第50話 4thダンジョン Ⅲ

「必殺技――桜華連撃槍バイブラントフューリ


 ザンッ!


 術士ネクロマンサーの集団を一網打尽に。


【経験値365を獲得しました。閃光の最終旋律エデンのLVが9から10に上がりました。】

 

 ボディコンソールの表示に目を向けながら、匣中こうちゅう滅龍めつりゅうのひれ長を振り下ろす。


 本日の攻略先は、前回と同じく『赤羽ダンジョン』。

 今日はなんとしても最下層である地下25階まで到達したいところ。


 現在地はまだ地下6階。


 遺物キューブを上手く書き換えて戦ってるから。

 エネミーとの戦闘はまったく問題ないんだけど。


(ちょっと慎重に進みすぎかな?)


 とはいえ。

 浅層階である程度レベルを上げておかないと、深層階へはたどり着けない。


 それに気づくこともあって。


 暗殺者アサシンのスタイルじゃないと、やっぱりこういう進み方になっちゃうってことだ。


(エネミーに見つかっちゃうんだから、ふつうに進むしかないよね)


 これまでは暗殺者だったからスムーズに降りられてたってことを痛感する。


 でもまあ。

 ここであれこれ考えてても仕方ない。

 

(今日は槍士ランサーとして潜ってるわけだし)


 それに。

 リスナーさんの反応は悪くない。


:さすがエデン

:もうLV10かよww

:早っw

:あいかわらず無茶苦茶w

:消してええ、リライトしてえええ

:絵に描いたようなチートw

:エデン最強!

:スパチャ解放してくださいー

:強さが異次元なんよ

:リライト使いすぎw


 紫月のために最下層を目指すことはもちろん大事なんだけど。


 リスナーさんに楽しんで配信を見てもらうのも。

 今の僕には必要なことだったりする。


 それに。

 今回は少しやることがあって。


 ドローンカメラの視界から一瞬外れると。

 僕はその場で倒れたアイスゴーレムの群れに両手を向ける。

 

 ゴアシャァ!


(これでよし、っと)


 眩い光がおさまるのを確認すると、ふたたびドローンの前に戻った。


:さっきからなにしてるん?

:カメラからたまに消えるなw

:ずっと怪しいw

:トイレ?

:ふらっとカメラから外れてるww

:誰かそばにいるとか?

:なにやってんのw


 さすがに。

 リスナーさんもちょっとザワザワしてる。


(べつに隠してやることでもないんだけど)


 ちなみに。

 これをしてるから進みが遅いってのもある。

 

:なんかキューブ落ちすぎじゃね?


 おっ、鋭いコメント。


 ここで種明かし。

 さっきから僕がなにしてるのかというと。


(リライト能力を使って、エネミーの死骸をレッドキューブに変えてるんだよね)


 なんでそんなことをしてるのか。

 その理由は単純で。


 このあと『赤羽ダンジョン』に入る探索者のためだったりする。




 ダンジョンに潜る際、探索者はクランにそれを報告する義務があって。

 都合上、その日に入る人数を事前に確認することができたりする。


 本日、『赤羽ダンジョン』に潜る人数は2名と告知されてて。


(スケジュール見たら、僕のすぐあとに入る予定の人がいたんだよね)


 言ってしまえば、これはその人のためだった。


 ぶっちゃけ。

 キューブの出現率によって、その日のダンジョン攻略難易度は大きく変わってくる。


 ダンジョンの探索は、運の要素が極めて大きいんだ。


(僕はキューブを書き換えるなんて手が使えるけど)


 ほかの探索者の方はできないみたいで。


 そうなると、キューブを多く拾えるに越したことはないってことになる。


 同じダンジョンに潜るんだから。

 せめてそれくらいは役に立ちたい。


 贔屓してるみたいで。

 本当はリスナーさんに言いたくなかったんだけど。

 

 これ以上カメラから外れると、さらに怪しまれそうだったから。

 結局、本当のことをリスナーさんに伝えることに。


:聖人すぎるww

:さすがやw

:これは助かる

:ぜんぶレッドキューブにしてんのかw

:ぜひ見習いたいわ

:エデンのこういうとこすき

:いいね

:すげえええ

:人助けは大事やで?

:いい話だなぁw

:しれっとやってるのが好感度高い

:マジメかw

:このあと潜る探索者って誰なん?

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