第52話 4thダンジョン Ⅴ
しばらくの間。
ふたりで話しながら洞窟タイプの通路を歩く。
「で、キミ学年は?」
「高1です」
「オレ、高3~。まあここじゃ先輩も後輩もねぇけどな。気楽にやってよ」
「ありがとうございます。それであの、マヒト総長さんはふだんから配信してないんですか?」
「なにがマヒト総長さんだよ。エデン君、コミュ障ムーブかましすぎ。いちいちウザいからもう総長で統一ね」
「すみません。わかりました」
「んで質問の答えだけど。昔はやってた。でもさ。ぶっちゃけダンチューバーって金にならねぇじゃん? オレもう、そーゆーのからは足洗ってて。今はほかの探索者のためにダンジョン潜って、エネミー狩ってるって感じかな。完全にボランティアだね」
「へぇ。皆さんのためなんですね。すごいです」
:また嘘か
:ボランティアなわけないw
:BANされたから配信できないんでしょ?
:キレキレwww
:こいつほんま嘘が得意やな
:まじで邪魔すぎる
:売名したいだけ
:無理無理無理
:この前乱入した時は令和フラミンゴとか名乗ってたぞw
:嘘ばっか
:エデン騙されないでー
「んであんたは? なんでダンジョン配信なんかやってるの?」
「僕は」
一瞬、本当のことを言おうか迷う。
妹が心に思い描く風景を探すためにダンジョンへ潜ってるなんて。
ちょっと説明しづらいし、理解してもらうのも難しい。
だからひと言。
こう言うことにした。
「妹のためなんです」
「ふーん、妹のためねぇ。ダンジョン配信見るのが好きなんだ?」
「そうですね。僕の配信をよく見てくれてます」
:おっ
:新情報だね
:妹ちゃんのためだった!
:感動
:妹いるの!?
:これぞ兄弟愛
:なんかエロいw
:いいぞお兄ちゃん
:嫁にくれー
:ぜひ出演してほしい
「名前は?」
「え? 名前ですか?」
「そりゃ聞くでしょ。なんて名前なの?」
うーん。
あまり個人情報は口にしたくないな。
僕はまだしも。
かと言って、嘘は言えないし。
いろいろ考えた結果――。
「国崎って言います」
「国崎? そりゃ苗字っしょ。妹ちゃんの名前よ。なんて言うの」
「すみません。ちょっとそれは」
「あーあ。配信中だから言いたくないのか。だったら、俺だけに教えてよ。どこ住んでんの、赤羽の近く? 学校は? 体型は? 彼氏とかいんの?」
困ったな。
確認もなくさすがにそこまで言えない。
それにこの配信、紫月も見てると思うし。
:聞きすぎ
:少しは自重しろよ
:暴露系ってまじ嫌い。〇ねばいいと思う。
:言わなくていい
:苗字言わなくてよかったのに
:暴こうとすんなw
:個人情報は言っちゃダメ
:クズすぎる
:エデン困ってるやん
:国崎君っていうのねw
:暴露イラネ
と、そんなタイミングで。
「「「ョオ゛オ゛オ゛オ゛ーー!」」」
十字路から霊獣ヒッポグリフの群れが姿を見せた。
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