第8話 聖剣騎士団

買い物を済ませ帰宅する玲王

家の前に着くと異変を感じた。中が真っ暗なのだ。

急いで入ると家の中が荒らされていて皆の姿が見当たらない。

「ルナぁー!誰かいないのか!」

すると奥の部屋から物音がした。

恐る恐る奥に入っていく玲王

「誰かいるのか?」

するとタンスの中から物音がする。

まるで隠しているかのようにタンスには布が被せられていた。

中を開いて服を掻き分けるとルナが隠れていた。

「玲王お兄ちゃん!!」

安心したのか泣きながら玲王に抱きついた。

「ルナ、もう大丈夫だ。何があった?」

なだめるように優しく聞く玲王。

「聖剣騎士団の人達が来て、玲王お兄ちゃんを匿っている容疑で連行されたの…、お父さんも連行されたって…。」

一体どういうことだ…?

理由を考えても思いつかない。

ただ一つ言えるのは俺に優しくしてくれた一家をこのまま放ってはおけないということだ。

「ルナ、大丈夫だ。俺が何とかする。聖剣騎士団の居場所はわかるか?」

「この街の貴族エリアってところ!お父さんに聞いたことがある…!」

「そうか」


また聖剣騎士団が戻ってくるとも限らないので、その日は近くの宿屋で泊まることにした。


朝になると玲王は聖剣騎士団について調べる為にギルドに向かった。

午前中に集めた情報をまとめると

・聖剣騎士団は聖剣王と枢機卿、ホーリーナイツ7人の団長からなる組織のようだ。所属している団員数だけでも1万人はいるようだ。

・聖剣王は神の代理で聖剣エクスカリバーを持っている。そして聖剣を作り出す事ができるらしく、ホーリーナイツ達にエクスカリバーを渡しているらしい。

・この街にはホーリーナイツ序列6位のサイクスがいる。(今回ルナ一家を攫ったのはこいつに違いない。)

サイクスに関しては良くない噂もかなり聞いた。

お金が好きで露店や飲食店にはみかじめ料という名目で裏金を要求し、女性に対して奴隷のように扱うところを何度も目撃されている。

逆らう者には容赦が無く、気に食わないことがあると【魔王軍の内通者】という名目で処刑されることがしばしばある。

・聖剣騎士団のこの街の拠点は貴族エリアの一番奥にあるそうだ。広い訓練所と併設されており、とても大きな建物のようだ。

(しかし午前中に調べただけでこんなにも情報が集まるなんて、あいつら街の人にあまり信用されていないんだな。)

場所もわかったのでとりあえずルナを待たせている宿屋に戻った。

「ルナ、戻ったぞ」

「おかえりなさい…」

いつもは元気なルナが落ち込んでいる

やはり家族が連れて行かれて相当辛いようだ。

玲王がルナの頭を撫でながら言う。

「何も心配するな。」

「…うん」

まだ暗い顔をしているルナに玲王がポケットから髪飾りを取り出した。

昨日露店で眼帯を買うか迷った挙げ句、ルナへの髪飾りを選んだ玲王であった。

「これは昨日のクエスト報酬で買ったんだ。ルナがギルドを案内してくれなかったら買えなかった。それにお婆さん達が泊めてくれなかったら野宿していたかもしれない。だからお婆さん達にも恩返しをしないといけない。」

そう言ってルナに髪飾りを手渡した。

「うん…」

ルナがまた涙ぐむ

「本当は一緒に行きたいだろうが、危ないからここで俺の帰りを待っていてくれないか?」

「…うん!待ってる。絶対に帰ってきてね」

察したルナはゴネたりせずに言うことを聞いてくれた。

ルナの頭を撫でてそのまま宿を後にした。

玲王のその眼には密かに闘志が燃えていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る