第7話 初めてのギルド

〜次の朝〜

コケコッコー!

「おはようお兄ちゃん」

横を見るとお婆ちゃんが添い寝している。

「うわああああああああああああぁぁぁぁぁ」

人生で初めて叫んだ

「ひゃっひゃっひゃ冗談じゃー!もうご飯出来てるぞー!

それに今日はルナがギルドへ案内すると張り切っておったぞ」

驚きながらも叫んだ恥ずかしさで冷静さを取り戻す玲王

「……何から何まで申し訳ないな」


朝食を済ませて街に出る玲王とルナ

ハジコ村と違ってドミール街はかなり賑やかだ

ギルドは街の中心にあり、飲食店も併設していてかなり賑わっていた

中には転生者のような人達がチラホラ見えた。

「お兄ちゃんあの人達ってみんなDTってやつー?」

皆がすごい形相で振り返る。

「そういうことはここでは言うな……!」

「えーなんでー?」

「なんでもだ」

怒られながらも玲王との距離が縮まったような気がして嬉しそうなルナ


中に入ると奥にはカウンターがあり、そこにギルトの職員が立っていたのでギルドに登録したい旨を伝えた。

登録は至って簡単な物だった。

水晶に手の平を乗せると、登録者とギルドカードが魔法の力でリンクされるそうだ。

本人以外が使うとすぐにわかるらしく、身分証の役目も果たしている便利な代物だ。

魔法使いだろうが関係なく皆、最初は一番下のE級からである。

E級のクエストは基本的には採集やお使いレベルで、非戦闘系のものが多い。格上の敵を倒したりクエストを地道に積み重ねていき功績が認められればランクは上がっていくらしい。ちなみにB級以上からはランクアップに別途条件があると言われた。

ランクが上がれば報酬が高いクエストが受けられたり、より多くの情報を調べることが出来る仕組みだ。


「思いの外早く終わったな」

「そうだね!あ、どんな依頼があるか見てみようよ!」

「そうだな。」

カウンターの横の看板には貼り紙が沢山貼られてある。

紙にはクエストの内容とギルドが決めたランクの押印がされている。

「えーっと、あ、見て!レッサードラゴンだって!!」

「ドラゴンがいるのか…ランクはB級」

イノシシみたいなモンスターならまだしもドラゴンに関しては異世界という実感が強くなる。

「こんなのもあるよ!街中で痴漢だって!しかもこの街だよ!」

「被害者は複数人全て女性、夜中に後ろから体を隅々まで採寸されたと」

「それ以外何もされてないのが逆に気持ち悪いよね……」

きっと前世でモテなかった反動なんだろう。と玲王は心の中で呟いた。


そういえばレベルを上げる約束を女神としていたのを思い出した。

「早く終わったついでに簡単なクエストを受けてくるからルナは先に帰っていろ」

「えーっ、私も行きたい!!」

「駄目だ。お前はギルドに登録出来なかっただろ。それにお前に危険があったらどうする。」

(もし何かあったらお婆さんに何をされるかわからないからな。)

きゅん

心配されたことに嬉しくなるルナ

「わかったよぉ、あんまり無理しちゃ駄目だからね!」

そういってルナとは分かれた。


街の中とは一変して外は静かだった。

一面に広がる草原。その少し先に目的地の森林が見える。

受けたのはEランクの採集クエストで、薬の材料にもなる「ベニテンガダケ」というキノコを30個集めるというものだった。

見た目は薄紅色で筒状、縞々の模様が目印のようだ。

以外と落ち葉で見えづらく探すのに苦労した。

「あー、そうだ。エクスカリバー」

すると光り輝く熊手が出てきた。

「ちょいちょいちょーーい!聖剣をなんて使い方してんのよ!!」

思わず女神が残り少ない力でツッコミを入れてきた。

「使える物は使うのが俺の主義だ。」

「そうですか……」

力なく消えていく女神であった。


熊手を使い落ち葉を掻き分けて、順調にベニテンガダケを採集していく玲王

その時茂みから1mはありそうな角の生えたネズミが出てきた。

どうやらモンスターの住処があったらしい。

食料を荒らしに来たと思われたのか襲いかかってきた。

思わず熊手で払おうとしたら、触れた瞬間にネズミが跡形もなく消え去った。

流石にドン引きする玲王

恐るべしエクスカリバーの威力


テレレレーン

(レベルが上がりました。)

「おめでとう!!レベルアップのお陰で少し力が戻ったからまたお喋りできるわ!」

「お喋りはいらん、情報をよこせ。」

「ほーんといつも冷たいわね!いいわ!取っておきの情報を教えてあげる!魔王についての情報よ!」

「なんだ?」

「実は魔王は…私が召喚した元魔法使いなの!」

「めちゃくちゃ重要な情報じゃねぇか!てか全部お前のせいじゃねぇか!!」

「反省はしているわ!でももう起きたことを嘆いても仕方ないの!!未来の事を考えた方が建設的よ!!」

開き直りすぎて逆に清々しい。

「もういい、で他に情報は?」

「転生した時に与えた魔法は【調和】どんな人や魔物とも心を通わせて友好な関係を築けるという能力だったわ。」

「だった?」

「今は闇堕ちしてその能力も変質しているはずなの。でも本質は変わっていないから似たような能力のはずよ!」

「なるほど、他に情報は?」

「わからないわ!闇堕ちしてからは私の監視下から逃れてしまって把握が出来ないの」

「なるほど、全てわかった」

「さっすが玲王!」

「お前が全然使えない駄目な女神ということがな」

「うぇぇぇーーん、駄目なのはわかってるけど私だって精一杯頑張ってるもんーー!!」

玲王の頭の中で大号泣する女神

「うるさい!頭の中で泣くな!もうわかったから泣き止め!!」

あまりにもうるさすぎたので玲王は責めることをやめた。

「とりあえずお前を責めたところで俺が帰れる理由でもないからな」

頭を抱えながらもとりあえず決心は着いた。

一刻も早く帰るためにとりあえず魔王を倒そう。

「他に話すことは無いか?もう怒らないから今のうちにすべて話してくれ」

「わかったわ、実は…あなたの左目を通して全て見えてるの…。トイレとかお風呂とかも…」

照れながら恥ずかしそうにする女神

「マジで最悪だ。」

帰ったら眼帯を買うと決めた玲王であった。


そうこうしているうちに残りのベニテンガダケを採集する玲王

不足の事態も考慮して倍の60個を採集した玲王であった。

街に戻ると夕方だった。

ギルドでクエスト報酬を受け取りに行く玲王。

依頼の倍の量を持っていったので、驚かれたが報酬に少し色を付けてもらえた。

世話になったこともあり、ルナ達にはお土産を買って帰る事にした。

露天を見て歩いていると女神が声をかけてきた。

「あらー、玲王って以外と律儀なところがあるのね!」

「うるさい。」

そう言って装飾品を売ってる露店で立ち止まる玲王

ある物に目が止まる。

「ちょっと待って!!それは駄目!!」

女神が突然に慌てだす。

それを無視して店員に話しかける玲王

「すみません、この眼帯はいくらでしょうか?」

「それだけはやーめーてぇぇぇぇぇーーーーー」

女神の悲しい声が響く

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