第3章
第3章1話 新生活
ルナリスの街に戻って数日が経った。セルヴァスの集落に行く前と大きく変わったことは一つある。我が家に居候が増えたことだ。
それはルナリスの街に着いた時だ。俺たち五人は酒場で食事をしようと探している時に、俺はふとした疑問を投げかける。
「セレナ、お前は済む場所決めているのか?」
「うん、アクイラの家に住もうと思ってるよ!」
「はぁ!?」
彼女はさも当然のように言うものだから思わず聞き返してしまった。
「だってアタシ、他に行く場所ないし? なんなら集落は通貨を使わないから無一文だもん。だから住ませてよ」
「いや、でもなぁ……」
俺は渋っていた。確かに彼女は可愛いしスタイルも良い。しかし、俺の家にはすでにルーナが頻繁に泊まりに来るし、カイラさんも三日に一度は現れる。俺の住んでいる小屋はそこまで広くない。だが寝泊りくらいなら困らないだろう。リビングと俺の寝室。それから客室が一つだがこの客室は実質カイラさんの部屋になりつつある。まあ、小屋も俺が作ったし増築すればいいか。
「わかった、じゃあセレナも住めるようにするよ。そういえばリーシャたちはどうしているんだ?」
「私たちは街の宿を二人で借りているよ」
なるほどな。金がかかるなら増築ついでにうちの客間も増やしてもいいな。
「お前らもルナリスの街にいる間は家に住むか? 増築してからになるけど」
「え? よろしいのですか?」
エリスが驚いた様子で聞き返してくる。
「ああ、構わないぞ」
俺がそう答えると二人は嬉しそうにしている。そんな二人を見てルーナは面白くなさそうな顔をしていたが気にしないことにする。それから俺たちは酒場で食事をして宿に戻った。そして我が家の増築作業が始まった。といっても地属性の魔法の中でも植物の育成が得意なギルドの受付嬢であるリズさんに手伝ってもらい、適切な木材をどんどん生成してもらい、イグニス達に組み立てを手伝ってもらい、あっという間に増築は完了した。
我が家はリビングに俺の寝室。調理場まで改装して大きくした。カイラさんが使っていた客間はそのままにして二階を作り、セレナ用の部屋と客間を三つほど用意した。その三つのうち、二つをリーシャとエリスに貸し出した。一個余っている理由はまだスペースがあったので予備、ではなく本当はルーナ用だった。だが、ルーナの宿泊は結局、俺の寝室になっている。
「アクイラ、今日はどうする?」
「そうだな。俺はギルドに行こう」
「私も行く」
ルーナとセレナがついてくることになった。ちなみにカイラさんは今日もいない。彼女は今どこにいるのだろうか? まあ、そのうち会えるだろうと思い気にしないことにした。リーシャとエリスは基本は別行動だ。ギルドに着くと早速依頼を探すことにした。
現在俺たち三人のランクは
ルナリスの街周辺で受けられる依頼をいくつか見繕い、受付嬢に依頼書を渡すと手続きが始まる。
「アクイラさん、新人育成でも始めたのですか?」
「そういうわけではないんだけどな」
俺は苦笑しながら答える。依頼を受けることは簡単だ。受付嬢に依頼書を渡すだけでいいのだから。でも、どうしてこうなったのかは俺自身にも理解ができないのだ。ただ普通に生活していただけなのにいつの間にかこんな事になっていたのだ。
「そうですか。どちらにせよ、人手が多いことに越したことはありません。傭兵登録と新人育成は大歓迎ですよ!」
受付嬢のリズさんは嬉しそうに言う。確かに人材不足の傭兵業界で新人育成は重要な仕事の一つだろう。でも、俺は別に俺はやりたくてやってるんじゃなくて集まってるからやってるだけなんだよな。
「では、依頼を受理しましたので行ってらっしゃい!」
俺たちはギルドを出て早速依頼の場所へと向かうことにした。今回受けた依頼はブロコラーモンスの討伐だ。ブロコラーモンスは簡単に言うとブロッコリーみたいな魔獣だ。見た目はデカイ植物の根の部分を足のようにして歩いており、攻撃手段は花蕾から魔法のエネルギーが放出され、周囲の植物を操ったりする。また、彼らの茎や葉は強力な防御手段となり、攻撃を跳ね返すことができるんだよな。俺たちは街を出てブロコラーモンスを狩るために森へと足を踏み入れた。そこは背の高い木が生い茂っており、地面には落ち葉や草が生えていて歩きにくい場所だ。しかし、俺たちの足取りはとても軽いものだった。
「アクイラ! 見つけたよ!」
「おう! 任せろ」
俺はセレナからの報告を受けてすぐさま走り出すと、こちらに気づいていない魔獣に容赦なく一撃を加えた。すると俺の炎でブロコラーモンスは簡単に焼けていく。しかし俺だけ討伐しても仕方ない。
今回は俺とルーナの陣形にセレナも加えたパターンの戦闘を練習するための依頼だ。だから、セレナの動きを見つつ、戦闘パターンを確認したいな。
「セレナ! 頼む!」
「分かった。任せてよ!」
彼女は頷くと目を閉じて集中し始めた。風属性の感知魔法を無詠唱で発動しているのだろう。そしてセレナは奥の茂みに向けてボウガンを向ける。
「風よ、我がボウガンの矢に加わり、疾風となれ。《ラピデウス・フラクトゥス》」
セレナが呪文を唱えると、矢の先に風が集まる。そして放たれた矢は一直線に飛んでいき、茂みに隠れていたブロコラーモンスの茎を見事に貫いた。
「よし! 命中したな」
それから俺たちは次々と魔獣を倒していくのだった。しかし、しばらくすると突然地面が大きく揺れたかと思うと、巨大な植物が現れたのだ。巨大なブロコラーモンスのようだ。
「お、大きいね。でもアタシ達の敵じゃないよね?」
セレナが不安そうに言うので俺は問題ないなと言って頷いた。するとセレナは笑顔になる。ルーナはむっとした表情で俺に抱き着く。戦闘中はやめてほしいものだが、それだけ彼女も余裕が出てきたのだろう。
「セレナ。援護を頼む」
「分かった!」
セレナの返事を聞いた後、俺はルーナに合図をして同時に走り出す。そして俺を中心にして左右対称になるように動く。これは二人で戦う時の陣形だ。俺たちはそれぞれ拳とロッドを構えると、同時に攻撃を行う。
「いくぞ!」
「うん!」
ルーナはロッドを振って水流を生み出す。そしてそれを魔獣に向けて放つが魔獣は根っこで弾き飛ばした。しかし、その隙に俺は炎を纏わせた拳を叩き込んだ。すると炎の魔力と水のエネルギーが合わさり、爆発的な威力となってブロコラーモンスを襲う。だがそれでも致命傷にはならず、ブロコラーモンスは怒り狂って暴れ出したのだ。俺たちはすぐに距離を取ると再び攻撃を仕掛けたのだった。
「アクイラ! あれ、試そうよ!」
「よし! 頼むぞ! 炎の守護、我が身を囲みて鎧となれ。
「頼んだよ! 風よ、我が呼び声に応えて、突風を巻き起こせ。
俺の身体に突風が纏い、紅い炎は蒼く染まる。
「
炎の鎧は蒼く染まり、一気に火力が上昇した。どうやら安定してこの状態を作れるみたいだ。火力の高い炎で巨大ブロコラーモンスを一瞬で焼き尽くした。
「やったぁ! 成功だね!」
「ああ、そうだな」
俺がそう言うと彼女は嬉しそうに飛び跳ねた。俺はその姿に苦笑しながらも討伐の証拠となるブロコラーモンスの根を採取したのだった。そして俺たちは街へと戻ることにした。
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