第45話 おっぱいほとんど丸出しじゃん

「ん? 由羽愛ゆうあ、まだ噛んでいるのか? 私の肉が美味しくてじっくりと味わいたいのはわかるが、そろそろ飲みこんでもいいぞ?」


 先程から由羽愛ゆうあはもっちゃもっちゃとミシェルの肉を咀嚼していた。


「……おいしいですけど……精神的になんかこう……飲み込めなくて……んーっ! ゴクンッ! ……ぷは~~~っ、やっと飲み込めた~! ……おえっ」

「おえっとはなんだ、失礼な」


 とはいえどもミシェルはにやにやしている。

 自分の肉を他人に食わせるなんてどんな気持ちなんだろう、と光希は思った。


「よし、偉いぞ由羽愛ゆうあ。口のなかよくゆすいどけ」

「マスター、ひどいことをいうなあ。私の肉の味の余韻をずっとあじわってこそ……」


 そんな他愛もない会話をしている最中だった。


「くるぞ! 向こうからきた!」


 というツバキの鋭い声が飛んだ。


 とっさに三人、身構えて声のする方を向く。


 ヴェレンディのいるという玉座までは、徒歩であと五分はかかるくらいの距離だったがしかし、ヴェレンディがそれをただ待っているということはなかったのだった。


 光希達がいるこの場所は通路だが、普通の通路よりもだいぶ広く、大型のモンスターも入ってこれる。

 そして実際、光希こうきの達の前に姿を表したのは、ドラゴンだった。

 蛇のように長い胴体をもち、そして巨大な羽ももっていて、その体をうねらせながら宙を飛ぶドラゴン。

 しかし――。

 その頭部は半分腐り落ちていて、骨まで見えている。

 強烈な腐臭。


「これは……」


 光希こうきは顔をしかめて言った。


:光の戦士〈ギーブルか……〉

:エージ〈中世フランスの伝承に登場するドラゴンだ〉

:みかか〈実在したんだな……〉

:見習い回復術師〈一応討伐難易度Lv43〉

:♰momotaro♰〈っていうか、こいつ、もう死んでないか?〉

:修羅〈そんなの見たらわかるじゃないか〉

:ベベベンボー〈つまり……〉


「ギーブルのゾンビ……ギーブルゾンビってわけか」


 ツバキがそう呟き、そして叫んだ。


「ヴェレンディィィィィィィィ!!!!!!!!!! いるんだろう!? でてこぉぉぉぉいいいいいいい!!!!」


 すると地鳴りのような足音とともに、身長十メートルはあろうかという巨人――もちろん死体である――が、一人の少女を手に捧げ持つようにして歩いてきた。

 巨人の手のひらの上で腕を腰にあてて立っているその少女は凄みのある笑みを見せ、言った。


「おんやあ? これはこれは佐々野椿さんじゃーありませんかぁ? 室町時代の人間のくせに相変わらず西洋かぶれの格好してますなあー?」


 その少女は――奇妙な格好をしていた。

 見た目は十代後半の少女に見える、燃えるように真っ赤な髪の毛、そして身につけているのはかなりきわどいところまで丸見えなレオタードのような衣装に申し訳程度の装飾がついた、煽情的な衣装であった。


 かなりのハイレッグカットで、鼠径部まで丸見えになっている。

 どちらかというと小さめの胸の部分は布が覆っておらず、大事な部分を金属の飾りが隠しているだけだ。

 死霊術師というわりには本人の肌はみずみずしく健康的に見えた。

 小柄でスレンダーな少女がそのような格好をしているのである。


 ツバキに聞いた通りの姿であった。

 こいつこそが、死霊術師ヴェレンディに間違いなかった。


:ハンマーカール〈エロ〉

:マカ〈エッ〉

:いっこにこにこさんこー〈エロすぎんだろ、おっぱいほとんど丸出しじゃん〉

:250V〈待って待って股間ほとんと見えそうだよこれ、配信BANされんじゃねえか〉

:Kokoro〈やばい由羽愛ゆうあちゃんに見せらんないくらいエロい〉


 ヴェレンディは片手にもったなにかの酒瓶を口につけるとゴビゴビと飲み干す。

 それを見たツバキは目を眇めて苦々しい口調で言った。


「ヴェレンディ……貴様に殺された35年前の恨み、忘れてないぞ」

「ほおお? それでリベンジマッチってわけぇ? だぁがざあんねん!! 君は再び私に殺されるのさぁ!!!」


 その叫びが、戦いの開始のゴングとなった。



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