第5話 寮暮らしの悩み
プチ打ち上げの会場で後輩たちを腕相撲でばったばったとなぎ倒した後、解散となって寮生数人で学校の門をくぐった。
かれこれ3か月ほど寮での共同生活というのをしているが、これがまたなかなか楽しい。ほとんどの人が優しくてしかも可愛い。女の子同士の距離感が近くて、ぶっちゃけ小学生の頃は男子とばっかり遊んでいた私みたいな女子は異物なんじゃないかとか思うけど、それでもりなりー筆頭に私を受け入れてくれる。
落研の人たちも人数こそ少な目だけどそれぞれに得意な噺があってそれを磨いている。和楽器同好会の人がたまにお囃子を担当してくれたりと、部活と部活でのつながりも強い。
とはいえ、とはいえだ。特に桜花寮で過ごしている以上いつも近くに誰かいる環境というのは、一種の問題を生じさせる。とりわけ、私の性格とルームメイトがりなりーという隙だらけ爆乳美少女という状況下、そう……これでムラムラするなというのがおかしいのだ。
「琴芽樽先輩は……」
「ふ、もう部活終わったし芽吹でいいよ」
星花亭琴芽樽こと松田芽吹先輩は私と同じく桜花寮暮らし。部屋がある階は違うので一階に置いてあるソファに座って話すことにした。
「で、どうした和珠音?」
「芽吹先輩はその……寮暮らししてる中でムラムラしたらどうやって鎮めてますか?」
二人部屋である以上、常にルームメイトの目がある。一人で済ますのは難しいし、仮にりなりーが寝静まった後とか思っても、私は抱き枕としてホールドされているからほとんど身動きが取れない。いくらりなりーが何事も気にせず動じずな女の子でも、りなりーの太ももに擦りつけて欲望を満たすのはマズいと思うし。
寮ということもあってトイレも階ごとだし、そもそも桜花寮は壁が薄いせいでどこからともなく、そういうことに二人で及んでいるであろう声が聞こえてくる。
そんな環境で芽吹先輩はどう耐え忍んでいるんだろうか。アスリートは性欲が強い理論を持ち出せば、先輩だってきっと性欲が強いはず。
「いや、私はその……ほら、ルームメイトとそういう関係だから」
「え、お付き合いしてるんですか!?」
それは完全に初耳なのだが。より詳しく聞こうとぐっと迫る。すると先輩はなぜか目を泳がせ、口ごもった。私が首をかしげると、ゆっくり五秒ほど逡巡した後に口を開いた。
「身体だけの関係なんだよ……」
「……セフレじゃん」
己の性欲を満たすためだけにお互いの身体を使う関係、それもまた女子校っぽくていいんだけど(偏見)まさか目の前に具体例がいようとは。
「普通に友達だったんだけど、ルームメイトが本命の子に振られて、慰めてほしいって言われて……抱きしめて背中さすってあげたんだけど、そういうのじゃないって言われてさ。急に服を脱ぐし、キスされるし、でも……言われた通りしてあげたらすごく満足してくれて、それからは――」
「待ってあんまり具体的に聞くとあれなんで、部屋に戻りますから!」
「うん、またね」
「……はい」
今日、りなりーとお風呂の時間ずらそうかな。そしたらその時間で一人……うわぁ、なんか先輩の話を聞いた後に一人で済ますとか寂しすぎるかよ。私、本気でりなりーとそういうことしたいのかな。誰でもいいとは思わないけど……りなりーは、どうなんだろう。
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