第20話 ビラ作り、そして…
お母さん・絵満さんに加え、平屋の持ち主の水無瀬さんにも認められた私と絵里奈。彼女の引っ越しが完了するまで平屋の事は何もできないので、今の内に宣伝について考えよう。どうすれば良いかしら?
宣伝の方法についてアドバイスをもらうため、お母さんと絵満さんに自宅に来てもらうようにお願いした。そして、4人の都合が合う土曜日を迎える。
「今日は来てくれてありがとう、お母さん・絵満さん」
「娘が困ってるんだから、協力するのは当たり前よ」
「由紀奈さんの言う通り。頼ってくれて嬉しいわ」
2人共嫌な顔を一切見せない。マッサージ店の事が一段落したら、たくさん恩返ししなきゃ!
「宣伝についてお母さんも色々考えたけど、やっぱり“ビラ配り”は欠かせないわね」
「あれ効果あるかな~? めんどいだけじゃない?」
絵里奈は納得できない様子だ。
「絵里奈がそう言いたくなる気持ちもわかるわ。ロクに見てもらえずに捨てられるパターンは珍しくないからね」
つまり見てもらえるビラにしないとダメか…。デザインを工夫するとか、クーポンを付ける感じが良いのかな?
「それでも興味を持ってもらえる人がほんの少しでもいれば、その人達の行動次第で大きく変わるかもしれない。切り捨てるのはもったいないんじゃない?」
「確かにそうかも。これから絵里奈と話し合って決めるよ」
大変だけど頑張ろう!
「満里奈さん、ビラができたら教えて。職場の人に配りたいから」
「良いんですか? ありがとうございます」
「お母さんも配るわよ~」
2人に手伝ってもらうんだから、ちゃんとしたビラにしないと!
「後は…、SNSの宣伝よね。“公式アカウント”ってやつを作って、どんどん発信すれば良いんじゃない?」
「それは前々から考えてて、絵里奈にやってもらおうと思ってる」
「あたし? 真面目なお姉ちゃんのほうが向いてるでしょ?」
「私が書くと堅苦しくなりそうだから…。マッサージに関係なく、どんどんつぶやいてちょうだい」
型にはまらないスタイルは、絵里奈のほうが向いていると思う。
「そっか。じゃあ『お腹減った~』とか『ケーキ食べたい』でも良いの?」
「私も場合によってつぶやくかもしれないから、個性を出すのは禁止ね。それを守ってくれるなら構わないわ」
「だったらイケそう!」
やる気を出してくれて良かった。
「お母さん・絵満さん、話を聴いてくれてありがとう。ビラができたら連絡するね」
「頑張ってちょうだい、満里奈・絵里奈」
「楽しみに待ってるからね」
お母さんと絵満さんが帰った後、ビラのデザインについて考える私と絵里奈。ターゲット層は“女性”としか決めてないから、方向性に悩むわ…。
「ウルウルしてる犬とか猫をいっぱい描いたら、すぐ捨てられないと思わない? お姉ちゃん?」
「そうかもしれないけど、マッサージ店のビラに見えないわよね?」
大抵の人がペットショップを連想すると思う。
「じゃあ、マッサージされてる人がウルウルしてるのはどう?」
「『痛い派』か『気持ち良い派』に解釈が分かれるんじゃない?」
涙を流す理由は人それぞれだから…。
「う~ん、やっぱり難しいな~」
「そうね…」
簡単に効果的なビラを作れるなら、どこだってそうしてるはず。私達のマッサージ店は“裏メニュー”がある特別な店だ。これをアピールポイントにするしかない。
「…そうだ! ビラを持って来店した人だけに、裏メニューの事を話すのはどう? 気になって1回は来てくれるかもしれないわ」
「んで、来たお客さんをあたしとお姉ちゃんのテクニックでハメるんだね?」
「言い方はアレだけど、そんな感じよ」
来てもらえれば、お客さんの気持ちを変える事はできるはず。その可能性に賭ける!
「…大体、こんな感じかしら」
白紙にビラの下書きを簡単に書いてみた。
【女性限定のマッサージ店“ネックロン”〇月△日オープン! 住所□ 電話番号◇】
オープン日時とかは、水無瀬さんの引っ越し事情によるから確定できない。
【全身どこでもマッサージ致します。遠慮なくご要望下さい】
マッサージして欲しいところは人それぞれだ。なのでコース制は止めた。
【このビラを持って来店された方には、格安価格で“裏メニュー”を1回体験できます。他店では決して体験できない気持ち良さをあなたに…。※秘密厳守】
この宣伝文句を決めるのに、どれだけ絵里奈と話し合ったか…。今のところ、これが私達のベストになる。
後は、デフォルメ調のマッサージする・される女の人を、ビラの端っこに数組描く流れにした。これは絵心がある絵里奈に頑張ってもらおう。
人だけだと味気ないので、同じくデフォルメ調の犬や猫などの動物を添えて完成だ。
「これ以上は無理! 頭がパンクする!」
「私もよ。考え過ぎて疲れたわ…」
「お姉ちゃん、早くHしよ♡」
寝るとか甘いものを食べるじゃなくてHか。絵里奈らしいわね。
「はいはい。それじゃ、布団に行きましょうか」
「うん♡」
私達は、布団の中で激しく求めあう…。
後日。水無瀬さんの引っ越しが完了したのを本人に聴いてから、ビラの下書きをお母さんと絵満さんに見せる。努力の甲斐あって高評価をもらえた。
お墨付きをもらって安心したので、早速ビラを作って刷る。……多分良い感じね。刷り過ぎるとゴミになるので、一応400枚にした。それを4人でオープンまでに配る事になる。
この間に、私と絵里奈は短時間バイトを辞めた。その分をマッサージ店で頑張っていくからだ。
絵里奈の公式アカウントを用いての宣伝も同時進行してるものの、基本的に見ない方針にしている。ある時、何となく最新のつぶやきを見たところ『あの中学生、スカート短くない? 短すぎるのも程々に!』という内容が画像付きで書かれていた。
ふざけてると思ったけど、意外にいいねとコメントがそこそこある。あの子なりに頑張ってるわね…。
そんな風にベストを尽くした結果、ついにオープン初日を迎える…。
―――次回、最終回―――
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