第13話 意外な流れ?

 ついに家で、お母さんの再婚相手の上原うえはら 絵満えまさんと顔を合わせた私と絵里奈。私達大学生を相手でも、誠意に対応してくれたのは嬉しかったわ。


リビングに着いてからも、おしゃべりを続ける私達4人。そんな時に私と絵里奈の将来が話題になったんだけど、うっかりHなマッサージについて口を滑らせてしまった。


この空気、どうすれば良いんだろう?



 「話をまとめると、満里奈さんと絵里奈さんが開きたいマッサージ店は、Hな事をするマッサージ店なのね」


「上原さん違うんです。普通のマッサージも当然考えてますよ。Hな事は“裏メニュー”と言いますか…」


きっとドン引きされるだろうな。『口は禍の元』って言うのは本当ね…。


「…面白そうじゃない」


「えっ?」

私は絵里奈と顔を見合わせる。


「絵満さん、こう見えて意外に性欲強いのよ。酔うとすぐ脱ぎ出すし…」

彼女の隣に座っているお母さんが補足する。


「あら、由紀奈さんも強いと思うわよ? それが娘の満里奈さんと絵里奈さんに受け継がれたから、姉妹でHするようになったんじゃない?」


ちょっと待って。何で上原さんがその事を知ってるの?


「実はここに来る前、由紀奈さんから聴いたのよ。デリケートな内容だから胸の内に収めようと思ったんだけど…」


「2人からそういう話をしてきたなら、収める必要はないわよね? …お返しに言うけど、お母さんと絵満さんもそれなりにってるわ」


まさか私の失言が、壁を取っ払う要因になるなんて…。


「お母さん、早くケーキ食べたい」

絵里奈がケーキが入っている容器を見つめている。


「はいはい。飲み物はここにあるし、食べながら話しましょうか」



 …ケーキを各自の皿に取り分けた。私はチーズケーキ・絵里奈はショートケーキ・お母さんはモンブラン・絵満さんはフルーツタルトになる。


「…おいし~♪ ケーキサイコ~♪」


一口食べた絵里奈は満足そうだ。お子様ランチで喜んでる子供と大差なく見える。


「絵里奈さんはケーキ好きなの?」


「はい好きです!」


「じゃあ今度お邪魔する時は、わたしが用意するからね」


「ありがとうございます!」


ケーキをきっかけに、絵里奈と絵満さんの距離が縮まったみたい。


「満里奈。さっきのマッサージ店だけど…」


お母さんとHな事を話し合えるようになっても、これはさすがに反対されるだろう。マッサージだけでなく、出店の知識と経験がまったくないからね…。


「お母さんをマッサージの相手にして良いわよ」


「満里奈さん、わたしも力になるからね。もちろんそれ以外も」


あれ? 反対どころか背中を押してくれてる? 意外な流れだ…。


「いつの時代も、普通の枠に収まらない斬新な事をする店が繁盛するものよ。着眼点は良いと思うわ」


「わたしも由紀奈さんと同じ意見。軌道に乗れれば、向かうところ敵なしよ」


どう考えても、軌道に乗るのが一番大変なのよね。問題は山積みだ…。


「お母さんと上原さんが力を貸してもらえるのは、嬉しいし心強いです。いざという時はお願いします」


私が頭を下げたのを見て、絵里奈も下げた。


「当然じゃない、家族なんだから」


「満里奈さんと絵里奈さんに家族として認めてもらうために、最善を尽くすわね」



 それからも他愛ないおしゃべりをする私達4人。私と絵里奈の小さい頃の話がメインだったように思えた。上原さんは興味津々に聴いていたわ。


…外から夕陽が差し込んでくる。時間が経つのはあっという間だわ。


「もうこんな時間なのね。絵満さんそろそろ行きましょうか」


「ええ」


お母さんと上原さんが席を立つ。お母さんはこれから上原さんの家で暮らすのだ。


「お見送りするよ」


「あたしも」

私達も席を立つ。


そして、全員玄関に着く。


「満里奈・絵里奈。お母さんがいなくても、しっかりね」


「大丈夫だよ、心配しないで」

私1人だけならともかく、絵里奈がいれば元気をもらえる。


「さっきも言ったけど、こまめに帰ってくるし連絡もするからね」


「ありがとう」

なるべく早く良い知らせをしたいな…。


「それじゃあね、満里奈・絵里奈」


「満里奈さん・絵里奈さん、また会いましょう」


たくさんの荷物を持ったお母さんと上原さんは、家を出て行った。



 「お姉ちゃん。マッサージ店頑張らないとね!」

隣にいる絵里奈が声をかけてきた。


「そうね。応援してくれるお母さんと上原さんの思いを無駄にしたくないわ」


「よ~し、明日から頑張るぞ~」


「今日からじゃないの!?」


なんてツッコんだ後、私達はリビングに戻るのだった。

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