カーストの下位に位置している彼の悲哀が胸に刺さるんですよね。


 で、ヒーロー活動をするのはいいのですが、すぐに不良にナイフで刺され、車にはねられて死にそうになります。ですが、ここで諦めないんですね。体中に補強のプレートやボルトの入った彼は、ほんの少しだけタフになります(と言っても、痛みを感じにくくなったくらいで、特殊能力でも何でも無いんです)


 こんな彼とは別に、麻薬を扱うマフィアを追い詰めるヒーローのコスチュームを着た二人組が出てきます。親子である彼らの一人は、ビッグ・ダディ(ニコラス・ケイジ。バットマンみたいな格好です)を名のり、もう一人の娘はヒット・ガール(クロエ・モレッツ。パワーパフガールがマスクと紫のカツラを被ったような見た目です)を名のっています。


 ビッグ・ダディは実は元警察官で、マフィアの罠にはめられ、刑務所に入れられた上に奥さんを病で失ってしまうんですね。そのため、マフィアに復讐をしているのですが、その格好から本物のヒーローのようです。


 この二人が、武器の扱いに精通し、かつ格闘の技術も相当なものを身につけていて、まあ容赦なくポップにマフィアたちを殺していきます。前述しましたが、そのさまに爽快感を感じている自分にふと気づくんですよ。そして、後ろめたさも少し感じます(^^ゞ


 物語はこの二人の側面と、キック・アスであるデイヴの側面の二つが並行して描かれていきます。そして、この二つの軸が重なっていくにつれ、物語のスピード感が加速していくんですよ。

 このレビューを書くに当たって全編、見直してみたのですが、ビッグ・ダディとヒット・ガールのマフィアとの因縁や、最初は情けなかったデイヴの成長など、物語の作り方も参考になるんですよね。(見てるときにはそんなこと思う暇はないですけど)


 特に、説教臭いことも、作品に込められたメッセージなんてものも無いと思うのですがひたすらに痛快で面白いという、ある意味不謹慎な映画でもあります(^^ゞ

 そして、後半のアクションシーンには、あっと驚く仕掛けもあって凄まじいまでのカタルシスが待っていますよ笑笑


 お下劣なところや残酷な描写が、ひょっとすると合わない人がいるかもしれませんが、ぼく的にはオススメいたします。そんな感じですね。では、また!

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