第12話 ご対面
朝食の時にお母さんから聴いた話をまとめよう。再婚相手は“
再婚にあたり、上原さんが“笹下姓”を名乗るようだ。しばらくは違和感を抱くと思うけど、慣れる事を祈るしかないわね。
再婚後の生活については、お母さんは上原さんの家に住むと聴いている。今の家は、私と絵里奈の2人暮らしになる形だ。
上原さんは昼過ぎに来るみたいなので、各自それまでに出来る事を行う…。
お母さんが4人で食べるケーキを買いに行ってる間、私と絵里奈は家の掃除をやる。お母さんの再婚相手に、嫌な思いはさせたくないからね。
「お姉ちゃん。後で掃除を頑張ったご褒美が欲しい」
絵里奈が掃除の手を止め、私におねだりしてくる。
「はいはい。ご褒美あげるから頑張って」
「やった~!」
やる気の出し方が子供そのものよね…。
「そういえばさ~、お母さんと上原さんってHするのかな?」
「どうかしら? 上原さんに会わないと想像しようがないでしょ」
お母さんもそういう事すると考えるのが自然…よね?
「それもそっか」
「…絵里奈、さっきから手が止まってるけど? サボったらご褒美ナシね」
「今から真面目にやる!」
世話が焼けるわね。だから可愛いというか、放っておけないのよ…。
……私と絵里奈なりに掃除を済ませた。その途中で帰ってきたお母さんは、買ったケーキをリビングの机に置いた後、自分の部屋に向かって行く。
荷物をまとめるのも大変よね。次に私達がやるのは…。
「掃除して汗かいちゃった~」
絵里奈の言う通り、私達は汗だくだ。上原さんに会う前にシャワーを浴びないと。
「お姉ちゃん、一緒に入ろ♡」
「良いけど、遊ぶ時間はないからね?」
「わかってるって。お楽しみは後にするから」
さすがの絵里奈も空気を読んだようで、シャワー中に余計な事は一切してこなかった。その代わり、熱い視線はたくさん感じたわ。
昼過ぎにケーキを食べるので、昼食は全員軽めに済ませた。昼食後から少しして、家の呼び鈴が鳴る…。
「絵満さんが来たわね。2人も玄関に来てちょうだい」
「わかった」
「は~い」
私達3人は玄関に向かう。いよいよ上原さんに会う時ね。
玄関に着いた私達3人。お母さんが扉を開けると、そこには髪を低めに1本にまとめた女性が立っている。服装も大人しい色調でまとまっていて、まさに“大人の女性”だ。
……胸の大きさは、私達の中で一番大きく見える。これが大人の女性…。
「いらっしゃい絵満さん」
「こんにちは
「娘の満里奈と絵里奈よ」
ここはしっかり挨拶しないと!
「初めまして、長女の満里奈です」
絵里奈、しっかり挨拶しなさいよ! お辞儀の後にあの子を見る。
「じ…次女の絵里奈です…」
表情は硬いしお辞儀もしてない。知らない人が相手とはいえ、もうちょっと頑張って欲しいわね。
「ご丁寧にありがとう。わたしは上原 絵満。由紀奈さんとお付き合いさせてもらってるわ」
あろう事か、上原さんもお辞儀をする。私達のような大学生相手でも敬意というか誠実さを感じる。お母さんは素晴らしい人と結婚するのね。
「絵満さん。さっき伝えた通りケーキを買ってきたから、食べながらみんなでおしゃべりしましょう」
私達が掃除してる時かお風呂に入ってる間に連絡したみたい。
「そうね。…お邪魔します」
リビングに戻った私達4人は席に着く。お母さんと上原さんが隣同士で、私が上原さんの前になる。絵里奈は相変わらず緊張してるわ…。
「飲み物を用意しないとね。お母さんと絵満さんはブラックコーヒーにするけど、満里奈と絵里奈はどうする?」
ブラックを飲む自信はないわ。となると…。
「じゃあ、ミルクを入れたコーヒーでお願い」
「あたしも~」
「はいはい。すぐ持ってくるわ」
お母さんはそう言って、キッチンに向かって行く。
……3人になると、さすがの私も困るわ。何か話さないと。
「満里奈さんと絵里奈さんは、由紀奈さんに似て美人さんね」
私達を見て微笑む上原さん。
「そ…そうですか?」
絵里奈が少しニヤつきながら答える。
何で真に受けるのよ! どう考えても“建前”じゃない!
「今のは本心よ、満里奈さん」
「はぁ…」
返答に困るわ。自覚してないから尚更だ。
「2人は将来の夢とかあるの?」
私と絵里奈は顔を見合わせた後…。
「はい、あります」
お母さんの再婚相手に嘘を付く必要はない。絵里奈も頷いて同調する。
「そう。わたしもできるだけ、2人の夢が叶うようにお手伝いするからね」
「悪いですよ…」
「気にしないで。由紀奈さんはもちろんだけど、満里奈さんも絵里奈さんも大切な人だから協力したいの」
気持ちは嬉しいものの、マッサージ店は上原さんに応援してもらう程なのか…。
「満里奈。その夢、詳しく聴かせてちょうだい」
全員分の飲み物をトレイに乗せたお母さんがテーブルに戻ってきた。
「まだボンヤリというか、ハッキリ決まってないの」
「それでも良いから」
念を押したし、話して良いか。
「笑わないで聴いてね。…絵里奈と一緒にマッサージ店を開こうと思うの」
「マッサージ店…。良いじゃない、ねぇ絵満さん?」
「そうね。この歳になると、肩とか腰がすぐ凝って…」
やっぱり、そういうイメージになるわよね。でも私達がやるのは…。
「お母さん、あたし達がやるマッサージ店は女の人専用なの! 敏感なところをマッサージして、気持ち良くなってもらう事を第一に考えてるんだ~」
「ちょっと絵里奈! 今はHなマッサージについて言う必要ないわよね!?」
わざわざ“気持ち良さ”を強調する必要がない。
「気持ち良さって、そういう意味だったの?」
上原さんに言われてハッとする。墓穴を掘ったのは私だった! この空気どうすれば良いんだろう?
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