第16話 マッサージの成果を見せて!

 家事・大学・短時間のバイトをこなしながら、マッサージのスキルを磨く私と絵里奈。もうそろそろ、店の場所について考えないと。


どこで開店するかは非常に大切だから、お母さんに相談した方が良いわね。そう思って携帯に連絡したところ、『会って話しましょう』と返信が来た。


こまめに連絡は取り合ってるものの、顔を合わせるのは上原さんが来た時以来だ。久しぶりに会えて嬉しいわ。



 直近の土曜日の午前中、お母さんは上原さんと一緒に家に来た。


「絵里奈さん。この前の約束通り、ケーキ買ってきたわよ」


今持ってるビニール袋の中身がそうみたいね。『今度お邪魔する時は、わたしが用意するからね』と言っていたけど、本当に準備してくれるなんて…。


「ありがとうございます!」


「飲み物は私が準備しますね。お母さんと上原さんはブラックコーヒーで良いですか?」


「満里奈。絵満さんは、もうじゃないわ」


「えっ?」


お母さんと上原さんは、私と絵里奈に左手の薬指を見せてきた。…そこにはキレイな指輪がある。2人は結婚したのね…。


「結婚式はお金がかかるし面倒だからナシにしたのよ。その分、ちょっと豪華なディナーを楽しんだわ」


「満里奈さん・絵里奈さん。わたしの名前は“笹下 絵満”になったけど、2人に認められるまでは“上原さん”でも構わないわ」


「認めるなんてそんな…。これからは“絵満さん”と呼ばせてもらいますね」


「あたしも~」


正直なところ、家族として受け入れるには時間がかかると思う。それでも少しずつ歩み寄ろう。お母さんの再婚相手なんだから。


「…2人共、本当にありがとう」


お母さんと絵満さんの報告を聞いた後、私は飲み物の準備を始める。



 「お母さん。店の営業場所についての話なんだけど…」


ケーキの時間を中盤を迎えた頃、私は話を切り出す。


「どのあたりで営業したいかは考えてるの?」


「やっぱり人目に付きやすい“駅チカ”が無難だと思ってるわ。でもそれだけ家賃とかが高くて…」


浪費癖はないからバイト代はほぼ貯金できてるものの、それでも厳しい。


「少しなら援助してあげるわよ?」


「わたしも」


お母さんと絵満さんの申し出は嬉しいけど、そこまで頼って良いのかな? とはいえ、強がってどうにかなる問題じゃないし…。


「だけど、援助には条件があるの。お母さんと絵満さんにHなマッサージをしなさい。その出来で、2人の覚悟を確認させてもらうから」


「覚悟…」

そう言われるとプレッシャーだ。


「そう。満里奈と絵里奈は成人目前だし、遊び半分に援助する気はないわ。本気度が伝わったら、援助する額を増やすつもりよ」


「わたしも由紀奈さんと同じ考えね。満里奈さんと絵里奈さんの思い、わたし達にぶつけて!」


マッサージする以上、基本的に相手を選ぶ気はない。もし2人がお客さんとして来たなら、キチンと施術するのが普通だろう。これは、その予行練習になると思う。


「お姉ちゃんやろうよ!」


絵里奈はやる気十分みたい。あの子の気持ちに応える!


「お母さん・絵満さん。ケーキを食べて落ち着いたら、マッサージするからね」

食後すぐは胃の負担になるからダメだ。


「どうなるか楽しみね、絵満さん」


「そうね」



 こうして、お母さんと絵満さんにマッサージする事にした私と絵里奈。2人に今までの成果を見せて認めてもらうんだ! 私達ならできるはず!

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