第3章8話 策略
地の聖女とのデートが終わり、館に戻るとすぐに俺の腰にルーナが装備された。腰装備のルーナは若い女の子の柔らかさを持ちヒーリング効果がある。
「待たせたなルーナ」
「ん。すごく待った」
ルーナは素直だ。自分の欲求をこれでもかと身体すべてを使って表してくる。もちろん、俺は問題ないが、視線が痛いときはあるな。
「ベラトリックス様旦那様お帰りなさいませ。もうすぐ昼食のお時間になりますので、食事をされてからテミスの街にお戻りください」
メイドさんたちが出迎えてくれる中、俺たちは部屋に戻っていった。ところでメイドさんの俺呼び方おかしくない? メイドさんに案内されて客室に向かうと、部屋を整えてくれており快適な環境になっていた。俺はソファに座って一息つく。セレナは俺から離れて窓際のテーブルセットの椅子に座る。そして俺の隣にルーナが座った。彼女は俺にくっついてきて言った。
「アクイラ、お疲れ?」
「ああ疲れたよ」
俺がそう言うと彼女は微笑んでから上目遣いで見つめてきた。その仕草は可愛らしいものだったのでつい頭を撫でてしまった。ルーナは気持ちよさそうな顔をしている。しばらく撫でた後、手を離すとルーナは少し残念そうな顔をしたがすぐに機嫌を直したようだ。
「アクイラ様」
俺とルーナの間に地の聖女が入ってきたので俺は少し横にずれると地の聖女は隣に座ってきた。そして彼女は俺の肩に頭を乗せてくる。ふわりと甘い香りが鼻腔を刺激してくるのと同時に柔らかい感触を感じたが特に意識せずに対応した。それにしても彼女の距離感は少しおかしいなと思うことはあるけど不快じゃないし別に良いかと思っている自分が怖い。
「アクイラ様」
「なんだ?」
「協力の件ですが、謹んでお受けいたします。必要なことがありましたら、何なりと…………何でもします」
「なんでもか…………」
俺は一瞬彼女の胸元やスカートの裾に目が行く。だが、今回は欲を抑えて地の聖女に礼を言った。
「ありがとな」
「ええ、お待ちしております」
イオンとの戦いに備えるには、彼女の協力が必要なことだ。食事の時間になり、食堂に移動し、俺は地の聖女にお願いごとをしてテミスの街に戻るのだった。
昼過ぎになり、俺とルーナとセレナの三人はテラやイオンを探すが街は大きく、見つかりそうになかった。その日は二人に会うことはできなかった。
その日は宿に戻り、テラとイオンの二人組に会えたのはそれから数日後のことだった。
「アクイラ……まだいた」
「ああ久しぶりだな。テラ、イオン」
「…………」
ギルドにいたらテラの方から話しかけられた。正直、そろそろ接触したかったから助かった。イオンは相変わらず何も喋らない。声に出されないことで何を考えているかわからないものだ。
「まだいた」
「え? 何それ帰れって言ってる?」
「…………違う」
テラも中々気持ちを伝えるのがへたくそだ。二度もまだいたと言われたらなんか傷つくじゃん。まあ、良いけど。
イオンはこちらを見ているから無視されている訳ではないことだけはわかる。最初から疑ってみていたせいか不穏だ。元々こういう奴ならしかたないのか。
「イオン、あんたとは二度目だったな。どうだ? また一緒に依頼に行かないか?」
「…………」
イオンは返事はしないが、頷く。了承ととらえていいのだろう。なんとなくこいつとのコミュニケーションの取り方はわかってきた。できれば、生前に会いたかったものだ。そしてテラとイオンには今度一緒に依頼に行く約束だけしてその場を離れることになった。
翌日。俺はイオンの遺体発見現場に向かう。地の聖女様にイオンの遺体の第一発見現場と第一発見者を連れてきてもらった。同行したのはネレイドさんとイオンの遺体の第一発見者である傭兵だ。その男は赤髪の男は反撃のフェリシアスと呼ばれる銃と剣を扱う騎士風の男だ。
「現場はここだ。他に聞きたいことは何だ?」
「ここにイオンの遺体があったんだな?」
「そうだぜ」
フェリシアスさんはそう言って倒れていた場所や遺体の状態、どうやって本人確認をしたかなど答えてくれた。遺体の損傷は激しかったこと。そのほかにも時間帯や死亡推定時刻がわかるかなどいくつか質問をしてみた。
「そういえば、フェリシアスさんはイオンと知人だったんですか?」
「いんや知らねーよ?」
「じゃあなんでイオンさんってわかったんですか? あ、傭兵証を見たとか? イオンさんは…………俺と同じ色でしたよね?」
俺は自分の傭兵証を見せてやると、フェリシアスさんはにこりと笑う。
「ああ、そうさ! その色の傭兵証を見て確認したのよ!」
「…………なるほど」
「ありがとう、ネレイドさん、フェリシアスさん。…………やっぱりよくわかりませんでした。せめてどんな奴が殺したかわかればよかったんだけど」
「いえ、送迎は聖女様のご命令ですので」
「俺も傭兵仲間の不審死を放置できねえ。わからないことがあればいつでも手伝うぜ」
フェリシアスさんは好青年のいい男って感じがした。ネレイドさんも頼れる先輩って感じだ。
フェリシアスさんには魔族という言葉を濁してそういった事件があると伝えているため、あまり協力をお願いしにくい。ただの第一発見者でしかない彼も一応は傭兵。
「ええ、今度よろしければ一緒に依頼に行きましょう」
「任せな!」「私の方も機会があれば」
え? ネレイドさんは依頼じゃなくてもご一緒したい。…………さてと、そろそろルーナが寂しがる頃だし、テミスの街に戻るか。
街に戻るとルーナはすぐに俺にしがみ付く。
「いやぁアタシもそこまではできないわ。でも腕は借りるよ」
そういってセレナも腕にしがみ付く。基本装備だ。フェリシアスさんは先に降りていたが、ネレイドさんはこの光景を見て何も言わない。もう見慣れたのだろう。セレナの方の腕は自由が利かないが、ルーナの方は腰にしがみ付かれているので手が動かせる。俺はルーナの腰に手を回すと、ルーナは嬉しそうに身体を擦り付けてくる。
「じゃ、ネレイドさん。聖女様によろしく」
「ああ、また近いうちに会うことになるだろう」
そういってネレイドさんは馬車で聖女様の元に向かったのだろう。一応、気になる点はネレイドさんに伝えた。
後は…………魔族側がちゃんと動いてくれるかだな。傭兵ギルドに向かうと、イオンとテラの二人がいる。
「よう!」
「アクイラか」
「…………」
やはり返事をくれるのはテラだけでイオンは何も言わない。
俺はイオンの隣に座る。イオンは食べていたつまみの皿を俺に差し出した。
「食べていいのか?」
俺がそう尋ねると、イオンは頷く。こいつなりのコミュニケーション何だろう。テラはそんな俺たちを眺めて呟いた。
「アクイラ…………僕らに構う理由は…………何?」
テラはそう言った。恐らく俺の目的が見えてこないのだろう。特に彼女は昔の俺を知っている女だ。
一年前の俺は、
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