閻魔

 僕は地獄に就職した。何かの比喩ではなく本当に地獄。いわゆる閻魔様ってやつ。ろくに勉強もせず友人関係もなくて就職も決まってなかった自分のところに急に出てきた地獄の死者とか言うのが閻魔やってみませんか?って。最初はよくわかんなかったけど聞いてみると仕事は三年間地獄にきた死人をどんな刑にするか決めていくだけって。しかもその三年間で現世に戻って三億円もらえるらしい。生涯年収の平均より高い。現世に友達もいなければ就職にも困ってたこともあって僕はそれに同意した。

 最初は真面目に考えてた刑の振り分けもだんだん適当になって三年も経つ頃にはもう早く戻りたいくらいのことしか考えてなかった。少し興味を持ったのは地獄ってのは何もなせなかった人も来る場所だってことくらい。あとはどうでも良かった。閻魔は三年経つと交代で次の僕と同じようなやつが送り込まれてくるらしい。自分の前の閻魔は真面目に引き継ぎをしてくれたけど正直面倒くさいから全部適当にやった。そうして三億円と共に現世に戻った僕は何不自由なく遊んで暮らした。そして僕は死んだ。これから審判ってやつにかけられて天国か地獄かに振り分けられるらしい。審判の前に目隠しをされた。審判に不平を言わないように着いてから目隠しを外されるんだって。


 目隠しを外した自分の目に映ったのは見覚えのある光景だった。自分が閻魔をやっていたから地獄行きなのだろうか。そして逆方面には天国が見えた。登っていく死者の中に見覚えのある顔。僕の前の閻魔だ。彼は天国行きらしい。


僕の前にはいかにもやる気のなさそうな閻魔。どんな酷い刑が待っているのやら。

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