第3章4話 接触
地剣のテラ。彼女とパーティを組んでいたのは一年ほど前だ。当時の俺は
テラは二つ名通り地属性の魔法を使う剣士で地属性の武器生成魔法で武器を作り、身体硬化魔法で防御力を上げていた。どちらもバリバリの前衛だったが、前に出てゴリ押しするパーティだった。
テラは比較的無口だったが、真面目でまっすぐな性格をしており好感が持てた。彼女は淡々とした性格だが、戦闘では頼りになる存在だったし、何より一緒にいて楽しかった。
しかしある日突然、彼女はパーティを抜けると言いだした。理由は教えてくれなかったが俺は了承した。そしてその後すぐに彼女は別の街へと旅立っていったのだった。どうやら今はテミスの街にいるらしいな。
「テラのやつ元気かな」
そんなことを思い出しながら俺はテミスの街を歩いていた。ここは法王国にあたり、国領はこの都市だけだがそれでも十分大都市といえる街だ。
「テラ? 知り合い? 浮気?」
「え? 何? アクイラの知り合いなの?」
ルーナとセレナは俺を睨んだ。正直、どちらも可愛いだけである。
「え? ああ、そうかお前らは会ったことないよな。テラっていうのは俺が以前三ヶ月ほどパーティを組んでいた仲間だ。この街にいたんだな」
そう言えばテラはテミス出身だったな。そんなことを考えていたら左右から思いっきり腕を抱き締められたり、服を引っ張られてたりして歩きにくかった。
「浮気禁止」
「ねえアタシはー?」
俺は二人に腕を引っ張られながら街を散策していった。この街には来たことはないが、とりあえず傭兵ギルドに行けば何とかなるだろう。俺は二人に引っ張られながら傭兵ギルドへと向かった。
道中、視線が痛かったのは、ルナリスと違って俺たちのいつもの光景を周囲は見慣れている訳じゃないからだろう。…………いや、ルナリスでも結構視線痛かったかも。
傭兵ギルドに入ると酒場の席につき、食事をとりながら周囲を見渡した。知っている顔はいないか。俺は鳥の串焼き、ルーナは甘いケーキ、セレナは野菜サンドを食べていた。
セレナはこの街の野菜を大変気に入ったらしい。
しばらく食事をしていたが、特に変わったことは起こらなかった。イオンやテラも見かけない。
その後俺たちは宿をとりその日は休むことにした。宿は二部屋とるつもりだったが、ルーナが俺から離れることはなく、セレナもだったら自分もと言い出し、三人一部屋となった。
一応ベッドは二つ。ルーナもセレナも小柄な方だから俺が一つ。二人で一つが定石なのだろうが、なぜかベッドは二つ並べられ、俺が中央、セレナとルーナが両サイドになった。二人が俺に密着して眠るのはもう慣れた。
偽イオンパーティへの張り込みの為に今日も傭兵ギルドの酒場に足を運ぶ。しかし、毎日何もしないと怪しまれるので、何か依頼を探そうと思った時だ。依頼掲示板の前にいた女性を見て俺は目を見開いた。彼女は強靭な体つきをしており、その筋肉は一目で彼女の力強さを物語っていた。彼女の赤い髪と黄色い瞳は、その強さと相まって彼女をより印象的にしていた。
彼女が身に着けている装備もまた、彼女の力強さと地の属性を表現していた。赤と黄色を基調としたタンクトップは、彼女の筋肉を強調しつつ、動きやすさを重視したデザインだった。黒のレザーパンツは彼女の強靭な体つきを引き立てている。そして、黒のレザーブーツは、彼女の足元に安定感を与え、剣士としての力強さを表現していた。
俺はその場に立ち尽くし、彼女の姿に圧倒されながらも、彼女の強さと美しさに感心していた。
「テラ!」
「? アクイラ?」
俺は思わず彼女に声をかけた。彼女は驚いた顔をしていたが、やがて笑顔を浮かべた。
「久しぶりだな。最近見かけなかったが、元気にしてたか?」
「それなりにね」
テラは笑顔で答えた。その笑顔は以前と全く変わらない。
「アクイラこそ元気そうで良かった」
「ああ、俺も元気だ」
俺はそう言って笑った後、彼女に話しかけた。
「なあ、今暇か? ちょっと話そうぜ」
俺がそう言うと彼女は少し考え込んだ後、口を開いた。
「んー? 僕は平気。アクイラの連れは良いの?」
テラは俺の両サイドにいるルーナとセレナを見てそういった。ルーナは完全に敵意を向けている。仲良くしろ。セレナはぎゅっと強く俺の腕を掴み、テラのことを興味津々で見ていた。
「ああ、久しぶりにお前と話したいんだ。それに俺の仲間も紹介したい」
俺がそう言うとルーナとセレナも静かに頷いた。テラは2人を見て不思議そうな顔をしたが、すぐに笑顔を浮かべた。
「ふーん? まあいいや」
席について早速テラに二人を紹介する。
「こっちがルーナ、水属性の魔法使いだ。それでこっちがセレナ、狩人だ」
「よろしくね~」
セレナが手を振る。ルーナはこくりと頷くだけだった。その様子を見てテラはこくりと頷いた。
「僕はテラ、剣士、よろしく」
剣士となる彼女にセレナはとある疑問を投げかけた。
「え? 剣はどこにあるんですか?」
「ああ、テラは魔法で剣を生成するんだ」
セレナの疑問に俺が答えると、テラは右手を前にかざした。すると彼女の手に一本の剣が現れた。それはシンプルで美しいデザインの剣だった。銀色に輝く刃がとても綺麗である。そして何より驚いたのはその軽々しさだ。彼女の剣ははっきり言って重い。成人した男性でも両手で持つサイズをしている。それを彼女は片手で持っているのだ。
「す、すごいですね」
セレナが驚くのも無理はないだろう。いくら魔法でもこんな精巧に武具を作れる魔法はそうそうない。
「僕の魔法。金属、操る」
そういうとテラは剣を粒子にしてなくす。
「俺はまだルナリスにいるよ。そこでこいつらと三人パーティをしてるんだ。お前は?」
俺はそう言ってテラに尋ねた。彼女は少し考えた後、口を開いた。
「僕はテミスを拠点にしてる。今はパーティメンバーが一人いるよ」
知っている。イオンという人物だ。俺たちはそいつが本物か偽物化の調査をしているのだから当然か。
「へえ、どんな奴なんだ?」
「静寂のイオン、銃士。無口、あまりしゃべらない」
それ、お前が言うんだ。
「へえそうか。会えたりするのか?」
「…………? 何故?」
「えっと興味本位だ」
「そう。イオン、休み、わからない。明日、依頼。…………来る?」
「いいのか?」
「多分」
とりあえず明日の約束を取り付ける。朝になったら傭兵ギルドに行けばいいらしい。了承を得て俺たちは翌日に備えるために明日の準備をして宿に戻ることにした。
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