第2章14話 人だから 人ならば 人だったら
誰かに名前を呼ばれたような気がする。
「アクイラさん!!!」
「アクイラさん!」「アクイラ!」「アクイラさん!!」
「…………ルーナ? セレナにリーシャさんとエリス…………夢?」
俺はゆっくりと瞼を開くと、そこにはルーナやリーシャさんやエリスちゃんだけでなく、セレナもいた。俺は横たわっていたため、全員を見上げてみていた。俺はそれぞれの姿を見て呟いた。
「ピンク、黒のレース、白に黄色の縞パンか」
「見るのはこの際スルーしておこう。口に出すな」
リーシャさんが俺に対して冷たく言い放つ。リーシャさんは隠そうとするよりも鎖を外す為、しゃがみ込んで作業し始める。さっきより黒のレースが見やすいな。ルーナは隠す気配はなく、エリスは顔を紅くしてスカートの裾を抑え、セレナは少し離れた。
「よし外れたぞ」
リーシャさんはそういうと、立ち上がって俺に手を差し出す。俺はその手を掴むとゆっくり起き上がる。
「ありがとな黒のレース!」
「うるさい!」
俺のお礼をリーシャさんは顔を赤くして手を叩かれた。すると、セレナが俺の手を取ってきた。
「アクイラさん! 約束通り助けに来ました」
「ああ、ありがとな、セレナ」
俺はセレナの頭を優しく撫でるとセレナは嬉しそうにしていた。そして次に口を開いたのはルーナだった。
「アクイラさん、無事でよかったです」
「ありがとなルーナ。ルーナがあの後どうなったのか心配だったんだ」
俺がそういうとルーナは笑顔で頷いてくれた。しかし、急にルーナの顔は険しくなり、俺の胸倉をつかんできた。
「それはこっちの言葉! アクイラさんが心配だったんです! あの時、私が逆のことをしていたら、貴方だって同じ気持ちですよね!? 分かったらもうこんな無茶はしないでください!」
俺は涙目になっているルーナを見て言葉が出てこなかった。ルーナが叫ぶ姿なんて想像できなかった。きっとあんなことをしなければこんなに叫ばせることはなかっただろう。そして再び口を開いたのはリーシャさんだった。
「二人とも落ち着いてくれ。まだ敵地だ」
俺とルーナは互いに互いの顔を見合って少し顔を赤くした。エリスとセレナが俺たちの間に入り、リーシャさんはその間に立つ形で落ち着くことができた。俺は立ち上がるとリーシャさんにお礼を言うことにした。
「ありがとな、リーシャさん」
「…………リーシャと呼べ。君は年上を敬ってるつもりかもしれんが、ここまで一緒に来た仲間なのに、私だけ疎外感を感じる」
「じゃあ…………ドスケベパンティお姉さん」
「おい! なんでそうなる!」
リーシャは顔を赤くして俺に言い返す。俺はそんなやり取りが面白くて笑ってしまった。そして、エリスとセレナも笑っていた。
俺はリーシャさんから現状を共有してもらった。どうやらカイラさんまでこの集落に来ていたらしい。なぜあの人がここにきているか知らないが、そんなことはどうでもいい。あの人が来ているなら、今度こそアウレリウスを倒そう。
そういえばあの赤い獅子はどこに行ったんだ。看守なのにいないな倒されたのか。まあ、いいか。
「俺はもう一度あの魔族、アウレリウスの所に行く。ルーナ回復してくれ」
「ん。澄み渡る水よ、癒しの泉となりて我が仲間を包め。
俺の怪我はどんどん回復していく。そして、その隣でエリスもリーシャもセレナも怪我を直していく。俺はその様子を見ており、ルーナは心配そうに俺の顔色を窺っていた。
「アクイラさん? もう動いて大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫だ」
俺がそういうとルーナは少し安心していた。そして俺たちは独房から出ようとした時、外から魔獣の声が聞こえてきた。どうやら魔獣が集まってきているようだ。
「さて、もうひと働きとするか」
リーシャは槍を構えてそう提案するが、俺は首を横に振った。
「悪いなお前ら、ここは俺一人で行くぜ」
俺は両手に紅い炎を灯す。通路に集まった魔獣たちを腕を払い、拳をふるい、掴んで頭部から焼き尽くした。手が届く範囲から焼き向かってくるものを殴る。
今日はすこぶる調子が良い。魔獣たちが何一つ脅威に感じないんだ。
「よし、先に進むぞ」
俺は牢屋から出て通路を進んでいく。リーシャが何かを言おうとしたがそれをセレナが止めた。エリスとルーナも俺の後をついていき、牢から出た時にリーシャさんが何か言っていたのが聞こえたが無視した。
そして俺たちは遺跡の分かれ道まで来た。そこにはもう誰もいない。複数の魔獣の肢体の後だ。真っ二つに裂かれた魔獣や焼かれた魔獣。様々な死体ばかりだ。
そして奥地に向かうとそこにいたのはアウレリウスと魔獣の軍団さらにそこに立ち向かう高ランク傭兵たちだった。だが、前衛であるレグルスの奴とエルフの戦士たち。さらにはカイラさんもいる。
アウレリウスの剣は二本。速さが自慢のスピードタイプのようだが、カイラさんの方が速い。マーレアさんはチョキチョキと鋏を動かしていて何かをしているのはわかるが、何が起きているかわからない。
「見ているだけで終わりそうだな」
「そうだな、ただまだ底をしれない。あいつ余裕そうだ」
リーシャが俺に話しかけてきたので俺は同意したものの、何か不安を感じる。どうやら俺たちも加勢しなくて済んだみたいだ。マーレアさんの能力がすごいんだろうが、カイラさんたちが圧倒している。だが、それでもアウレリウスは余裕そうだった。
俺たちはその光景を見ていたが突然エルフたちと戦っていた魔獣たちがカイラさんに向かっていったのだ。そしてその後ろにいたライザットたちも向かっている。しかし、それは全て無駄だった。カイラさんすでにその魔獣たちを蹴り終えた。
そしてレグルスの所にはあの赤い獅子がとびかかっていた。あいつ、あんなとこにいたんだな。レグルスは赤い獅子に対して大剣を薙ぎ払って吹き飛ばそうとしていた。
しかし、ちょきんと音が鳴ると同時に、レグルスは膝から崩れ落ち、赤い獅子にかみつかれた。レグルスは痛みに耐えながら大剣で薙ぎ払おうとするが、赤い獅子はその場から離れていた。そして赤い獅子が詠唱を始める。
「炎よ、我が身を加速させん。
その言葉と同時に紅い獅子は燃え上がり、レグルスにトドメを刺そうとしていたところでレグルスも立てなそうとする。そしてマーレアが手持ち鋏を掲げて詠唱をする。
「鋏よ、魔力を断ち切り、我が道を開け。
今度こそレグルスはまともに立つことができず、赤い獅子の攻撃をモロに受けた。間違いない。マーレアさんはレグルスを殺そうとしている。するとレグルスはよろめきながらも立ち上がり、赤い獅子に向かって行く。
そしてレグルスは、マーレアさんに切り裂かれた。その瞬間、レグルスの身体は鏡が割れたように崩れ落ちる。
「何やってるんですか? マーレアさん?」
いくら嫌な奴でも、この状況で同士討ちをするメリットはない。何か意図があるとは思うが、なぜこんなことをしているかわからなかった。
俺の声掛けにマーレアさんはゆっくりと振り返る。
「いえ、これも仕事ですのでそれにいくら私でも切断した人体を鏡みたいにすることはできませんよ。
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