第30話 3rdダンジョン Ⅱ

「まずはわたくしがリスナーの皆さんにご挨拶し、今回のおコラボについてご説明いたしますわ。それとこれから先、優太さまのことはエデンさまと呼ばせていただきますわ」


「わかりました。それじゃ僕も陽子さんのことはワデアさんとお呼びします」


「ええ、お願いいたします。では、ご紹介するまで少々こちらでお待ちくださいませ」


 スイッチを切り替えるように。

 陽子さんはドローンに向かって姿勢を正す。


 さすが第一線で活躍するダンチューバーだ。


 今日一日。

 僕もきちんと見習わないとね。






「ワデアストの皆さん。ご機嫌うるわしゅう、祝言亭しゅうげんてい八咫烏やたがらすワデアですわ♪」


 挨拶からはじまって。

 陽子さん――改めワデアさんがドローンに手を振る。


 いよいよだ。


 カメラの映らない位置で配信内容をいったん確認。


(うわぁ、すごっ)


 同接数はすでに1000人近い。

 配信はじめてからまだ30秒も経ってないのに。


 しかも。

 今日の配信は事前に告知してないゲリラ配信とのこと。


 たったこれだけのことで。 

 ワデアさんがどれだけ人気のダンチューバーかわかる。


:ご機嫌うるわしゅうー

:ご機嫌うるわしゅう!

:!?

:ワデア!

:ご機嫌うるわしゅう♪

:急にww

:ごきげんうるわしゅー

:おおおおおお!!

:ご機嫌うるわしゅう

:ワデアちゃん♡

:ご機嫌うるわしゅー

:きたあああああああ

:唐突すぎて草

:ご機嫌ようワデア嬢

:ワデアさまぁ~~

:うるわしゅう ーー

:ゲリラ!?

:突然はじまったw


 ものすごい勢いで流れるコメント。

 ぜんぜん追いきれない。


 ひとこと挨拶しただけなのに・・・すごい。


(これが祝言亭八咫烏ワデアの配信なんだ)


「皆さん、数日ぶりですわね。ここ最近、配信をキャンセルしてしまって申し訳ありませんでしたわ。個人的にいろいろなことが重なってしまいまして。少し自分の中で考えを整理する時間が必要でしたの」


:気にしてないよー

:うんうん

:謝らないで

:待ってたよ~

:配信待ってた

:気にすんな

:ワデア嬢に会えて嬉しい

:待ってたぞワデア!

:なんかあったの?

:ご機嫌うるわしゅう、ワデアさま♪

:今日の配信も楽しみ


 温かなコメントが一気に流れて。

 同接数もどんどん伸びていく。

 

 愛されてるなぁ、ワデアさん。


「それで本日の配信ですけど。急遽行うことにしたのには、とある理由があるからでして・・・」


:理由?

:なんだろう?

:理由とな

:ふむふむ

:わくわく

:ドキドキ

:お?

:なんか発表くるー?


 その一瞬。

 ワデアさんがこっちに視線を向ける。


 僕が頷くと、ワデアさんはドローンにこう宣言した。


「実は、あるゲストさまと一緒にダンジョン配信をしようと思っておりますの。わたくしの記念すべき第1回目のおコラボですわ♪」


:コラボ配信!?

:キターーーー!

:おコラボ!!

:また突然すぎw

:コラボ!

:ゲスト誰?

:ええええええ

:コラボ配信ね

:めっちゃ楽しみ♪

:ワデア嬢初のコラボ!

:ようやくか

:人見知りの設定どうしたw

:期待しかない!

:ゲスト誰だろう

:いちじメンの女子だな

:赤見ハラミさま来い!


 「しばしお待ちを」とリスナーさんに告げると。

 ワデアさんが近寄ってくる。


「エデンさま。どうぞこちらへ」


「あ、はい」


 ちょっとだけ緊張する。

  

(よしっ)


 覚悟を決めると。

 一歩前へ踏み出し、僕はドローンに向かって頭を下げた。

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