第13話 教団本部

コケコッコー!

「おはよー!レお兄ちゃん!」


なんだか既視感のある目覚めだ。

ベットの右側になんだか重みを感じる。


横を見るとルナがこちらを見て微笑んでいた。

外の光を見るにまだ早朝のようだ。


「何をしている?」

「なんだか寂しくって」

(まだまだ子どもだし父親と離れているから寂しいんだろうか)

「そうか」

そう思い頭を撫でる玲王であった。

ルナは赤くなった顔をバレないように布団で隠した。


***


朝食を済ませて、玲王は早めに家を出た。

ある物を買うために露店に向う。

自分のプライバシーを守る為に、ついに眼帯を買う時が来たのだ。

露店に向う道中で女神が現れた。


「ちょっと玲王さん、何か探しものかしら?何やら嫌な思考を読み取ったんだけど?」

「いや、気のせいだろう」

「まさか眼帯を買おうなんて考えてないよね?」

「……」

「絶対に買うじゃん!!」


女神の妨害を受けながらも、上手くスルーしながらなんとか露店が並ぶ通りに着いた。


装飾品を売っている露店を見つけると、丁度良さそうな黒い無地のシンプルな眼帯を見つけた。

2千円。値段も手頃だった。

(クレープの方が高いのが納得はいかないが)


「これください」

「いらないです!」

すかざす邪魔をする女神

女神を睨む玲王


「え?!」

困惑する店員


「お小遣いをあげるからクレープでも買ってきなさい」

「そんな手に引っかかるもんですか!」

そう言いつつ、じゅるりと舌舐めずりをする女神

相当揺れ動いているのが目に見える。

(めちゃくちゃ食べたそうだな……)


「仕方ない、もう諦める」

「そう!!わかってくれたのならいいわ!」


(油断したな、この一瞬を待っていたのだ。)


「あー、あれはなんだ?」

空を指差す玲王。

「え、なになに?」

空を見渡す女神

「へー、女神にもわからないものがあるんだな」


そう言いながら店員にアイコンタクトをしながらお金を渡す玲王


「私にわからないものなんてあるわけないでしょ!!」

そう言いながら空を真剣に探す女神


眼帯を買ったことに女神はまだ気付いていない。

無事に眼帯を購入した玲王は眼帯をポケットに隠した。


「残念だ、もういなくなったようだ」

「もう!次はもっと早く言いなさいよね!」

「あぁ、すまんな」

(この女神チョロいな)


女神はとても素直な性格だった。


そうこうしているうちに待ち合わせの時間が迫ってきたので正門に向かって歩く二人。


「気になっていたんだが、転生者達が女神だって気付いたら大騒ぎになるんじゃないか?」

「ふふーん、認識阻害をされるようになっているから、見られたとしても問題ないわ!記憶が別の人に勝手に置き換えられるようになっているの」

「そういうことか」

「私が開示すれば認識は出来るようになるけどね!」

「なるほどな」


ともあれ転生者達に見られて、大問題になるということは無さそうであった。


そして待ち合わせの正門まで来た玲王。

そこにはローブを深く被った怪しげな集団と馬車が止まっていた。


馬車の中からユウが飛び出してきて駆け寄ってきた。

「お兄さん!め、お姉さんおはよう!!今日は楽しみすぎて眠れなかったよっ!!」


ユウが耳元でコソコソ話をしてきた。

(教団の本部に入れるのは関係者だけなので、お二人は高度な技術で作ったバディと技術者と話してあります!あとで自己紹介をお願いします!)

(ちょっと私はバディ役なんて嫌よ!)

(お前が手伝うって言ったんだろうが)

(それはそうだけど……)

(ならやり遂げろ)

玲王に気圧される女神

(わかりましたっ!やればいいんでしょ!!)


渋々と引き下がる女神。

このあと女神がどういうアドリブをするのか楽しみだ。


馬車の周りにいたローブ姿の4人組がユウの後ろに整列した。

「紹介するよ!聖母教団の信徒達だよ!」


「私はアッシュと申します。お話はかねがねお伺いしております!お会いできて光栄です!」

フードを脱いで笑顔で挨拶をしてきた。

アッシュは青い髪色に眼帯とピアスをしていた。

身長は175cmくらいで、玲王より少し低いくらいだった。


「そしてバディのアスカです!」

赤い髪をした160cmほどの木製人形がフードを取ってお辞儀した。

腕を組み、態度が大きくどことなく気が強そうに見える。

(こいつも人形を連れているのか……)


二人目が前に出て挨拶をする。

「私はライト……」

そう言いお辞儀した。

髪色は金髪と黒髪のハーフで黒いマスクをしている。

腕や首等、所々に包帯をしている。

少し無愛想に見える。

(日本で言うところの中二病っぽい)


「こいつはリリー……」

ピンク色のツインテールで、身長は低く150cmくらいの大きさだ。

それにローブの上からでもわかる。かなり巨乳だ。

(性癖こじらせ過ぎだろ……)

人形が元気よくお辞儀をする。

(元気っ子天然ロリ巨乳設定だろうか。)


自己紹介をされたが、あまり頭に入ってこない玲王。

わかったのは皆の趣味と性癖だけだった。


「俺は神宮寺玲王だ。よろしく」

一同は女神に目をやる。

「こいつは……、バディのマリアだ」

少し恥ずかしそうに紹介する玲王


「ワタシハ マリア デス ヨロシク」

ロボットのように片言で話す女神。

玲王は思わず吹き出す。

「ブフォ」

笑いを堪える玲王


「えええ!喋った!??」

「しかも本物と錯覚してしまう程のクオリティ!!どうやってこの子を作ったんすか!?」


作り方まで考えていなかった玲王


「えーっと、企業秘密だ。」


何かに気付くアッシュ


「ちょっと待てよ、神宮寺ってまさかあの神宮寺財閥の!?」

「だとしたらこのクオリティも頷ける……」

「あぁ、神宮寺財閥って言えば、日本の玩具やゲーム業界でも最先端をけん引している企業じゃないか!」

「いつもお世話になっていた……」


(勝手に勘違いをしてくれて助かった……)


「そういうことだ」

「そうだったんですね!だったら今日はめちゃくちゃ心強いっす!!」


信徒達はかなりテンションが上がっていた。


挨拶を済ませ馬車に乗り移動をする一同。

木製の馬が馬車を引いていた。

「この馬はユウの魔法か?」

「そうだよ!」

するとアッシュが話に入ってきた。

「ユウ様にはみんな大変お世話になっております!こうやってアスカと行動出来るのもすべてユウ様のお陰です!!」

そう言ってアスカの手を握るアッシュ。


どうやらユウは信徒達の人形に、魔法をかけて動けるようにしてあげているみたいだ。


道中では、ユウと信者達がかなり楽しそうに話していた。

どうやらアッシュが【造形魔法】でライトが【物質生成魔法】を使えるようだ。


ライトが急に早口で語りだした。

「実は新しい素材の生成に成功しました……!リリー」


そう言うとリリーが上下に揺れ始めた。


それを見たユウとアッシュは大興奮する。


「うおおぉぉぉぉーーーー!!!」


なんと木製のはずのリリーの胸が、バインバインと揺れていた。


「こ、これは!世紀の大発明ですぞ!!」


アッシュが興奮し過ぎてキャラが変わってしまっている。


「レベルが上がってシリコンを作れるようになりました……、これで我々のバディもさらなる進化を期待できます……!」

「素晴らしい!」


「ユウ様、私もお見せしたいものがあります!アスカ!」


そう言うとアスカは手を見せた。

そして人間のようにとてもしなやかに指を動かす。


「おぉーーー!!関節が凄く綺麗に動いている!!」

「はい!!私もレベルが上がり、関節の造形をより高く再現出来るようになりました!!」

「細部までのこだわり……素晴らしい……」

「これで僕達の野望にまた一歩近づいたね!!」


そうして3人でかなり盛り上がっていた。


話してはいるものの、一同は玲王の方をチラチラと見ている。

マリアの事がかなり気になっているようだ。


「と、ところで玲王さんのバディの事ももっと教えていただけませんか!!」


我慢できずに聞いてきたアッシュ


「どういう事が出来るんですか……!」


続けざまにライトも聞いてきた。




玲王は女神の方を見る。


(おい、何かやってくれ!)


アイコンタクトをする玲王

女神は玲王の助けを無視をして人形のフリをしている。


「おい」

「ヨク ワカリマセン」


人形のフリで誤魔化す女神に少し腹が立ってきた玲王


「マリア、立て」


そう言われてマリアが玲王を睨む


(人形のフリをするんだろ?)

玲王はニヤリと笑った。

(どちらがイニシアチブを握っているのか、分からせてやろう)


協力すると言った手前、渋々と立つマリア



「よし、三回 回ってワンと言え。しかも大型犬の方な」


マリアがすごい睨んでいる。屈辱の念が伝わってくる。

目がウルウルとしていてほぼ泣いている。


玲王がダメ押しの睨みを入れる。

少し悩んだが、覚悟を決めて渋々と回りだすマリア。


「ワォーーーーーーーーーーーーーン」

全力でやりきるマリア。

それはそれは、とても完璧な大型犬の遠吠えであった。


やりきったその眼は完全に玲王に屈していた。




******




1時間ほど馬車で移動すると雑木林と大きな岩がある場所に着いた。

周りには人気がない。


(こんなところに本部なんてあるのか?)


そう考えていると、ユウが岩の方に向かって歩いていく。


そしてユウは大きな岩に向かって合言葉を言った。

「開けゴマ油」

(どこかで聞いたような呪文だな……)

すると大きな岩から洞穴が姿を現した。

その洞穴は下り坂になっていて、地下まで道が続いていた。

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財閥の御曹司でイケメン高身長なのにDTだから転生してもらいます! EPIC @isohurabonbon

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