第9話 甘えん坊になった絵里奈

 私と絵里奈は正直な気持ちを話し、“姉妹以上の関係”になった。それからは、お母さんの目を盗んでよくイチャイチャしている。


とても充実した日々を過ごしてるものの、あの子が甘えん坊になったのが気になるのよね…。


というのも、基本的に私から離れようとしない。大学内では違う講義を受ける時以外はずっとそばにいる。トイレすら1人で行こうとせず「一緒に行こうよ~」なんて言い出す始末。


トイレのタイミングは大体絵里奈と同じだから、苦痛に思った事はない。


家の中で1人になるのは、トイレと寝る時ぐらいね。お母さんがいない時、あの子は私の部屋で過ごす事が多い。お風呂もお母さんがいない時はもちろん一緒。


絵里奈と一緒にいるのは楽しいし不満はないけど、このままで良いのかしら?


…その不安が現実になった事がある。あの子が自身のバイト先を辞めて、私のバイト先に応募したのだ。


バイト先は人手不足だし、絵里奈のスキルは私と同等だから面接後すぐ採用されたものの、「研修はお姉ちゃんにしてもらいたいです!」と店長にお願いしたらしい。


あの子の要求はそれだけに終わらず、「シフトはお姉ちゃんと一緒じゃないと入りません!」などと言ったみたい。優しい店長は両方許可したらしいけど、新人なのに注文が多いのよ!


その話を家で聴いてから、私は急いで店長にメールで謝罪した。もちろん後日会った時の謝罪も忘れていない。


これは今の内に何とかしないとマズいかもしれないわ…。



 絵里奈の初勤務前の、ある日の夕食時。お母さんの帰りが遅くなるのを朝聴いていたので、私と絵里奈の2人きりになる。話すなら今ね。


「絵里奈。私のそばにいたい気持ちは嬉しいけど、バイト先に迷惑をかけちゃダメよ」


「だって~」


子供のように駄々をこね始めた。可愛いわね…、じゃなくて。


「家の中なら思う存分甘えて良いから」


「それだって厳しいよ。お母さんがいる時はできないから」


お母さんは朝早くから夜遅くまで働いている。家にいる時間はそんなに長くないのに我慢できないのね…。


「あたし、生活だけじゃなくて仕事の時もお姉ちゃんのそばにいたい!」


「そう言われても…」


バイト先で一緒にいられるのは、店長のご厚意になる。今回は何とかなったに過ぎない。


「だからさ~、2人でお店を開こうよ!」


「お店?」


「そう、あたしとお姉ちゃんの2人で! これならいつでもそばにいられるよね」


私もできれば絵里奈のそばにいたいと思っている。あの子と同じ気持ちなのは嬉しい。


「お店って簡単そうに言うけど難しいわよ? 何をする気なの?」


「あたしとお姉ちゃんは料理得意だし、喫茶店とか良いんじゃない? それ以外だと…、女の人専用のマッサージ店も捨てがたいな~」


「マッサージ店?」

意外なチョイスね…。


「そう。をクリクリして気持ち良くしてあげるの♡ ニーズあると思うな~♡」


「それ、“夜のお店”じゃない!」

色々不安にさせられるわ。


「別に良いじゃん。大学を卒業する時って、あたし達は成人してるんだからさ~」


「それはそうだけど、お母さんに何て言う気?」


「…あっ」


今気付いたみたい。詰めが甘いわ…。


「でも、お店は面白そう。時間がある時に調べてみましょうか」

将来の選択肢を増やして損する事はない。


「そうだね」


夕食後、私達は早速調べてみるのだった…。

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