第13話 初めての友達
「って、まだ誰も来てないのか」
さっさと注文を済ませたのが仇となった。食堂にて俺は、ラーメンをお盆に乗せた状態で立ち往生することとなった。
「……どこも空いてないな」
まずいな。このままだとイキって食堂に突撃した身の程知らずぼっちみたいじゃないか。このままだと調味料とかが置いてある台で立ち食いする羽目になるぞ?
「おっ、雨海じゃん。一緒にどうだ?」
見ず知らずの男子グループに声をかけられた。いくらなんでも距離の詰め方が雑すぎないか? 一目で瑠香の回し者だと分かってしまう。
「いや、ちょっと一人になりたくて。また今度頼むよ」
「お、おう。そうか、またな」
向こうも瑠香に洗脳されてやっているだけだろうし、無用な詮索はせずに断った。
にしても遅いな。いつまでつっ立っていればいい?
「こっちどうぞ?」
見ると、面識のない女子が、空いた座席を示してきた。ぼっち飯しているようだ。食堂でぼっち飯とは、教室でぼっち飯が限界の俺より数段ハイレベルだな。
瑠香の【盾】は基本的に集団で動く。この人なら怪しくなさそうだ。仕方ない。ここはお言葉に甘えよう。
「助かります。あの、お名前は?」
「私は綾垣瀬名。雨海くんだよね? 人気者は大変だね」
決して派手な見た目ではないが、彼女の凛とした声色には、惹かれるものがあった。不思議な魅力を持つ女子だ。水曜会のメンツの纏う雰囲気とはまた異質だ。
「いや、そんなことはないと思うが、なぜだか今日突然ヨイショされるようになった」
「そう。四大美少女のペットなら安泰というけね」
「別に。あいつらには飼われているわけではない」
「じゃあなんであの人たち、雨海くんとお茶したがるの? しかも毎週」
「何が言いたい?」
綾垣はカレーを平らげ、咀嚼している。次の言葉まではだいぶ時間がかかりそうだ。
「雨海くんじゃ釣り合わないでしょ。どう考えても。良いように遊ばれているだけだよ。あの人たちは『陰キャにも優しくする慈悲深い女子』を演出したいだけ」
そんなことのためだけに、水曜会を開催するなんてまわりくどいことをしたのか?
「こんなときだからこそ言うよ?」
「なんだ?」
「いい加減現実を見なよ。まずは私と友達から始めましょう」
確かに、今までが良い夢を見させられていただけなのかもしれない。今こそ、地に足つけて人間関係を構築していくときなのかもな。
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