第20話 最後の片づけ

そんなことを考えていたら、前から誰かがある姿が目に入った。


カ「おや?死体が歩いてきたぞ」


ア「...はい?」


アサツは後ろを振り返り、


ア「ちょっと待って、ちょっと待って」


カ「おお、いきなり呪われた町として開花するのか?」


ア「なんでカルゼルはそんなにびびらないの?」


アサツが私の体を強く振るう。


カ「ただ呪われるだけだから安心しろ」


ア「それがよくないんじゃない!」


珍しくアサツが大きな声で言う。


カ「なんだよ、幽霊は苦手なのか?」


ア「...別に苦手じゃないけどさ」


カ「じゃあその真後ろにいるやつに失礼だから座っとれ」


アサツが誰かさんのほうに振り向くとほぼそこまでいた。


ア「きゃーーーーーー」


アサツが足をくじいた。


カ「何を慌てているんだ。そいつの顔をよく見てみろ」


ア「...ムニサツじゃん。ということはムニサツが化けて」


ム「違うわ!生きておるわ」


ア「...え?生きてるの?」


アサツは肩の力を抜いて落ち着いた素振りを見せた。


ア「まったく、驚かせないでよ」


ム「一切、驚かす気はなかったわ!そもそもよく見れば俺だとわかるだろ」


アサツがこちらを向いてきた。多分からかったことがばれた。


ア「...というかあなた生きていたのね」


ム「まあな。なんで生きてるかは俺にもわからねえが。というか俺だけが生きていて驚かないのか?」


ア「...もうこれ以上は、ね」


ム「ま、この光景はビビるわな。というか俺こそビビったぞ。生きてるのもビビったが、なんか明るいからこっちに来たら、お前らが焚火をしていたからな。お前らこそなんで生きてるんだ」


カ「それに関しては私から言うよ。ムニサツは大体はわかると思うが」


ム「...お前も起きていたのか」


カ「魔力量だけならな。まあ戦闘に関しては、魔力の扱いが下手だからからっきしだがな」



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というわけで色々説明した。


ム「なるほどなあ。協力者ねえ」


カ「別にあくまで推測だがな」


ム「まあほかに考えれんしな。それが濃厚だろう」


私は紅茶を飲みながら一息つく。


ア「...ねえ、これからどうするの?」


カ「逃げる」


ア「...逃げる?」


ム「何言ってんだよ。ここのことは報告しないといかんだろうが」


カ「えー面倒だな」


ム「爺さんな...」


ムニサツにあきれた声で言われた。


ア「...ムニサツに言われるとは」


カ「ほんとだよ」


ム「お前ら失礼だな!」


ムニサツの突っ込み。珍し。こんな状況だから頭よくなったりして。


ム「まったく、こんな状況でよくほっとこうなんて思えるな」


カ「まあまあ別に意味もなくこんな発言をしたわけではない。もし私が報告してみろ。この魔力を隠したところで限度がある。ばれる奴にはばれる。そしたら真っ先に私が疑われるだろう。しかもこの事件に関しては私がいなきゃ起きない可能性もあったしな」


ム「...そうなのか?」


カ「そうだ。ここの人には悪いがわたしの報告は犯人にされかねん。するならお前がしてくれ」


ム「確かに理由は納得した。ただこれを放置するとかどんな神経しているんだ。それに魔王領だから調べたらすぐにばれると思うぞ」


カ「ばれんように工夫するだけさ。それになんだよ。じゃあこれ全員土に埋めろとでもいうのか?」


ム「そうだ」


ここでアサツのほうをちらっと向く。アサツもここの人たちはどうにかしたいようだ。


カ「わかったよ。まあ隠ぺい工作にも時間がかかるから、それまでに二人でなんとかしておけ。一日で終わるか?」


私はアイテムボックスに入れておいた布団を敷き、寝た。


しばらくしてアサツとムニサツだけになって、


ム「よくこんな状況で寝られるな」


ア「...もともとこういう人だから」


ム「こんな時でもいつも通りなんだからな」


ア「...怒ってる?」


ム「ああ、怒ってるさ。自分のことしか考えていないからな」


ア「...でもカルゼルのいうこともわかる」


ム「それが困るところだよ。まったく」


そうして二人も寝た。



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ア「...むむむ」


私は起きると、顔をたたいて。


アイテムボックスにあるパンを食べようとしたとき


ア「...カルゼルがいない」


いつも朝に弱いカルゼルが私たちよりも早く起きてることに驚いたけど特に深入りはせずに


ア「...ムニサツ起きて」


ム「んー、どーも。ってあれ爺さんは?」


ア「...さあ?それじゃあ私は先に行くから」


ム「さあってな...というか先に食べたのかよ」


一緒には食べたくない。


私は一足先に埋葬を始めた。


しばらくしてムニサツも来て、1時間ほどが経った頃だろうか


カ「まだまだ終わらんねえ」


カルゼルが来た。なんか濡れてる?


ア「...みればわかる通りまだまだかかりそう」


カ「そうか...仕方ない。私も手伝おうか」


ア「...昨日からなにがあったの?」


カ「別に、ただの気まぐれさ」


遠くでみていたムニサツは


ム「あれが、あいつの言う、ツンデレってやつか。爺さんだと気持ちわりいな」


ムニサツはニヤッと笑った。



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ア「...まさか昼までに終わるとは」


カ「わしの魔法便利だろ?」


カルゼルは魚を焼きながら自慢げに言う。


ム「爺さんが昨日と今日でここまで態度が違うとなんだか怖いな」


カ「はっはっは。別に何でもいいだろ。さあ焼けたぞ」


ム「そういやこの魚どうしたんだ?」


カ「え?いやー氷浸けにされていたからどうせならと」


そうしてお昼を食べ


カ「さあ行くぞ」


ア「...うん」


ム「そういや爺さん、この町に何かしたのか?何もわからねえんだが」


カ「安心しろ。手は打ってる。さあ行くぞ。裁断の壁へ」


この町には数日だけ。でも


ア「...」


ム「おい、大丈夫か」


ア「...平気」


涙がでそうになったけどそれを抑えて


ア「バイバイ」


そうして私たちはこの町を去った。

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