第11嘆き ふじさわしゅうへいtoウンコ

 軽い気持ちで始めたこの連載記事なんですけども。やっぱ見通しが甘かったよねっていう。10回連載してPVが11しかついてないっていう。マジかよ。

 しかもそのうち10こは第1嘆き(嘆きって何。だせぇ)に付いてて、ほとんどのエピソードはPVゼロなんですぜダンナ。

 異世界ファンタジー小説の方に読者を誘導したいって意図で連載してるんだから、1だけ読んであっちに行ってもらえれば、それはそれでいいんだけども。


 逆に何で異世ファの方はある程度PVついてるんだろうか。

 継続して読んでもらえてる分は私の実力として(思い上がり)、第1話を読もうと思われた理由は何なわけ?

 それだけ異世界ファンタジーの需要が高く、エッセイは厳しいという事なんだろうか。

 そりゃあんまり書く人が居ないわけだよね。そっかそっか……


 誰も読んでないならなに書いてもよくなーい⁉

 TIN―TIN! おTIN―TIN! 俺は自由だ! 文学的露出!



 なんていうかあれですよね。純文学って嫌いですよね。

 そもそも文学って何? っていう。文学とそうじゃないものの区別なんてみなさん言語化・明文化できますか?


 以前、某匿名掲示板でスティーブン・キングが文学と言えるかどうかのレスバをしたことがあって。「キングだって文学やろがい」派だった私は負けた感じになったんです。大衆向けエンタメ作品は文学じゃないんだそうで。ケッ。


 まあ「純文学」なんて奇妙な言葉があるのは日本だけですし。

 国語教育がまだ一般に行き届いていないような時代に醸成された「娯楽小説とは一線を画すんだ」みたいな、驕り高ぶったエリート主義で支えられてる純文なんて価値観はどうでもいいです。エンタメこそ正義。


 純文学じゃなくても「文学好き」とされる人たちからも認められてる小説は存在するわけですが、私がまともに読んだことのある本の中で一番「文学的」と評価されるであろう小説は、藤沢周平の作品じゃないかと思われます。

 『たそがれ清兵衛』ってタイトルの短編集を読んだんですが、ひとことで言って素晴らしく面白かったです。

 親の持ってた本だったんですけども、他にも何作か本棚にあったので全部読みました。


 それで、もっと読みたいと思って。時代劇小説を数多書いている藤沢周平の作品群の中から『隠し剣シリーズ』って呼ばれてるのの一冊を買ってきて読んだんです。

 けど、あんまりおもしろくない。

 ストーリーがただ暗くて救いがない。主人公たちに人格的魅力がない。サガフロンティアっていうゲームに出てくるスキルの元ネタが出てきたのはちょっと面白かったけど、それだけでした。

 おかしいと思ってもう一冊買って読んだけど、同じ感想でした。

 もちろん最初に最高の物を読んじゃったせいでそうなったのであって、先に隠し剣シリーズを読んでたら違ったかもしれませんけど。


 親は雑誌の特集に載ったベストセラーしか買わないって感じの人間だったんですが、本の買い方としてある意味で正しかったんだと思います。

 私も藤沢周平で何を読んだらいいかと聞かれたら、『たそがれ清兵衛』と『獄医立花登手控えシリーズ』だけ読めばとりあえずOKと答えます。


 日本最高の小説家の一人と称される藤沢周平ですらそうなので、やっぱり作家っていうのはいくら優秀でも常に最高のものを書き続けれれるわけじゃないんだと思います。

 世間的な評価が高い一作があれば、それと同等、またはそれ以上の作品を同じ作者の著書から探してもなかなか見つからないものです。


 逆の感想を持ったこともあります。

 吉田戦車っていう漫画家の書いた漫画は、世間一般的には『感染うつるんです』が最高と言われることが多いわけですが、私は他に良い作品がいっぱいあると感じます。

 『感染るんです』も面白いのは間違いないですが、たくさんある吉田戦車の漫画の中で笑いにしっかり重点が置かれている作品とは思えない。なんか、悪い意味で「サブカル的」というか。

 シュールだったらなんでも褒める、みたいな人たちが誉めそやしてるから一番いいとされてるだけなんじゃないかと。

 もっと単純でくだらない作品で楽しく笑えるのがあるし、笑い的にボルテージが低くても雰囲気が良い作品もあります。

 一番笑えるのは『一生懸命機械』で、雰囲気なら『タイヤ』という短編集が一番好き。それが私の個人的な感想です。


 吉田戦車も好きだけど、ギャグ漫画家で一番だと思うのは増田こうすけです。

 読んだことない人でもネットミーム化した『ソードマスターヤマト』を知ってる人は多いんじゃないでしょうか。


※以下ちょっとネタバレ


 増田こうすけの代表作である『ギャグマンガ日和』って1話完結の短編が多いんですけど、その中で一番スペキュレイティブだと思うのは『アメリカンヒーロー』っていうやつです。(14巻収録 第281話)

 登場人物の一人がアメコミに憧れてどんどんアメコミ的になり、最終的に完全にアメコミヒーローになったそいつだけが、左から読むアメコミスタイルになっちゃって、日本式の右読みの世界に居る友人と会話がかみ合わなくなるっていう、イカれた構成なんですね。すごいでしょ。


 増田こうすけが天才だってことが誰にでもわかるから『アメリカンヒーロー』を例にあげましたが、そういう前衛的でメタ的なことをするから好きっていうわけでもなく。

 11巻に収録されてる特別編『魔法の国の王女 ルミカちゃん』っていうエピソードでは、魔法の国に帰ることになったルミカちゃんが、魔法の国に繋がる階段を一歩一歩昇っていくんですが。その階段の各段に、ナナフシの死体とか小汚い軍手が片方とか、そういう嫌なものがそれぞれ落ちてて、最後の方になって「ここから上の段すべてにウンコがあるわ……!」「とうとう出ちゃった!」みたいな。


 天才ギャグマンガ家として誰もが認めるキャリアを積んだ後でも、普通にウンコで笑いを取りに来る姿勢が私は一番好きです。

 また長くなって2000文字超えているので、このへんで失礼します。

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