第24話 ベヒモスの突進
光希の目の前に現れ出たその刀身。
それは、剣と言うにはあまりにも大きすぎた。
長さは三メートルもあるだろうか、両刃の刀身の幅も20センチはある。
その巨大さと重厚さは見ただけで人の心を恐怖のどん底へと叩き落とすほどだ。
いや、実際下級のモンスターであればこれを見ただけで逃げ出すことがほとんどなのである。
光希の刀身ガチャの中でも最も攻撃力に優れているといっても過言ではない刀身であった。
:積乱雲〈キターーーー!!〉
:薄紅〈
:いっこにこにこさんこー〈久々に当たり引いた!!〉
:aripa〈ここしばらくはずればっかり引いてたからな、たまにはこういうのも引かないとな!〉
:レモンモンモンモン〈これならベヒモスにも全然対抗できるやろー〉
コメント欄が沸き立つ。
ベヒモスという強敵を前にこの強力な刀身を引いたのはまさに幸運と言ってよかった。
だが。
ベヒモスもまた、神話の時代から人類に恐れられ、敬われてきたモンスターである。
光希の呼び出した刀身を見ただけでその強さをすぐに理解したようだった。
その上で、ベヒモスが取った行動は。
「グォォォォォォオオオオオオオアァァァァ!!」
大きな唸り声とともに、ベヒモスはまっすぐ突進してきた。
光希たち三人のフォーメーションは、ベヒモスから見て右側手前に光希、左側手前にミシェル、そしてその数メートル奥に
ベヒモスが狙ったのは光希とミシェルの間、そう、
この三人の中でもっとも脆弱と考えられる存在を瞬時に見極め、敵パーティの戦力を削るためにまずそこを狙ったのであった。
右と左から挟み撃ちにしようと考えていた光希とミシェルにとっては、まさに虚をつかれた動きであった。
ベヒモスは駆け出すととんでもないトルクで加速し、ほんの1秒でトップスピードに立った。
「なっ!? くそっ……!!!!」
光希は屠龍の重刃を振り下ろすが、ベヒモスの身体にはわずかに届かなかった。
やばい、隙をつかれてしまった。
ベヒモスの突進は止まらない。そのまま
だがその数秒前、ベヒモスが姿を現したその時にはツバキの指示ですでに
まずは
「天の領域の聖なる光、太陽の輝き、星々のまたたき。我はここに呼ぶ、光なる守護の盾……」
その声はまるでフルートの音色のようにかろやかにダンジョン内にやさしく響く。
さらに左の手のひらに現れたもう一つの口が、女性としてはかなり低い声で別の詠唱を始めていた。
「かしこみかしこみ申す。掛けまくも畏きおおみかみ。今ここに清めの結界を張り奉る。光明の御力を賜り、闇の邪気を払え、穢れなき結界を成したまえ!」
そして。
ベヒモスが
「
瞬間、
この二つはただ並んでいるだけではない、一つの魂と一つの身体、そして二つの口から発生された二つの魔法。
それらは根源のところで混じりあい、同化していた。
その防護魔法の強度は人類が到達したことのないレベルにあったかもしれない。
事実。
古代より恐れられていた、重量と力を誇るモンスター、ベヒモスがその突進力のすべてを込めても――。
ドオオオォォォォォン!!!!!!!
鼓膜が破れるかと思うほどの轟音とともにベヒモスは魔法防護に激突した。
だが
:見習い回復術師〈まじか、物理攻撃にこれだけたえられる魔法防護なんてありえるのか?〉
:U.N.応援〈対魔法なら強力なのもあるけど……〉
:小南江〈すごいっす! やっぱり
:♰momotaro♰〈ベヒモスのやつ、脳震盪でも起こしたか?〉
:カレンダー〈ふらふらしているな〉
:どこにもたどりつけない〈お、光希とミシェルが行ったぞ!〉
「てめえの相手はこっちだああ!!!」
光希は正直、イラついていた。
せっかく
結局自力で防いでくれたからよかったが、万一――。
そう考えると裏をかかれた自分自身にも怒りが湧いてくる。
こんなやつ、一撃でやっつけなければ気が済まない。
ベヒモスが光希の方を向き、またもや突進するために牙を向ける。
光希はそんなのにかまわず、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます