第61話 4thダンジョン XI

 そのまま十字路を曲がって無人のフロアへ。

 

 よし。

 ここまで来ればもう大丈夫かな。


 遠くの方から総長さんの怒鳴り声が聞えてくる。


(ごめんなさい、ちょっとの間だけ待っててください)


 あまり時間をかけすぎると手遅れになる。

 早いところやってしまおう。




 一度胸に手を当てると。

 イメージを膨らませていく。


 頭に思い描くのは、僕と総長さんの位置関係。


 これを書き換えること。

 

(自分に対して使うのははじめてだけど、たぶんできるはず)


 リライトの可能性を信じながら、僕は詠唱文を読み上げた。


「魂が交わる異次元の狭間にて踊る。真訣しんけつによって討ち果たし、我が願いを叶えたまえ――ポジション・リライト!」




 ズギュゥゥン!




 ゆっくりまぶたを開ける。


 目の前には――不気味に君臨する砕星さいせい王蟲おうむエリュトロンの姿。


 どうやら成功したみたい。


:うおお!?

:あれ?

:え

:消えた?

:ホラーかよw

:なにが起こったの?

:なんでキレキレがこっちにおんねんw

:場所が変わってるね

:怖えええ

:どーゆうこと?


 あるじのあとを追うように。

 自動追尾する小型ドローンが遅れて僕のもとへ到着する。


 気を取られているうちに。


「ギャーギャーゴァアアアーー!!」


 鋭い爪を立てた砕星王蟲エリュトロンがすばやく攻撃を仕掛けてきた。


 ザシュッ!

 

(よっ)


 その攻撃を難なくかわすと。

 少しだけ距離を取って、さっき手に入れた禁書を手元に開く。

 

 敵に恨みはないけど。


 このまま徘徊種メガロエネミーを放っておくわけにはいかない。


 巨大な体躯を揺らし、砕星王蟲エリュトロンが『絶波破晄撃クリムゾンストライク』を繰り出すモーションに入る。

 

 だけどもう遅い。

 禁書を目の前に構えつつ、僕は唱えた。


「異界に集いし無限なる魂よ。導き手の命に従い、禁断の力を創り出せ――インヴァカーレ!」


 禁書から眩い煌めきが立ち昇り。

 漆黒の召喚獣がその場に姿を現す。


:おおおおおお!

:かっけえ

:ランドイーター!

:でかいw

:ロマンの塊!

:めっちゃいいなw

:召喚獣か

:わくわく

:なんか鳥肌立ったw

:強そうやん

:エデン最強!


 ランドイーターは竜系統の上位種で。

 見た目はバハムートをより勇ましくした感じで、とてもかっこいい。


 全身は鮮やかなヒスイの鱗で覆われてて。

 迫力ある大きな翼と尻尾が特徴的だ。

 

 頭部には力強い角と牙が備わっており、眼差しは鋭く上位種としての威厳が感じられる。


 両腕から繰り出される攻撃は、絶大な破壊力を誇ることで有名で。


 男子心をくすぐる召喚獣なんだよね。


(っと)


 次の刹那。

 『絶波破晄撃』が放たれるも。



 バジッ!!



 ランドイーターが大きな両翼を巧みに使い、相手の攻撃を防ぐ。

 

 まるで効いてない。

 さすが最強の召喚獣だ。


 次はこっちの番。


(悪いけど、ここで決めさせてもらうよ)


 禁書を高く掲げると。

 それに反応するよう、ランドイーターが雄叫びを上げる。


「オオオオオンンン!!」


 いけ!

 その力をリスナーさんにも見せるんだ。


「召喚技――瀑神魔領域ギフトオブダークネス!」


 僕が命令を加えると。

 

 ランドイーターは超高速でスピンしながら。

 砕星王蟲エリュトロン目がけて突進していく。


:倒しちゃえ!

:いけるぞ

:おっしゃー!

:熱い展開やなw

:うおおおおおおっ~~!

:がんばれー

:バトルきたこれ

:えぐっw

:ランドイーターかっこいい

:これは燃える!


 まだだ。

 もう一撃。

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