第18話 終焉 美しいものたち

サユは苦しそうな顔をして死亡した。


チ「貴様!いったい何をしたんだ」


カ「話は嫌いなのでは?」


私は手をパタパタと手を振りさきほどの煙を払った。


チ「今は理由を聞きたいんだ」


カ「そうだな。まあ言ってもいいぞ。殺したのはお前だ」


チ「なんだと...!」


私の発言にチナミラフはキレた。


チ「私は!娘を助けるためにあれこれと手を尽くして最適な方法、環境などをこの数十年間さがしてきたんだぞ。私のミスだというのか!」


カ「そうだと言ってる」


チ「いいや、違う。これは貴様が私の精神を壊すための嘘をいっているんだろ!」


カ「真実を受け入れれぬとはかわいそうに」


チ「貴様はまだ私を馬鹿にするのか」


カ「まったく、私に理由を聞きたいといってるくせにそれを否定されてしまったらどうしろというのだ...」


やれやれポーズをしたがその態度が余計に油を注いでしまったのか


チ「もういい。そもそもお前の存在自体が私にとって厄介だ。一刻も早く目の前から消えろ」


チナミラフはどこかから本を取り出し開くと


チ「魔王よ。私の助けにこたえてくれ」


おっなんだ。私に助けを求めるのか?


チ「そのお力添え、感謝する。魔王の古の力ポイズン・グライド」


そう告げると、紫色のオーラをチナミラフはまとい。


チ「カルゼルよ。貴様は普通には死ねまい。普通に生活していては味わえない苦痛を浴びながら死んでもらおう」


なんか目の色も黒くなっていてどこに目があるかわからなくなっており、というか目を開きながら笑ってもいるためどこぞのラスボスみたいな雰囲気も醸し出していた。


カ「おっと?」


体に痛みを感じるうえに、鍛え抜かれた体をもってしても毒が回っているのがよくわかる。パチモンの魔導書のくせにやるではないか。


だが


カ「見よ、この水色のオーラが見えるか?」


私は水色の魔力を使って毒を打ち消した。


チ「な!?禁術だぞ。なぜおまえなんかに魔王の力を打ち消せるんだ」


カ「先ほどから随分と変なことを言っているが一つ訂正しろ。魔王の力などほかのやつには使えない」


チ「何を言ってる?」


カ「いいか、魔王専用の技などはない。魔王は誰でも鍛えれば使えるような技を使いこなしているだけだ」


チ「そんなはずはない。この本が見えぬのか」


カ「そんな本よりもー?こっちのほうがいいのでは」


私はカルゼルの姿から魔王になった。そんなチナミラフは私の姿を見てくちを開けたまま驚いた。


魔「見よ。本物が違うと言っているのだ。そんな馬鹿な本を作った覚えも内容も意味不明だ」


チ「な、な、死んだはずでは...」


魔「私はそう簡単には死なんよ。あの大戦争を全線で引っ張った長だぞ?まあ今の時代を生きる者たちには少々わからん話だろうが」


チ「嘘だ。そうだ。お前はもともと嘘つきだ。魔王の姿に変身しただけであろうか」


魔「これ以上の証明は私には持っていない。それにここまで優しくしているがお前にそこまでの義理はない。もういいな」


私が魔法のモーションを構えるとチナミラフは慌てて、


チ「い、いやわかった。だがサユを殺したのは絶対に許さん」


チナミラフは慌てながらもスキルを構えた。魔王の姿を見ても怖気につかずにまだ私を殺そうとする姿勢は良き。


魔「まだ私を殺そうというのか。その威勢嫌いではないが、お前とは根本的な所で嫌いなんでな。まあサユの志望理由は聞かせてやる。ふふ」


私は下に落ちている桜の花びらを拾った。


魔「普通に生活しているうえでは、ただ綺麗の一言で済むが、物は使いよう。まさにこれがそう」


チ「桜だと?」


魔「これにはな、クマリンという...いやそんな細かい説明はいらんな。要するにこれには毒があるのだよ」


チナミラフは地面に散らばっている桜を見る


魔「少量ならば摂取しても人体に影響はないが、植物だと話は変わる。少しでも効果がよく発揮される。こんなの自然の世界では常識なのに」


チ「なるほどな。それを貴様が風魔法かなんかでアーティファクトと一緒に吸わせたのか」


魔「おいおい、まるで私殺したみたいに言うなよ」


チ「スキル発動「焦点・イッサンダー」


雷線が頭めがけて狙われるが首を傾けて避ける。


魔「まだ話は終わってないぞー」


チ「スキル発動「鉄の網」


チナミラフが召喚した網に捕まる。


チ「はあああああ!」


チナミラフがムニサツから奪った短刀を振る。


魔「暴れて冷静さがなさそうに見えて戦略はしっかりしているな。想定通りならその動きは完璧だ。だが」


私は網を強引に離して、チナミラフの首を手でつかみ上げる。そのままチナミラフの体を持ち上げる。


チ「ぐっ」


魔「私は魔王だ。常識やら普通の戦略が通じないことぐらいわかるであろう。さあておしゃべりはまだ済んでないぞ」


私は手に力を入れて首を強く握りしめる。チナミラフは首をつかんだ手を触る。


魔「一言で頭がいいと言っても色々なタイプの分野があるな。知能だったり、戦闘だったり、商才だったりなどなど、まだまだ種類はある。お前は医者として頭がいいな」


チ「だから、なんだと、いうのだ」


魔「面白くないか?人のことは詳しいくせに、自分のことは何も知らないからこんな目にあったんだ。桜のことだけだはない。貴様がサユに吸わせたこの地で桜の花びらを吸収してないと思うか?」


チ「!?」


魔「よくもわからんやつはたすけれるくせに自分の娘は助けれずにむしろ殺すなんてな!」


私は笑った。ただ爆笑した。そしてチナミラフを地面にたたきつけた。


魔「適切な治療さえすればあやつが生きてる世界線もあったのにな。ま、そん時はあいつが私のことを信用していたからそれはそれであんたは死んでいたが」


私はどこかから剣を取り出して、チナミラフの首に近づけた。


魔「さあて終わりだ。お前はここでたくさんの人の命を奪った。罪を償わなくてはならぬ」


チ「そうだな。まさかただ魔力が高いだけのおまえが魔王だったとはな」


魔「やっと信じたか。まあこの計画的な犯罪。もともとたくさんの人の命を奪おうとしたことは私は知っていたぞ?すべて見えていた」


チ「そうだったのか、ばれていたのか」


チナミラフはあきらめた顔をして、どこかすがすがしい顔で遠くを見ていた。


魔「この罪はおまえだけでは次ぐ会えない。よって、娘にも苦痛を味わってもらったぞ」


チ「そうか、そんな理由だったのか。すまないサユよ...」


チナミラフは涙を流した。


チ「申し訳ない、皆のものよ。巻き込んで...しま...って」


チナミラフは申し訳ないと思った瞬間ある一つの違和感を抱く


チ「なぜ、お前はこの作戦を止めなかったんだ?」


チナミラフは思った。もし止めていれば大勢の命が消えることはなかったのではないか?


魔「そんなもん、理由は一つだ。あの美しい花を見たかったからだ」


チ「は?まさかそんな理由で」


魔「いやいや、あれはとても美しくもうあれを超える美しものはないだろうなと私は思っているぞ。見る価値は十分にありすぎたものだ」


チ「貴様も人の命をなんだと」


魔「お前に言われたくないが、私的には花を見たかったからな」


チ「お前が止めていれば...いれば」


チナミラフは強く言えなかった。魔王が大勢を見殺しにして花を取るという異常な行為を言えなかった。なぜなら首謀者は自分だから。そもそも私がこんなことをしていなければこんな事件は起きなかった。私はこいつに倫理を教えれなかった。


魔「なあチナミラフ」


チ「なんだ?」


私はチナミラフの首を切った。


魔「なんでもない」


私はアサツがいる方向へ歩き出した。カルゼルへ戻り


カ「桜がきれいだな。死は美しいとはなんだか今ならわかる気がするな」


風吹く桜を浴びながら、そんなことを考えた。

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