第51話 4thダンジョン Ⅳ

 ちなみに。

 遺物キューブ自体のレアリティや排出率も書き換えることができる。

 

 そのことを話すと、やっぱりリスナーさんは驚いてた。


:乱数調整www

:その能力ぜひほしいw

:ソシャゲのガチャで使えそうw

:運まで書き換えられるんか

:反則すぎて草

:すごっw

:えぐいんよなぁ




 そのとき。


「おー。やっと追いついたー」


 魔術士マジシャンスタイルの男の人が通路の奥から手を挙げて駆け寄ってくる。

 

 髪の毛は煌びやかなシルバーに染めてて。

 ロングのウルフヘア。


 背もすらっとして細身。

 かなりのイケメンさんだ。


(先輩かな?)


 それくらい僕とは身長差があった。


「はじめまして。こんにちは」


「うっす。こんちはー」


 拳と拳を突き合わせて挨拶する。


 これは、探索者が偶然ダンジョンで会った時の作法みたいなものだ。


:あれ?

:ん?

:え?

:誰だ

:キレキレ?

:おいww

:ちょw

:キレキレやんw

:急にww

:わろたw

:なんでいるんだよw

:突然すぎやろw


「もうB6まで降りてたんだ~」


「あ、はい。僕の方が少し早く入ってたみたいで」


「それにしちゃ速すぎっしょ。ハハ、まいいーけどさ」


 けらけらと笑う男の人。

 

 なんだろう。

 これまでだと、挨拶したらお互いの健闘を祈ってすぐ別れる感じなんだけど。


 いっこうに立ち去る気配がない。


(というよりなんか僕のあとを追って来たっぽい?)


 いや。

 さすがにそれはないか。


 べつに一緒に潜るって約束してたわけじゃないし、それに面識もない。


「オレ、マヒト総長ね。んで。まわりからは総長ー!って呼ばれてるんよ。まあ好きに呼んでね」


:は?

:マヒト総長??

:またかよ

:偽名乙

:クズやなほんま

:どう見てもキレキレで草

:嘘つくなよ

:総長wwwダサッw


「新人ダンチューバーのエデンです。よろしくお願いします」


「知ってるー」


「え、僕のこと知ってるんですか?」


「んだよそれ。自意識過剰君かよ。たまたまスケジュール見たら、あんたの名前があったってだけよ」


「あっ・・・。なるほどですね」


 なんか恥ずかしい。

 

 そりゃそうだよね。

 見てくれるリスナーさんが急に増えたからって勘違いしちゃダメだ。


 ほんの数日前までは見向きもされなかったわけだし。


「どうするー? んなとこで会ったんだし。もち一緒に進むっしょ?」


:あ

:やめとけ

:やめた方がいい

:逃げてー

:今すぐ別れた方がいい

:キレキレに関わるとろくなことないぞw

:Get out!

:エデン君お人好しそう

:騙されちゃダメ


「いいんですか?」


「いいもなにも。探索者同士の常識じゃーん。助け合ってナンボの世界っしょ?」


「すみません。実は今、配信中でして・・・。大丈夫でしょうか?」


「それも聞かなくていいやつね。ドローン飛んでるんだから見りゃわかるって。キミさ。もっと人とのコミュニケーション勉強した方がいいわ」


「ごめんなさい」


 たしかにそうだ。

 余計なこと聞いちゃったな、反省しないと。


「それとさ。ライブ配信してようが、どーでもいいんだけど。こっち疎かにしないでね? 一応ゲストってことになるわけじゃん。失礼にあたるよ?」


「わかりました。この先どうぞよろしくお願いします」


「うんうん。それくらい素直な方が世の中得よ〜。ひとつ学んだじゃん。やったね♪」


:うわぁ・・・

:勝手に来てゲスト気取りww

:先輩風うぜぇ

:クズすぎる

:最悪

:気づいてー

:キレキレって生理的に受けつけん

:ボディコン見てないねエデン

:ないわ

:まだ新人潰しなんかしてんのかw


 たぶん、僕のためにいろいろアドバイスしてくれてるんだよね。


(見た目はちょっと怖いけど)


 実は優しい人なのかもしれない。




 こうして。


 なりゆきだけど、マヒト総長さんと一緒にダンジョンを進むことになった。

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