#7

「グルルルゥウウッ!!」


 ドラゴンが威嚇の声を上げると同時に、私たちに向かって突進してきた! 速い!! 私たちは左右に別れて避ける。ドラゴンはそのまま洞窟の壁に衝突した。だがその程度の衝撃ではドラゴンは止まらない。


「エレノア、援護を!」

「はい! 勇ましき者たちに堅牢なる守護を……広がれ! マルチプル・プロテクション!!」


 私と雨月を包むように薄紫色のバリアが生まれ、すぐに見えなくなる。


「刃よ疾く鋭くなりて猛き力を……キーンエッジ!」


 エレノアの支援魔法で戦意がめきめきと高まっていく。私と雨月は別々の方向から駆け出し、包丁を勢いよくドラゴンに振り下ろす。


「グォオオオオッッ!!!」


 ドラゴンが怒り狂ったように叫ぶ。けれど、これは間違いなく効いている!


「エレノア、もっと高く跳びたい!」


 致命傷を与えるなら目を狙うしかない。普通に跳躍しても二メートルかそこらしか飛べない。まぁ、生身の人間は数十センチしか跳べないだろうから、これでも異常なんだけど。こっちの世界に来たことで、私たちの血に流れている魔力が励起されている、らしい。


「翼の加護をたれさせたまえ、レビテックエール!!」


 まるで靴に翼が生えたように、軽く地面を蹴っただけなのにふわりと体が浮く。

 私が順手に持った包丁で切りつければ、雨月は逆手に持った包丁で突き刺す。


「お二人とも、ブレスに警戒を!!」


 大きく息を吸い込むドラゴン、その様子を確認した雨月がドラゴンより高い位置へと跳躍する。私をそれに倣って高く跳び、包丁を構える。狙うは眼球!


「「せりゃあああ!!!」」


 二人の声が重なり、ドラゴンめがけて突っ込む。


「グルァアアッ!!!」


 ドラゴンが口から氷のブレスを放つ。だがそこにもう私たちはいない。

 これまで斬りつけていた外皮とは明らかに異なる手ごたえ、弱点とされる竜眼に包丁を突き立てた証拠だ。


「ギャオオオンンッッ!!!」


 断末魔を上げながら、ドラゴンが地面に倒れ伏した。


「やった?」

「……それ、フラグだよ」


  雨月が言うや否や、ドラゴンはうめき声を漏らしながら起き上がろうとしだした。


「ちょ、エレノア!? 弱点突いた後はどうしたらいいの?」


 ドラゴンは両目から血を流しながら、今にも起き上がってしまいそうだ。こちらの目的がドラゴンの討伐である以上、トドメを刺さねばならないのだけれど、両目を刺しても致命傷にならないなら、どこを突き刺せばいいというのだろうか。


「で、伝説では首を落としたそうですけど……」

「それは包丁のサイズじゃ無理!」


 取り敢えず、あくまで部位破壊ってことで……仕切り直しといきますか。これで第二形態とかあったらマジ恨むからね……。

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