こうかはばつぐんだ!

「で、あんたの死んだ理由と自爆霊が何なのかは分かったけど、なんで俺に金縛りなんか仕掛けてきたんだ?」

と、ずっと気になっていた事を訪ねてみた。

「それは、ですね、私達自爆霊は成仏する事を禁止されていますが、一つだけ成仏する方法がありまして…。」

「それで?」

俺は先を促す。

「その方法というのが、生きてる人間に取り憑いて、その人間に心の底から成仏して欲しいと願って貰う事なんです」

「成程。でもそれでなんで金縛りなんだ?」

幽霊は言いよどみながらも続ける。

「自爆霊達は、取り憑いた人間を怖がらせれば、恐怖心から成仏して欲しいという感情が生まれる事に気付きまして…。それで私もチョロそっ…人柄のよさそうな方をみつけたので取り憑いて金縛りを」

「お前今チョロそうって言おうとしたろ」

「気のせいです!!」

まあ、なんにせよ事情はわかった。俺を怖がらせて成仏しようとした訳だな。

だがこの幽霊相手に怖がる事なんて出来そうにないし、ここはお引き取り願うのが賢明か。

「あんたには悪いんだけど、期待には応えられそうにないから、他のやつに取り憑いてくれ」

「…できません。」

「何が出来ないんですか?」

「1度取り憑いた相手からは成仏するまで離れられないんです…」

俺は無言で立ち上がり台所にいくと、調味料ラックからあるものを取り出した。

そのあるものを持ち部屋に戻ると、俺の手元をみた幽霊の顔が引き攣る。

「あ、あの〜、落ち着きましょう?落ち着いてお話しましょう?人は会話の成り立つ生き物です!」

お前は生き物ではなく死に物だろうという突っ込みは飲み込み、俺は手に持っていた小瓶の蓋を開け、幽霊にかける。

「いっ、痛い!!痛い!!痛いですっ…!!」

そう俺がかけているのは塩である。

幽霊相手なら塩が効くのではないかと思い、試してみたのだがこうかはばつぐんのようだ。


——数分後——


「うぅ〜…ぐずっ…酷いです…」

俺に塩をかけられた幽霊が膝を抱えて泣いている。塩をかけたら成仏するんじゃないかという目論見もあったのだが、ダメージは与えられても成仏は出来ないようだ。

「はぁ〜…。酷いのはどっちだよ。許可なく勝手に取り憑いておいて離れられないなんて悪質な訪問販売よりタチが悪いぞ」

「ぐずっ…だって…しょうがないじゃないですか…。先に説明なんてしたら…ぐずっ…恐怖心が薄れてしまうと思ったんですもん…」

ぐずぐずと泣いている幽霊を尻目に、どうしたものかと思案する。

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