第3章11話 半人魔将
テラがグレイエレファントスの素材を剥ぎ取りしている最中、俺は警戒態勢に入る。ここにイオンが来ているなら仕掛けるタイミングだろうか。セレナには大まかな距離を教えて貰う。
もう少し近くていいな。会話が聞こえる距離まで待とう。そしてセレナからその距離まで来た合図を貰ったタイミングで俺は無詠唱で
俺の奇行に驚いたのはテラと…………フェリシウスさんだった。
「うわああああ!? 何しやがる!?」
「…………なんであんた後ろも見えてるんだ?」
俺の問いにフェリシアスさんは答える。
「殺気だよ殺気! それのどこがおかしいだ?」
「一ついいですか? 貴方が見た遺体についてです。いえ、偽イオンさんの遺体について聞いてもいいか?」
「イオンの遺体? 偽?」
この場で唯一混乱しているテラ。フェリシアスは俺を睨みながら質問する。
「どういうことだ?」
「そのままの意味だ。あの遺体は偽物だったんだよ。アンタは偽物の遺体を作ったんだ。そしてイオンさんが二人存在することを示唆させた」
俺がそういうと、フェリシアスは黙って聞いている。
「アンタは先日、レグルスさんの件で自身の能力が露見したことを恐れ、あの件を知っている人間を消そうと餌としてイオンさんの偽物を作り出した。そして偽物を遺体として用意し、俺たちと本物をぶつける作戦だ。そしてその混乱に乗じて偽物を使い、傭兵同士をつぶす。それがお前の狙いだ」
俺がそういうと、フェリシアスは笑いだす。
「おいおい、仮に偽物で呼べたとして知っている人間をつぶせるかはわからねーだろ?」
「いいや、あんたは偽物をスパイとして送り込める。魔族関連の事件が機密事項であることを知っているから、限られた人間しか来ないって知ることもできるよな?」
「そこまでわかってるなら…………俺と戦う準備はできているんだろうな?」
フェリシアスは右手に剣を持ち、左手に銃を持つ。
「炎よ、我が銃から放たれん炎弾、敵を焼き尽くせ。
「炎の守護、我が身を囲みて鎧となれ。
銃弾を鎧で受ける。火属性対決は偽レグルスの時にやったっけな。…………もしかしてこいつ。
「お前…………コピーできても火属性の魔法しか使えないんじゃないか?」
俺がそういうとフェリシアスは図星だったのだろう。であれば納得だ。イオンの能力を手に入れて…………利用しないはずがない。
俺とフェリシアスが距離を取ってにらみ合ってるところで、ルーナ達も俺の方に集まってきた。ネレイドさんがテラに説明してくれたみたいで、テラも強力してくれるらしい。
「アクイラ…………わかった。君は……僕といたかったわけじゃなくて仕事だったんだね」
「テラ…………」
いや…………俺はお前とも…………今は良いか。フェリシアスの対面には俺とルーナとセレナとテラの四人。背後にはネレイドさん。こちらが有利だ。
「水よ、我が呼び声に応えて波を起こせ。
ネレイドさんが背後から波をぶつける。だがフェリシアスの魔力は尋常じゃないくらいに上昇したのだ。
「炎よ、我が身を包み、不屈の鎧となれ。
フェリシアスは俺もよく使う
俺の炎よりも強力だというなら…………
「セレナ! 頼む! 炎の守護、我が身を囲みて鎧となれ。
「わかったよ! 風よ、我が呼び声に応えて、突風を巻き起こせ。
「見せてやるよ! 今の俺の最強を!
俺の炎の鎧が、セレナの風を受けて赤から蒼に移る。高火力の炎は手足から伸びフェリシアスの鎧を貫くが、フェリシアスはまだ倒れない。
水属性しか使えないネレイドさんとルーナではあの火力の前では攻撃にならなそうだ。
「こいつは俺とテラでやる! 行けるなテラ!」
「…………うん、久しぶりに…………コンビネーション。大地よ、我が手に金属を集め、剣を創り出さん。
テラは二本目の大剣を生成し始めた。テラの本気モード大剣二刀流だ。二本の大剣を軽々しく振り回し、構える。
テラはゆっくり歩いて近づいていく。フェリシアスは剣でテラの攻撃を受けるとテラに銃口を向ける。俺は炎を噴き出し、高速で移動し、真横に移動し、空いた脇腹に正拳突きを叩き込もうとするが、フェリシアスはテラと剣を交えたまま側転をし、俺の方に三発の炎弾を発射する。だが今のフェリシアスの炎なら俺の
「やるじゃねーかぁ…………炎よ、我が刀に宿りて煌めき、敵を焼き尽くさん。
そしてフェリシアスの剣は燃え盛る。燃える剣は頭身が伸び、テラに斬りかかる。テラはそれに反応して即座に魔法を詠唱する。
「大地の力よ、我が身を強固なものとならしめよ。
テラは身体硬化の魔法を用いて炎の斬撃をガードするが、火力を防ぐことはできず、テラもダメージを受けてしまう。ルーナに治癒してもらうためテラには下がって貰った。
「一騎打ちになったな」
「ああ、いいじゃねーか」
火力はこっちの方が上かもしれないが、手札は間違いなくあちらが上だ。偽レグルスとの戦いでも思ったがあいつの方が俺より強いのは間違いない。
「それで? お前はどうやって偽物を作ってるんだ?」
「…………食べたんだよ」
「…………?」
フェリシアスの回答になっていない回答に、俺は首を傾げた。
「食べたんだ…………人間だった頃の俺は魔族だった肉片をな」
それを聞いたその場にいるメンバーが驚く。
「フェリシアスだった頃の記憶を持って、鏡の力を持つ魔族の意思を引き継いだ。俺はフェリシアスで間違いないが…………俺は人間であり、魔族でもある名乗るなら半人魔将フェリシアスだ! 倒した鏡剣魔将も名乗りがいがあるかもな」
半人魔将フェリシアス。
「炎と鏡の魔法…………超えてみろ」
そしてフェリシアスからいくつもの鏡が展開され、偽フェリシアスが大量生産された。
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