第15話 朝食と花見

今日、アサツと一緒に花見をする予定だ。花見の場所はこの領地がそこそこに見えるぐらいの高さにある崖の上。


今日は未来の歴史として乗るであろう重要な日のため景色が良いところで眺めるのは絶対。正直今日はそれが起こる前までの暇つぶしで花見をするんだけど。


ドンドンドンドンドンドンドンドンドン


扉をノックする音が部屋に響いた。


ア「...カルゼル、起きて」


カ「ふっふっふー」


私がアサツの返事にこたえて扉を開けると何かにぶつかった音が聞こえた。


カ「大丈夫か?」


ア「あっあっあっ」


アサツが私を見て驚愕していた。そりゃ日頃の行いってあるけどそこまで驚かなくていいだろ。初日の朝だって私ちゃんと起きていたし。


カ「まったく、こんなことで驚いていてはこれからが大変になっちまうぞ?」


ア「...突然のことに変化が起きたらだれでもビビる。慣れていることに変化を起こさないで」


カ「その場合、わたしは朝はずっと寝てろって意味になるが...」


ア「...なんとかして」


ひっでえ横暴だ。まあ明日、明後日あたりからはもとに戻るけど


カ「とりあえず朝食を食べに行こうじゃないか」


ア「...改善なし」


なんか言われた気がするけど、無視無視。


というわけで食事処へ向かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



カ「そういえば昨日はどこに行ったんだ?」


ア「有名なお店ってところ」


カ「?、いや、その有名なお店名前は?」


ア「...いやだから『有名なお店』って名前」


カ「随分とふざけた名前だな」


ある意味有名になるな。


カ「ま、重要なのは名前じゃなくて味だな。どうだった?」


ア「口の中でコッテリした魚とさっぱりしたパンが絡み合う食事」


カ「朝はさっぱりした物が食べたいしなー。それに後で味の濃いもの食うから別の店にしよう」


ア「...後で?まあなんでもいいよ。どうせ私も同じ料理を2回も食べる気にはならなかったし」


カ「別のメニュー頼めばいいだろ...」


ア「...たしかに」


というわけで近くにある食堂に行った。


ア「...おーこういうところ初めて」


カ「そういやそうだったな。ここの場合はお店の人に注文して番号札をもらうって感じだな」


昔の学食式がここにもあるとは、どこの世界でも変わらんねー


店「お二人さんは何にします?」


カ「焼き鮭のみで」


ア「...のみ!?」


カ「そう、私はおかずさえもらえればいいし」


店「ま、なんだっていいさ。あなたは?」


ア「...私もこの人と同じで」


カ「いいのかい?」


ア「...ここ数日、カルゼルが美味しくない食事を作ることはないし自分でも食に妥協はしない雰囲気を出していた。つまり!このおかずだけも何かしらの意図があるに違いない」


カ「...なんだよ。ちゃんと人のこと見てたりとただボーと生活しているわけではなかったんだな」


ア「当たり前。王に成る者。人のことをしっかりと見れなくては上には立てない」


カ「いい心がけだこと」


そうして


鮭をもらって席に着いた。


カ「さあ、アサツよ。私がぱんをもらわなかった理由はこれだ」


そうしてアサツのめのまえに米を出した。


ア「...これは?」


カ「米ていうやつでな。まあいろいろと説明するのはだるいから手短にいうとパンの代わりだな」


ア「...これがねー」


カ「まあこの完成品にするには少し時間がかかるが」


そうしてアサツは疑いながら食べた。ま、その後の反応は察してくれ。日本人ならわかるだろ?


さあて私も早速いただくとしよう。


まず鮭から。鮭の噛み応え感は良く、ほどよく油が乗っていた。そこに温かい米と一緒に口に運べばもうめちゃくちゃよ。


とにかく旨い。そんな感情だけが頭の中に残り、口の中にうまみが広がった。


カ「ふーうまかった」


ア「...世の中にはまだまだ私の知らない美味しいものが残っているとは」


カ「さあて、食べたならさっさと行くぞ」


ア「...少しはゆっくりしていかない?」


カ「今日はいろいろと急いでいるんだ。いつ始まるかわからないしな。それに...


私が視線をほかの人のほうをちらっと向いて


カ「明らかにここだけおかしいもの食べているから周りの目が」


ア「...了解」


そうしていそいそとここを出た。



ーーーーーーーーーー



ア「...やっと着いた」


あれから約1時間ぐらいだろうか。崖を上りこの領地が一望できそうなぐらいの高さまで登ってきた。


それまでにイベントがはじまらなくてよかったと思っている。


カ「まったく、観察やら精神やら中身は成長しているのに、体力とか武器の扱いとかは一切成長してないな」


ア「...王に、はあはあ。そんなものはいらな い 」


息をあげながら答えた。


カ「いいや。どんな時代でも弱気王というのは臣下が忠誠をつかいにくいのがこの世界の常識だ。まあ弱くても覇気さえあればなんとかはなるとは思うが」


ア「...それを言われると納得してしまう自分がいる。なんでカルゼルのほうが詳しいのよ」


カ「はっはっはー。それは経験の差だな」


私はそういいながら地面に座ってお酒を出した。


桜にはワインは合わないから、前にお米でつくった老酒を出した。確か中国で始められたお酒だよなあ。これを最初に造った人は相当やばい奴だな。


にやりと笑いながらお酒をたしなむ。


ア「...なにそれ、初めて見るお酒」


カ「さっき食った白いものあるだろ?それを使って作られたのがこれだ」


アサツは驚いた顔をしてお酒を見た。


カ「飲むか?」


ア「...まだ駄目」


カ「無駄なところでまじめだねえ」


そう言って私は一升瓶を直のみする。


カ「ぷはああ」


ア「...豪快だ」


カ「お前にはこれでもやるよ。魔王国で作られている有名なジュース」


ア「...ありがとう」


アサツは魔法でコップの形をつくりそこによそって飲む


カ「ただ花を見ながらお酒を飲むのが面白いとはあんまりいえないかもな」


ア「...じゃあなんで?」


カ「普通ならって意味だ。今日は普通じゃない」


ア「さっきからもったいぶって、今日はなにがあるの?」


私はアサツの話を無視して町を見た。アサツはそんな私の反応を見て答えてくれないと察したのか同じく町を見た。


ア「...なんだか眠たくなってきちゃった」


アサツが目をこすりながらいう。


カ「いいや。違えよ。失神しようとしているんだ」


ア「...失神?」


カ「...要するに魔力を取られているってことだ」


そう私が言うとアサツが倒れた。


カ「そろそろだな」


酒を飲みながら町の人たちが次々に倒れていくのを見た。そこのまわりにいた人達はその異変に気付いていたがもう手遅れ。


しかし


ム「大丈夫かー!」


ムニサツが全員の心配をしていた。ムニサツは魔力が高いため、ほかの人よりも全然起きて入られたんだろうな。


そんな考察をして時間をつぶしていたら。


チ「とうとう完成した。おお、これでようやく」


突然チナミラフと超絶でかい葉っぱが生えていた。


チナミラフの笑いに対して私もニヤツキ様子を見た。

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