第41話 ださっ!
「よし、いいよ。約束しよう。ヴェレンディを倒し、君たちが地上に帰還して1週間たてば、魔法契約書の効果も切れる。そのとき、……いや、さすがにまだ幼いな、それからも修行を続けてふさわしいだけの成長を遂げたら、私は君を『
「……はい。よろしくお願いします」
こわばった顔で
「お、おい、それは駄目だろ、俺が許さんぞ?」
即座に光希が言った。
何を言ってるんだ、このロリ体型元魔女幽霊は。
「いやいや、人間、自分がどう生きるか、どう死ぬか。それを決めてよいのは自分だけさ」
「そりゃ大人ならそうかも知れないけどさ、
「本当に?」
「何がだよ」
「子どもは自分の命の所有権や処分権を持たないのかい? この子、誰かの所有物なのかい?」
「いや、でも親とか……親権とか監護権とか」
「あはは、魔女に日本の法律を守らせるつもりかい? 私が生きた時代にはそんなもんはなかった。ま、親が子の全てを選択する権利がある時代だったよ。おかげで私の妹は治水のための人柱として生き埋めにされたけどね。それでも、そんな時代でも、子を愛し、愛情をこれでもかと注ぐ親はいっぱいいたよ。私も、お前も、君も、運悪くそうじゃなかったってだけさ。重要なのはそれに気づいて自覚することだ。そうすればその後は自分の足で歩ける」
「それと
「自分で選んだ道だ、死にたいならそれでいいじゃないか。私が『
ね」
「はい。ぜひお願いします」
そういうと、
それから、なにか憑き物の落ちたようなすっきりした顔で、
「死ねるって思ったら、胸の中が甘くあったかくなっちゃった。これで、安心して生きられます」
と、緊張感のとれたいい笑顔で笑った。
そんな悲しいことを言うなよ、と光希は思った。
十歳の女の子にそんなことを言わせるなんて、この世は地獄か?
「駄目だ、そんなのは許さんぞ俺は。死んじゃ駄目だ。俺はツバキだろうと凛音だろうと絶対にお前を魂の入れ物になんかさせないぞ」
光希は力強く、確信のある声で言った。
彼自身、幼い頃からずっと死にたいと思っていた。
それが、恋人となる凛音と出会ったことで心のありようが嘘のようにガラリと変わったのだ。
今では、死ぬなんてまったく考えられない。
凛音の魂を復活させ、一緒に幸せに暮らすんだ。
「
とそのとき、ツバキが今度は光希のところに飛んできて、光希に抱きつくような格好になった。
「お、おい、なんだよ……」
ツバキは光希の耳に口を近づけると、光希だけに聞こえるような囁き声で言った。
「正解だ、それでいい。いいか、
「ツバキ……」
「ふふふ、数百年も生きているとね、見えてる景色がお前らとは違うのさ。私がこういえばお前がこう言う、くらいわかる。ただ……彼女は本当に……私の妹に似ているんだ……よろしく頼むよ……」
「はい! あたしがお姉さんの入れ物にふさわしい身体になるまで、修行をつけてください!」
などと言っている。
そしておずおずと言葉をつけくわえる。
「ってことは、あたしもざ・ばいりんぎゃるずに加入するってことですか? あたし、バイリンガルでもなんでもなくて日本語しか話せませんけど」
「俺もギャルじゃねーよ。……この名前、まじで変えたいんだがな……」
「どんなのがいいんですか?」
「✙漆黒の騎士団✙ダークスレイヤーズ⚔️」
「ださっ!」
:コロッケ台風〈ださっ!〉
:音速の閃光〈ださ丸水産!〉
:いっこにこにこさんこー〈センス……〉
:ベベベンボー〈ざ・ばいりんぎゃるずとどっちがいいんだろうな……悩むところだな〉
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