3章

第29話 3rdダンジョン Ⅰ




 シュバーーン!




 眩い光とともにまわりの景色が変わって。

 無事ダンジョンにやって来られたみたい。


 同時に。


 陽子さんの容姿と衣装が重騎士クラッシャーのスタイルに合わせてチェンジする。


 髪型はダークピンクの三つ編みハーフツインに変化。

 ラズベリー色のメッシュが所々入ってるのがオシャレだ。

 

 瞳の色はアメジストになってて。


 衣装はゴスロリのドレスから重量感あるプレートアーマーに。

 

 そうそう。

 この前、ダンジョンの中で陽子さんと会った時はたしかこんな感じだった。


「うそぉっ・・・。本当にダンジョンの中ですわぁっ~~!?」


「ここは『赤羽ダンジョン』ですね」


「あ、赤羽ぇ?」


「ボディコンで現在地を確認してみてください」


 言われたとおり。

 亜空間からボディコンソールを呼び出す陽子さん。


 ふたたび驚きの声を上げる。


「そ、そんなっ・・・。おっしゃるとおり、赤羽ダンジョン・・・。すごいですわっ! って・・・あれ。優太さま、どちらにいらっしゃいますのっ?」


「こっちです」


「?」


 陽子さんは顔をキョロキョロさせる。


「やっぱ見えてないですよね」


「はいっ!? 優太さまのお声だけが聞えます!?」


「先に説明しておけばよかったですね、すみません。僕のスタイルは暗殺者アサシンって言って、まわりから姿が視えなくなるんです」


「暗殺者っ? き、聞いたことありませんわ・・・。そのようなスタイル」


 どこか不安そうに。

 陽子さんはあちこち視線を彷徨わせる。


(たしかに。このまま透明ってわけにもいかないよね)

 

 せっかくコラボ配信を一緒にするっていうのに。

 こっちの姿がまったく見えないんじゃ、陽子さんに対して失礼だし。


「少しだけ待っててもらえますか?」


 いったん断りを入れると。

 例によってスタイルチェンジすることに。



 ジャァァァン!



「あっ・・・優太さま?」


「これで僕の姿見えますよね?」


「え、ええ。たしかに見えるようにはなったんですけど・・・」


 陽子さんは依然として混乱してる様子。

 

 無理もない。

 むちゃくちゃなことを続けざまに目撃してるわけだから。


「あのぉ・・・魔術士マジシャンですわよね? その恰好」


「そのとおりです」


「前回、ダンジョンでお逢いした時はたしか槍士ランサーだったはずですわ。ですけど、本来のスタイルは暗殺者で・・・???」


 自分で言ってて。

 ますますわけがわからなくなってるみたい。


(これ以上この話はやめよう)


 さらに混乱させちゃうだけだし。


「てなわけで。こっちの準備は完了しました。陽子さんはいかがですか?」


「え? あぁー・・・たしかにそうですわね。わたくしも準備しませんとっ」


 ボディコンソールを操作しながら、小型ドローンを飛ばし。

 陽子さんは生配信の準備を進める。




 ダンジョン内部には、小規模の基地局がいくつか設置されてて。

 ダンチューバーはそこから電波を拾って配信してるんだよね。


 こうして毎日快適に配信できてるのも。


 10年がかりで整備を進めてくれた探索者クランのおかげだ。

 

 また配信は、基本的に自動追尾型のドローンを飛ばしながら行うのが一般的で。


 紫月しづきによると。

 僕みたいに一人称視点のメガネカメラを使ってるダンチューバーは相当珍しいらしいんだよな。


「これで、よしっと・・・はい。よろしいですわ。こちらも準備万全ですわ、優太さま♪」


「それじゃ。今日のコラボ配信よろしくお願いします」


「こちらこそですわ。ぜひご一緒に楽しいおコラボとして成功させましょうっ! よろしくお願いいたしますわ♪」


 おほん、と。

 

 咳払いをしながら髪をかきあげると。

 陽子さんはこう続けた。


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