第3章7話 デート
聖女に協力申請をしたところ、デートを提案された俺は…………そもそもこの依頼って聖女様からだよね? ということに気付いたがこれを気に最低な人間を演出して俺を嫌いになってもらうのもありかとと思い、彼女とのデートに賛成することにした。
が、その前にまずは嫌な男ムーブをしよう。
俺は聖女様のすぐ近くまで行こうとする前に、腰装備のルーナ、腕装備のセレナを外す。そして聖女様の身体に触れていく。
「俺と二人きりってことはどういうことをされるかわかってるのか?」
肩と腰を掴んだり、撫でたりしてやった。
「え、えっと……それは」
聖女様は顔を真っ赤にして俯いている。俺は彼女の耳元で囁くように言った。
「俺が何するかわかってるのか?」
すると彼女はさらに顔を赤くして言った。
「わ、わかっています! で、ですが私は構いませんよ!」
いや、構おうよ。嫌がってもらうためにやってるんだから。決して俺に下心なんてない。本当にない。聖女様、美人だし柔らかいし、良い匂いするな。
だがこれはいい機会だ。このまま押していけばきっと嫌われるはずだ。そしてラブレターもなくなるはずだ。
「本当にいいのか?」
俺がそう言うと聖女様は言った。
「ええ、構いません」
念のため、シルヴィアさんとネレイドさんの方に視線を向けるが、彼女たちは視線をそらして、私達何も知りませんのていで行くらしい。なら俺の好きにしていいってことだよな。そして俺は彼女に優しく触れるだけのキスをする。
唇を離そうとするが、なぜか彼女の方から離れようとしない。それどころか俺の首に手を回して抱き着いてきた。
え、なんで? なんで離れないの!? というかこれ舌入れてもいいの? そして俺はそのまま彼女の口の中に舌を入れた。すると彼女もそれに応えるかのように舌を絡ませてきた。
しばらくした後、口を離すと彼女はトロンとした表情をしていた。
「あ、あの……もっと」
そう言って再びキスをしようとするので俺は止めた。
「もっとして欲しかったら、デート中に俺を喜ばせるんだな」
こういう事で、デートは俺から聖女様への接待ではなくなり、聖女様から俺への接待に変わる。そんなデートは楽しくないはずだ。これで勝てる。
「え、ええ……頑張りますわ」
いや頑張らなくていいです。いや本当に頑張らないで下さい。
「大丈夫ですわ! 私に任せてください!」
ルーナとセレナには、俺の狙いを説明して二人は聖女様の御屋敷に置いていくことにしたが、俺の聖女様に嫌われる作戦と内容を伝えた結果、二人はそれぞれこう言った。
「無謀」
「無理だよねー。アタシもアクイラが節操なしってわかってついてきてるもん」
…………泣きそう。そして馬車を出してもらい、二人でテミスの街ではなく近くの村に行くことになった。テミスの街だと聖女様がデートしにくいからだ。向かったのがヴォルトという村だそうだ。ヴォルトは自然に囲まれた美しい村で、観光客が訪れているらしい。
聖女の馬車は目立つので普通の馬車に変えてもらった。そして俺は聖女様と共に馬車に乗りながら村に向かった。
俺は聖女様のすぐ隣に座る。地味な深緑色のブラウスに濃い茶色のスカートをはいて上品で清楚な服装をしている。お忍びの服装なのだろうが、正直ただの美女だ。こんな美女としばらく二人きりになるのだから嫌われることは置いといて緊張はしている。だが、ここで緊張を悟られてはいけない。俺は平静を装っているが聖女様は顔を赤くしながらチラチラと俺の方を見てくる。
「あ、あの……アクイラ様?」
「なんだ」
「その……手をつないでもいいですか?」
そう言って彼女は手を差し出してきた。俺はその手を握らずに言った。
「ダメだな。俺の手はお前の身体を触るために開けておいてるんだよ。村まで耐えられるかな?」
聖女は顔を赤くしてうつむきながらスカートのすそを両手で握ってもじもじしている。正直、この反応が可愛くてたまらない。俺は胸や尻などは避けて彼女の身体をべたべたと触りたいように触った。一切抵抗はない。そして馬車はゆっくりと速度を落としていき村に到着した。到着する頃には、聖女様は汗をかいて顔を紅潮させてしまい、さすがに少し落ち着かせてから村に入ることにした。村に入ると、小さな民宿があった。聖女様と俺は馬車から降りて中に入ると、おばちゃんが笑顔で出迎えてくれた。どうやらこのおばちゃんの旦那さんは、この村で木こりをしているらしく、今日は泊まりに来たという事にした。俺と聖女様はまさかの新婚という設定だ。
「あらまぁ、これは綺麗なお兄さんと可愛らしいお嬢ちゃんだねぇ。部屋は一つでいいかい?」
おばちゃんがそう言うと聖女様は顔を赤くしながら言った。
「はい!」
「…………」
俺は部屋に入った後、荷物を置いてから聖女様に声をかける。
「泊まりなんて聞いてませんよ?」
「はい! 明日の朝には帰りますのでご安心を」
とりあえず村の中を回ることにした。そこまで大きな村ではないが、自然に囲まれた美しい場所だ。
「ああ、そうだ。お忍びなので絶対にベラとお呼びください。あっハニーでもいいですよ?」
「行こうかベラ」
「はい、ダーリン」
お前はダーリン呼びするんかい。まあとりあえずこのお忍びデートを続けるか。
歩きながら村の屋台などを見て回る。
「あ、これ可愛いですよ!」
地の聖女が手に取ったのは小さな緑の宝石があしらわれたペンダントネックレスだった。確かにこいつに似合いそうだな。嫌われようと考えているが、こうもキラキラとみていると…………
「これ下さい」
店主に声をかけてそれを買うと、俺はベラの首にかけてやった。
「あ、あの……」
ベラは頬を赤く染めながら言った。
「ありがとうございます」
なんかこっちも恥ずかしくなってきたな。そして村の中を回りながら歩いていると、男たちに声をかけられる。
「おいおいにいちゃんえらく美人のねーちゃんと一緒にいるじゃねーか」
「そこの女を置いていったら見逃してやるよ」
「おいおいビビってるのか?」
正直、まったく怖くない。俺は
俺は男たちに声をかける。
「おい、お前ら」
俺が声をかけると男たちは俺に近付いてきた。そして一人の男が殴りかかってきた。俺はそれをかわすと、男の顎にアッパーを決めた。男は白目を向いて倒れた。
もう一人の男がナイフを取り出して切りつけてきたが、俺は腕に炎を灯す。魔法に気付いたゴロツキたちも自信があるのか魔法を行使してきた。
炎の鎧で攻撃を防ぎつつ、打撃は直接攻撃にしていた。ゴロツキたちがバタバタ倒れている中、死角からの銃撃に俺は脚を負傷するも、ゴロツキたちは全員対処できた。
この銃撃はどこからだ? 俺は周囲を見渡すと、それらしき人物はいなかった。
「大地の恵みよ、我が仲間を癒やし、育てよ。
聖なる果実を育成し、俺に手渡してくれる。この魔法は聖女だとバレかねないが、知識がなければわからないはずだ。俺はそれを食べた。すると傷が癒えて体力が回復した。
「ベラ、ありがとう」
「いいえ、お気になさらないで下さい」
俺たちはゴロツキたちを倒した後、村の近くの川で二人で釣りなどをしたり、食堂で食事したりと気が付けば嫌われようとしていたことを忘れて宿に戻ってきてた。
「素敵なデートをありがとうございます」
「ああ、俺も楽しかったよ」
そう言うと彼女は俺に抱きついてきた。俺は彼女を突き放すことができないでいた。そしてしばらくした後、彼女は俺から離れた。
「そ、それではそろそろお休みしましょう」
「…………そうだな」
俺と聖女は同じベッドに入り、密着して眠ろうとするが、俺はルーナで馴れたせいか、そこまで問題はなかった。が、地の聖女は別だ。
「聖女様?」
「ベラです。今日だけはどうかベラとお呼びください」
彼女の消え入りそうな、不安げな声に俺はつい優しくしてしまった。
「ベラ…………眠れそうか?」
「ひどい人、わかってるくせに」
そう言うと彼女は俺に抱きついてきた。彼女の柔らかな肌の感触が伝わってくるが、不思議と邪な考えは浮かんでこなかった。
「アクイラ様」
「なんだ?」
「私は……本当にアクイラ様の事が好きです」
俺は何も言えなかった。嘘とはいえ、彼女の想いを否定する勇気はなかったからだ。そんな俺の様子を察したのか地の聖女は俺の頬に手を添えてきた。そしてそのまま唇を重ねる。俺はそれを拒むことができなかった。しばらくした後、彼女は俺から離れた。
「おやすみなさい」
「ああ……おやすみ」
俺はそれだけ言って眠りについた。朝になり、俺たちは馬車に乗って村を出発する。そして俺はベラに言う。
「満足したか」
「ええ、それはもう素敵な思い出をありがとうございます」
「俺も…………良い女と一緒に休暇を取れるのは悪くなかったよ」
地の聖女はそんな俺を見て、少し寂しそうな表情をした。
「そうですか……でも私は諦めませんよ」
「そうかよ」
「はい! だってアクイラ様は私の事が大好きですもの!」
「はいはい」
俺が適当に返事をすると彼女は頬を膨らませた。だがすぐに笑顔に戻る。本当にコロコロ表情が変わる子だ。そして迎えの馬車を走らせてもらい、彼女の館へと戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます