第10話 いじめ勃発
翌日。
仕方なく教室でぼっち飯していると、何やらクラスの陰キャ男子が囲まれていた。
囲んでいるのは確か、キョロ充グループの連中だったか?
「なぁ、なんで罰ゲーム放棄して帰ってきちゃったわけ?」
「約束は守ってもらわないとなぁ!」
そんなことを言われ、陰キャ男子は萎縮してしまっている。なんかボソボソ呟いているが、聞き取れない。
「あ? 聞こえねぇよ!」
そう言うと、囲んでいた男子の一人が黒板消しを相手の顔に擦り付けた。
「うわ、やめ……」
すぐに陰キャ男子の顔はチョークの粉まみれになった。
うわぁ。こんないじめ、中学生でもやらないレベルだぞ。さすがに一線を越えているな。
「おいお前らやめ……」
俺はそう言いかけたが、声が掠れて上手く発声できなかった。こういうとき、ぼっちは不利だよな。
「さっきからうるさいな。さすがにやりすぎだろ」
声をあげたのは、クラスでも随一の成績を誇る秀才くんだった。たしか名前は、貝塚とかいったか?
「なんだよ? 正義の味方気取りか? 俺たち貝塚のこと、結構高く評価してたんだけどな。そんなイタい真似するやつとは思わなかったよ」
「評価?」
貝塚が低い声でそう呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。
「俺が!いつ!あなたに!評価して欲しいだなんて頼みましたか!?」
いつになく貝塚は大声で威嚇している。堪忍袋の緒が切れたというより、単にバカにしてあちらの出方を窺っているようだ。 挑発に乗って下手な真似をしてくれればいいとでも思っているのだろう。
実際、その表情から怒りは感じ取れず、ヘラヘラしているだけのように見える。
「は? お前何急にキレてんだよ……」
「頼んでないよな? だったら勝手に評価しないでくれよ? 俺を評価していいのは内申点を付ける教師陣だけだ」
貝塚は相手の言い分など聞く気はないようだ。どんどんヒートアップしていきそうだな。
「おい貝塚、そのへんでやめ……」
俺が仕方なく牽制すると、今度はこちらにずんずんと近づいてきた。
「黙ってろ。このネタコミュ障が!」
そう一喝され、俺は思わず黙る。貝塚は同志だと思ったんだが、共闘とはいかなかったようだ。
「大体どいつもこいつも俺に文句ばかりで鬱陶しいんだよな。死んでくれよ? 俺は高卒の肩書き欲しさに入学しただけなんだ。最悪クラスメイトなんて生きてようが死んでようがどっちでもいい。あー、そうだな。人形を置いておくのがいい気がしてきた。そうしてほしいな」
想像の斜め上の暴言が飛び出した。正直、本音を言い過ぎだと思う。
「それ以上はやめておけ。お前が気にしてる内申点が下がるぞ?」
俺は仕方なく注意してやる。こんなところ教師に聞かれでもしたら、それこそ心象が悪くなる。
こいつ、何を考えている?
「そうだな。授業が始まる前には止めてやる。だが覚えとけ。俺の勉強の邪魔をする奴は徹底的に潰す。それだけだ」
そう言って貝塚は俺の方を振り返る。
「お前も、ただのネタコミュ障ではないようだな」
そうとだけ言い放ち、貝塚は自習に戻った。
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