#6

洞窟内部はひんやりと冷たく、空気も少し湿っぽい。


「エレノア、灯りをお願い」

「わかりました」


エレノアが魔法で手のひらから光を出すと、周囲がぼんやりと明るくなった。


「この先ですね」


先頭を歩くエレノアが洞窟のさらに奥を指し示す。

しばらく進むと、洞窟の天井がぽっかりと空いているところに出た。そこから太陽の光が差し込んでいて、洞窟内を照らしている。そのおかげで洞窟内の壁がキラキラと輝いていた。


「綺麗……」

「すごいなぁ」


 私と雨月が感想をこぼすと、エレノアは警戒態勢を強めた。どうやらこの穴、ドラゴンによって作られたものらしい。一般の王国兵士たちがここから投石器や協力な魔法でドラゴンを奥へ追いやったらしいが……ここから先は私たちにしかできないことをするんだ。気を引き締めないと。

エレノアがさらに奥へと歩き出す。私も後に続いて進むと、そこには広い空間が広がっていた。そして、その中央にいるのが……


「あれが……ドラゴン?」


ドラゴンは私の想像していたものとは全く違っていた。

ドラゴンと言えば西洋のファンタジーに出て来るような四足歩行で大きな翼を広げた姿を思い浮かべるだろう。しかし、目の前にいたのは二足歩行で立つ巨大なトカゲだった。

なんというか、より正確に言うなら、恐竜に近い。


「あれがドラゴン、で……あってる?」

「えぇ、そうですよ。今回、お二人に倒していただく氷龍です」


雨月が疑問を口にすると、エレノアが答えてくれた。


「それにしても……」


私はドラゴンに目を向ける。

体長は5メートルほどだろうか。鱗は氷でできているのか、キラキラとかすかな光を反射している。手足は短く、背中にはコウモリのような皮膜のついた翼があるが、それが空を飛ぶためのものだとしたら、飛べそうにない。頭には2本の角があり、目は爬虫類らしくギョロリとしていて、口には鋭い牙が見える。


「大きいね……攻撃手段は?」

「短いですが鋭い鈎爪、尻尾による薙ぎ払い……そして、氷のブレスです」

「な、なるほど」


ドラゴンの口から吐かれた息は周囲の気温を下げ、凍らせる。


「弱点はないんの? 急所でもいいよ」


雨月が尋ねると、エレノアは難しい顔をした。


「実は……ないんです」

「…………えっ!?」

「あのドラゴンの皮膚はまるで鏡のようで、炎や雷など他の属性に対する耐性もあります。唯一、弱点と言えるのは眼球なのですが、普通の武器では届きませんし、瞼も十分固くて……。そのため、わたしたちは首を切り落とそうとしましたが、それも叶わず、こうして洞窟の奥に追いやるしかできませんでした」

「うわー……強敵だねぇ」


ドラゴンがこちらに気づく。その瞳にはすでに私と雨月の姿を捉えていた。


「じゃあ……調理開始と行こうか」

「晴日、頑張ろう!!」


 ドラゴンは強い、けれど私と雨月ならきっと負けない。さくっと倒して、美味しいか分からないけどフライにでもして食べてしまおう!!

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