第80話 ライセンス試験・前哨戦 Ⅱ

「それでなんですけど。試験ってなにを行うんでしょうか?」


「またいい質問だね、国崎くん。まあ、ふたりにとってはもっともな疑問だと思う。でも残念だけど。それはまだちょっと言えないんだ」


「あ、あのぉ~・・・。試験はこのフロアってやるんです?」


「いや。実際の試験は、地下2階に降りてから行うんだけど。その前に。まずはふたりの実力を確認させてもらうよ」


 そう言いながら。

 ユイさんは亜空間からホルダーを呼び出すと。


 ストックされてるジェムをひとつ手に取る。


「幽玄なる源泉よ。煌めく智慧ちえを呼び覚まし、我が意志に応じて具現化せよ――ユーティライズ」


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 【奇石宝物録クリスタライズ


 浅層階に存在するすべての遺物キューブを一箇所に集める。


 [レアリティ] ★★★★★

 [種類] 道具アイテム

 [タイプ] 即効

 [重量] 2


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 ゲェーーン!


 ユイさんが詠唱文を読み上げると。

 だだっ広いフロアに大量のキューブが出現した。


 あまりに突然のことに。

 僕と星宮さんは顔を見合わせる。


「星宮さんは剣士セイヴァーで、国崎くんは弓士アーチャーのスタイルだよね? この場にキューブをいくつか用意したから。それを自由に使って、まずは試験前の腕試しといこう」


 続けてユイさんは。

 ホルダーにストックされたキューブをふたつ掴み取った。


(あれは・・・召喚サモンのキューブ?)


 思わず目を疑った。

 

 だってそれは。

 エネミーに対して使用するはずのもので。


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 【終末獣の召喚】

 

 冥府の召喚『終末獣』に関する秘法が書いてある禁書。

 血の契約を交わし、オプスキュリテを一定時間呼び出すことができる。


 [レアリティ] ★★★★★

 [種類] 召喚

 [属性] 氷

 [攻撃力] 2400


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 【究極魔甲の召喚】

 

 冥府の召喚『究極魔甲』に関する秘法が書いてある禁書。

 血の契約を交わし、ゼウスギガを一定時間呼び出すことができる。


 [レアリティ] ★★★★★

 [種類] 召喚

 [属性] 雷

 [攻撃力] 2600


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「異界に集いし無限なる魂よ。導き手の命に従い、禁断の力を創り出せ――インヴァカーレ!」


 眩い煌めきがキューブから放たれると。



「ゴアァァシャァァ!」「グォッグゥワァグォォォッ!」



 二体の巨大な召喚獣がユイさんの前に君臨する。


「う、うそでしょっ!?」


 その場で後ずさりしながら、驚きの声を上げる星宮さん。

 

 無理もない。


(オプスキュリテにゼウスギガか)


 ランドイーターと並び最強と謳われる召喚獣が揃ってるわけで。


 ユイさんは、アクアマリン色のボブヘアを払うと。

 僕らに目を向け、冷淡にこう言い放つ。


「ふたりには、今からそれぞれ一体ずつ倒してもらおうと思う」


「た、倒すって・・・? この状態でですかっ!? むりむりむりっ~~!!」


 慌てて首を横に振る星宮さん。


「悪いけどそういうわけにはいかない。さっき確認したよね? きみたちは引き返すこともできたんだ。でも、この場に残ることを選択した。自分たちの意思でね」


「そ、そんなぁ・・・」


 もう完全に涙目だ。

 

 けど。

 星宮さんは当たり前の反応をしてるだけで。


(こいつらを倒せって・・・。さすがにむちゃくちゃだよ)


 いくら目の前に大量のキューブが落ちてたとしても。

 LV1の状態じゃどうすることもできない。


 それがわかった上で。

 ユイさんは、こんなとんでもないことを口にしてる。


(これは腕試しなんかじゃない)


 ユイさんは今。

 僕らを完全に殺しにかかってきてた。

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