第43話 コラボ配信終了

 ボディコンソールを操作しつつ、配信を切ったワデアさん――もとい陽子さんが頭を下げる。


「申し訳ございませんでしたわぁ、優太さまっ~~。最後はこんな形で終えることになってしまって・・・」


「いえ。僕も本当に限界だったんで」


紫月しづきさんは大丈夫だったかしら?」


「気にしないでください。ここまで降りて来られただけでも充分ですので。帰りましょう」


 近くにあった赤魔法陣を踏み、ふたりで地上へ戻る。


 こうして。

 僕らの初コラボは幕を閉じた。




 ◇◇◇




「おかえりなさい。お兄さま」


「ただいま」


 父の書斎を出ると、制服姿の紫月が出迎えてくれた。

 もう起きてたみたい。


「ごめんなさい。今日は起きるのが遅くなってしまって」


「ううん。たまにはそんな日もあるよ」


「はい」


 礼儀正しく僕にお辞儀すると。

 紫月は、玄関でぐったりしてる陽子さんに手を差しのべる。


「陽子さんもお疲れさまでした」


「ありがとうございますわ・・・。なんとか戻って来られましたの・・・。正直、死ぬかと思いましたわっ」


「いろいろとすみませんでした。ちょっとキツかったですよね」


「優太さまが謝ることなんてございませんわ。ふだんのわたくしが楽してただけですから。本来、こういうのがダンジョン配信ですわよね? 改めて優太さまのすごさを理解することができましたわっ・・・」


「そんな、買い被りすぎですよ」


 そこで。

 紫月がスマホを僕らに見せながら口にする。


「それにしても。すごかったですよ、おふたりとも。今回のコラボ配信。同接数は最終的に3万人を越えてましたから」


 驚くのはまだ早い。

 Teentubeのチャンネル登録者数もものすごい勢いで伸びてたようで。


(え、856人って・・・こんな増えてたのっ?)


 あっという間に1000人に届きそうなところまで来ちゃってるし。

 

 コラボがどれだけ影響力あったかは、一目瞭然。


 ぜんぶ陽子さんのおかげだ。

 感謝を交えながら、それを本人に伝えるも。


「わたくしの力ではございませんわ。優太さまのご活躍が話題を呼び、それで多くの皆さんが見に来てくださったに違いありませんわ! ほら、こんな感じなんですわよ?」


 そう言って陽子さんもスマホを取り出す。


:エデン最強!

:すごい新人が現れたね

:かっこよかったです、エデンさん♪

:コラボすごかったよ!

:今までなんで見つからなかったんだろうw

:エデンは要チェックだわ

:またふたりでコラボしてください☆


 すごいっ。

 エックスのリプライ画面は、大量の好意的なコメントで溢れてた。


「皆さん、優太さまのご活躍に本当に驚かれたみたいですわね♡」


「なんか持ち上げられすぎな気もしますけど」


「そんな風に謙遜なさらないでくださいな。今のダンチューバー界隈を見渡しても、優太さまほどお強い探索者はほかにおりませんことよ? 記憶域シヴァドラゴンを倒された時から、ものすごい才能をお持ちでいらっしゃると思っておりましたが。やはりとんでもございませんでしたわ~!」


 自分としては、特別なことをしてるつもりは一切なくて。

 ただ、ふつうにダンジョン探索してるだけなんだけど。


(どういうわけか、みんなに驚かれちゃうんだよね)


「次回の配信からは忙しくなりますわよ! きっと、さらに大勢の方がご覧に訪れるはずですわ♪」


 まるで自分のことのように、陽子はとても嬉しそう。

 

 そんな笑顔を見てると。

 多くのリスナーさんに配信を見てもらうのも悪くないなって、そう思えてくる。

  

 チャンネル登録者数や同接数が増えれば、それだけメリットもあるわけで。


(うん。これからも頑張ろう)


 気持ちが一新されるような。

 今回のコラボは、そんな有意義な配信となった。

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