第7話 ネタコミュ障
「なんか、ギスギスしてきたわね。付き合わせちゃってごめん」
ファミレスからの帰り道、千波が謝ってきた。だが水曜会に参加しているのは俺の意思だし、別に多少雰囲気が悪くなったところで構わない。
「気にしないでくれ。俺は慣れてるし」
「そう。さすがはプロのぼっちね」
「まぁ、一年半近くやってるからな」
「ねぇ。真一はなんでぼっちキャラなんか演じているの?」
核心を突く質問に、俺は少し動揺する。
「気まぐれだよ。なんだか、人と距離を置いてみるのもいいかなって思って。あ、俺だって話そうと思えば話せるんだからな? 実際千波たちとは会話成立してるし」
「いや、会話が成立するのは当たり前でしょ。そんなことより、真一が陰でなんて呼ばれているか知ってる?」
「興味ないから知らないな」
というか、意識から除外するようにしているので、忘れているだけかもしれない。
「【ネタコミュ障】よ」
それはまた、奇天烈なあだ名をつけられたものだ。
俺がふざけてネタでコミュ障を演じていると思われているのだろう。ガチのコミュ障陰キャからも、それ以外の連中からも反感を買って当然か。
「私たちがいるから当面は大丈夫だろうけどさ。この会だっていつなくなるか分かんないじゃん? あんな雰囲気になっちゃったし。コミュ障のふりをするのもどうかと思うよ?」
「だな。そもそも水曜の放課後しか人と喋んないから、ガチのコミュ障になりかけてるし。そろそろ友達と彼女作った方がいいかもな」
「そうよ。今からでも遅くないから、クラスの適当なグループの輪に入れてもらいなさい」
「いや、今は高2の7月だし。今さら遅いだろ。俺も向こうも気まずいからそんな真似はできない」
そんな真似、今までぼっちだった俺のプライドが許さない。
「えぇ……真一、思ったより拗らせてるのね」
千波は蔑むような視線を投げかけてくる
「じゃなきゃぼっちなんてやってない」
「ハァ、そうね。ともかく、あんたがコミュ障のふりをしてるの、バレてるから。ぼっちを気取ってるイタい奴だって思ってる人間も少なくないから、気を付けなさいよ?」
「俺としては空気キャラに徹してたつもりなんだけどなぁ」
空気に不快感を抱くような連中に、どう対処すればいいのか。
「教室のど真ん中でぼっち飯してる時点で、もはや空気というより異物なのよ。私らの学年も殺気だってきたし、標的にされないよう上手く立ち回りなさい?」
「分かった」
俺は短く返し、千波と別れた。
明日からは教室以外の昼食スポットもいくつか探さないとな。
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