第6話 トイレ
前回のあらすじ、
ルーナリア(2歳、オオカミ)が仲間になった。
…………
まあオオカミだから、全然大丈夫だから…。
…まあこれは気にしないようにして。
昨日はあれからいろいろ話してそのまま寝ちゃったからな。
今日からはもっと暮らしやすくするための作業をしていくぞ。
「ふぁああぁ。
おはよう、みのる。」
そんなことを考えているとルナが起きてきた。
まだ眠たそうにしている。
朝に弱いのか?
「ああ、おはよう」
さて、今日は何をするか、俺は朝のあいさつを返しながら考える。
まず結界の外に出るのは論外だな。
昨日ひどい目にあったし、今の俺じゃまだ力不足だ。
あー、そういえばまだあれを作ってなかっ…
「みのる何考えてるの?」
一人で今日何するか考えているとルナが声をかけてくる。
そういえばこれから2人になるんだ。
それなら一緒にこれからやること考えたほうがいいな。
「いや、今日は何しようかなって考えてたところだ。」
「そうだなー…
私、農業やってみたい!
リット育てたい、リット!」
そう言いながら地面にイチゴによく似た絵を描いている。
どうやらリットというのはイチゴらしい。
「確かに農業もやらなきゃいけないし俺もそろそろあまいものを食べたい。
ただ、その前にやっておかないといけないことを思い出したんだ。」
「やっておかないといけないこと?」
「ああ、トイレ…創らないといけない。」
「トイレ?」
「ああ、糞尿をする場所のことだよ。」
ここで今までのトイレ事情を話しておこう。
これまではしたくなったら穴を掘って、終わった後適当にして埋めていただけである。
そして今、同居人しかも異性がいるとなると流石にこのままじゃやばい。
自給自足で文明的な生活をする以上必ずトイレは必要だ。
「まあ今まで野生で生きてきたルナにはよくわからないだろうが、健康で文化的な最低限度の生活をするためには必要な場所なんだ。」
「けんこうで…ぶんかてき?なんか楽しそう!」
「う〜ん…別に楽しいことでは……いや、一度この生活に慣れた人が抜け出せなくなるから楽しいってのもあながち間違ってない?」
「???」
俺の言葉の意味がわからなかったのか、ルナは顔を少し傾けておとぼけ顔をしている。
普通にかわいい。
俺はロリコンじゃない…そう断じてロリコンではないがこういうのを見るとほっこりする。
「それじゃあ、始めるぞー。」
「おー〜。」
と言うわけで早速作業を開始…の前に建築スキルの新しい要素を使う。
「こい、お手伝いゴーレム!」
俺がそう言うと地面に魔法陣のようなものが現れ、そこから小さな棒人間に似たゴーレムが出てきた。
すると、ビックリしたのかルナがオオカミの姿になって俺の後ろに隠れる。
「ふふふ、大丈夫。
コイツは俺が召喚したゴーレムだから何もしてこないぞ?」
俺がそう言うとゴーレムは右手を挙げて何かをアピールしている。
ルナも気になってきたのかのかオオカミの姿のままゴーレムに近づく。
そしてしばらく見つめた後、前足でゴーレムを触る。
するとゴーレムを気に入ったのかルナは人の姿に戻ってゴーレムを撫で始めた。
「あー、俺しばらくトイレ用の穴掘るからルナと遊んでやってくれ。」
するとゴーレムが「ええっ!」みたいな動きをした。
まあ、最初の仕事が人狼の遊び相手とは思わなかったんだろうな。
…ルナは楽しそうに撫でたり抱き上げたりしてるしそっちは任せて俺はトイレ造りに行くか。
そんなこんなで俺は家から少し離れた場所にやって来た。
利便性は少し落ちるが、もし悪臭がし始めてもここなら家まで被害は来ないだろう。
ということで俺は早速〈スコップ〉を取り出す。
これもゴーレムと同じく建築スキルで新しく解放した道具だ。
そしてこの道具も紙ヤスリ同様だいぶ壊れてる道具だ。
今まさに穴を掘ってるのだが全く力がいらない。
そしてこのスコップの裏で地面を叩くとありえないぐらい硬くなる。
そうして俺は自分が出る時のことも考えて斜めに掘っては叩いてを繰り返して気づけば5メートルほどの穴を掘っていた。
「これぐらいでいいか?
いや、むしろ長すぎたかも…」
俺がそんな独り言を言いながら穴を登っていると上からルナとゴーレムが覗き込んでいた。
なかなか戻ってこない俺を心配したのかそれとも外に出ている土の量を見てどんな穴ができたのかが気になったのかは分からないが、落ちたら危ないと思った俺は2人?に穴から離れるように注意し、急いで上に戻った。
「それじゃあトイレの小屋建設、やっていくぞ。」
「おーー」
ここからは1人じゃ大変だから2人にも手伝ってもらう。
小屋の形は穴の周りに4本の柱を建て、その柱に屋根と壁、扉をつけて中に便器もどきを設置すると言うものだ。
そしてこの作業で一番重要なことをしてくれるのが今回召喚したゴーレム。
このゴーレムはそんなに大きくないため力仕事ができないがその代わりに釘や板を扉にするための道具などの建築に使える小道具を作ってくれる。
ちなみに今作れるのは全て木製(鉄並に硬く、ものすごい耐火性があるもの)である。
「それじゃあゴーレムくん、君にはまず釘を作ってもらうけど1人大丈夫か?」
そう俺が聞くとゴーレムは手を胸に当て「任せてください」みたいな動きをして作業に行った。
「ということでルナ、俺たちはまず木を削って壁や柱、便座とかを作るぞ。」
「え、この木ものすごく硬いのにどうやって削るの?」
ルナがそこら辺に置いてある木を触りながら聞いてくる。
「ふっふっふ…それはこの道具を使えば全く問題ないんだよ。」
俺はそう言いながら愛用している紙ヤスリを2つ出す。
そのうちの一つをルナに渡して俺は実際にヤスリで木を削っていく。
それを見てテンションが上ったのかルナもヤスリで木を削り始める。
このヤスリは俺が建築スキルを使っている範囲、しかも木以外に全く影響がないので安心して渡せるのも良いポイントだ。
そうしてそれぞれが作業を開始した。
ルナは最初、俺の真似をして壁を作っていたが、あまり綺麗にできず少し拗ねてしまい、しばらくすると木を動物や植物の形に掘っていた。
少し
……………………
そうして時間が過ぎ、作業が終わった。
他の2人は……ゴーレムもちょうど作業が終わったみたいだな。
ゴーレムのところに取りに行くと今回使う量より多めに作ってくれている。
コイツ…仕事できる系のやつだな、そんなことを考えているとゴーレムがルナの方をチラチラ見ている。
………なるほど、コイツも木を削って遊びたいのか。
俺はゴーレムにヤスリを渡すと、ゴーレムは嬉しそうに木を持ってルナの方に行った。
「……結局俺1人でやるのね。」
少し寂しく思いながら俺はトイレ小屋を組み立て行った。
———————————
こうしてトイレ小屋が完成した。
中の便器もいい感じになってて我ながらよくできたものだ、そう思いながら試しに一度使ってみる。
…………
問題なく使うことができたが、ここで奇妙なことが起きた。
なんと俺がした糞尿は穴に落ちてる途中に地面に吸収されていった。
「………なにこれ?
切り株の消滅といいこの森、何かおかしくない?」
そう疑問の声を出しながらルナとゴーレムの方へ向かう。
すると地面にはたくさんの木彫り細工が落ちており、その中心でルナがゴーレムを抱いて眠っていた。
ゴーレムは俺を見るなり助けを求めるように手足をフルフルしている。
「ふふふ…。」
その様子が面白くて少し笑ってしまった。
俺はゴーレムを助けた後送還して、眠っているルナを家に連れていった。
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作者 これは〈トイレ汚水処理問題〉の最強の答えじゃないか?
女神 私が作りました!
作者 これは有能女神だわ。
女神 なんで呼び捨てしてるの?
作者 ……ヒェ
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