第18話 運命の物件探し
お母さんと絵満さんにHなマッサージと普通のマッサージをやった結果、覚悟を伝える事ができた。これで援助を約束してもらえるので、次は時間がある時に不動産屋さんに行って営業場所を考えよう。
後日。家事・大学・短時間バイトの合間を縫って、私と絵里奈は自宅から電車で2駅のところにある不動産屋さんに入る。良い物件あるかしら?
「いらっしゃいませ。どういった物件をお探しですか?」
入って早々、受付にいるスーツ姿の女性店員さんに声をかけられる。
「○○駅に近くて、マッサージ店を開けるぐらいの広さがある物件を探してます」
開店するのは、当然自宅に一番近い駅だ。人通りもそこそこあるから問題ないはず。
「そのマッサージ店は、自宅開業される予定ですか?」
自宅開業…、それも良さそうね。お客さんを家に入れるから掃除や後片付けが大変だけど、通勤時間が0になるのは大きい。検討の価値はあるかも。
「今のところは未定ですので、条件に当てはまる物件を全てお願いします」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
そう言って、店員さんは店の奥に入って行く。
「家でマッサージできたら楽だね」
隣にいる絵里奈が声をかけてきた。
「だけど生活感は出せないわ。 今以上に片付けをしっかりやらないと…」
「それは面倒だな~」
自宅開業するか否かは、例えるなら塾と家庭教師みたいなものかしら。誰だって塾に行くのは面倒だから、家で勉強できるならそれに越した事はない。
でも家には、サボりたくなる誘惑がたくさんある。その誘惑を紛らわせるために塾に行く人だっているはずよね。
…さっきの女性店員さんが店の奥から戻ってきた。
「お待たせいたしました。お客様ご希望の物件をこちらにまとめました」
「ありがとうございます」
女性店員さんからA4サイズの紙5枚を受け取ったので、早速絵里奈と一緒に1枚ずつチェックする。
物件は賃貸マンションで、私達が住んでるマンションより家賃が高い代わりに、やや広い間取りのようだ。自宅開業も視野に入っている感じね。駅チカに限定しなければ、裏路地にあるような店も候補になったと思う。
……間取りは多分問題ないと思うけど、家賃の相場がわからない。お母さんと絵満さんに同行してもらったほうが良かったかな? なんて思いつつ、最後を確認する。
「あれ? これ家賃書いてないね?」
絵里奈の言う通り、家賃が“応相談”となっている。しかも他の4枚と違い平屋だ。
「その物件は特別なんですよ」
「特別…ですか?」
どういう意味だろう?
「その平屋を所有していたおばあさんが亡くなったのでお孫さんに相続されたんですが、転職を機に平屋を出るみたいなんです」
転職って事は、その人は私達より年上の社会人になるわね。
「それでも家賃収入のために平屋は残すと聴いています。希望者の経済状況や事情などを総合判断して、そのお孫さんが家賃を決めるそうですよ」
築年数も新しいから、当然外観も良い。この平屋は気になるわ。
「この物件、いつから募集してるんですか?」
「昨日からです」
あくまで勘だけど、早めにマークしないとあっという間に埋まりそう。
「お姉ちゃん。この平屋気になる」
「絵里奈も? 実は私もなのよ」
意見が合って助かるわ。
「希望者が見つかったら連絡するように言われています。いかがなさいますか?」
「気になるので連絡お願いします」
私の言葉に合わせ、絵里奈も頷く。
「かしこまりました。確認が取れ次第ご連絡しますので、お客様の連絡先をこちらにご記入下さい」
…女性店員さんに従い、私の携帯番号を書く。
「ありがとうございます。○○でお間違いないですか?」
「はい、大丈夫です」
復唱して確認するなんてマメね。
相手のお孫さんは社会人で忙しいだろうし、すぐ連絡が来る事はないだろう。それは良いものの、アレはどうしても確認したい。
「あの…、最後にお尋ねしたいんですが、そのお孫さんは男性ですか? 女性ですか?」
心の持ちようが変わる重要なポイントだ。なるべく早く知りたい。
「女性ですよ。
女性店員さんの話を聴いた絵里奈がホッとした顔をした…気がする。
「わかりました。…本日はお忙しい中、ありがとうございました。失礼します」
女性店員さんに一礼した後、私と絵里奈は不動産屋さんを出た。
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