第10話 将来について話し合う、その後…
絵里奈と大学卒業後も一緒に過ごすには、お店を始めるのが一番だと思った私。候補は今のところ、喫茶店・女の人専用のマッサージ店の2つだ。
夕食後、私達は色々調べ始める…。
「駅チカの良い物件は、狭い割に家賃とかが高いな~」
携帯を観ている絵里奈がつぶやく。
「そりゃそうでしょ。その代わり、人目に付きやすくなるんだから」
リスクとリターンは表裏一体だ。
「あたし達が大学卒業してすぐお店を開くなら、お金の余裕はないよね?」
「もちろんそうよ。私達の貯金で何とかできるようにしないと…」
お母さんには世話になりっぱなしだし、なるべく負担をかけたくない。
「だったら、マッサージ店で決まりかな? お姉ちゃん?」
「何で決まりなのよ?」
「だってマッサージ店は、喫茶店より狭いスペースでできるんだよ? 調理器具とかを揃える必要ないから、かなり節約できるじゃん」
「まぁね。でもマッサージ店は喫茶店よりニーズはないと思うから、人目に付く駅チカに出店しないと厳しいわ」
喫茶店なら何かお客さんを惹き付ける要素があれば、駅チカにこだわる必要はない。変わったところで営業する飲食店は、たまにニュースで特集されるからね。
でも、マッサージ店でそういう話は聴いた事ないわ…。
「お姉ちゃんの言いたい事はわかるけど、あたしは裏路地とかでひっそりやるほうが良いと思う。“裏メニュー”も出しやすいし」
「さっきの話、本気だったの?」
絵里奈の言う裏メニューは、敏感なところをクリクリして責める内容の事だ。
「当たり前じゃん。女の人だって気持ち良くなりたいんだから、絶対ニーズはあるって!」
「そうかもしれないけど、お客さんにやって良い事じゃないわ」
女同士でもセクハラは成立するから、最悪警察のお世話になる…。
「それは事前に確認するとか、常連になってから解禁すればOKじゃない? 人気のないところで営業しても、口コミで何とかなるって」
今の時代でも、口コミの力は侮れない。何とかなる…かも?
「お母さんに色々訊かれたら、適当にごまかせば良いよね」
そういえばお母さんの事を忘れていた! とはいえ、お金がない私達が人気のあるところに出店できるとは考えないはず。“裏路地=Hな事をする”にはならないと思う。
「…お姉ちゃん、お母さんが帰ってくる前にお風呂入ろうよ」
仕事で疲れてるお母さんが、帰宅後すぐ入れるようにしないと。待たせる訳にはいかないわ。
「そうね」
いつも通り、お風呂でイチャイチャする私と絵里奈。今日はマッサージの予行練習も兼ねているから、お互い手と指の動きが激しい。
…あの子の言う通り、マッサージのニーズはある気がする。気持ち良くなると、ストレスなんて吹っ飛ぶわ♡
お風呂を済ませた私と絵里奈は脱衣所を出る。着替えと保湿はお風呂を出てすぐ済ませたので、お互い服を着ている状況だ。
これなら一緒に出るところをお母さんに見られても怪しまれる事はない。
「ただいま~」
お母さんの事を考えていたら、本人が帰宅した。
「満里奈・絵里奈。2人がそばにいて助かったわ。呼ぶ手間が省ける」
「お母さん、何かあった?」
絵里奈が尋ねる。
「実は明日の土曜日なんだけど、お母さんの再婚相手に来てもらう事になったわ」
「えっ!?」
私達はキレイにハモる。
「2人共、明日バイトある?」
「私はないよ」
「あたしも~」
「それは良かったわ。詳しくは明日の朝ご飯の時に話すから」
そう言って、お母さんは自分の部屋に向かって行った。
お母さんの再婚相手、男性か女性かすらわからない。緊張しながら明日を迎える事になりそうだ…。
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