第10話 終わりと始まり
女の子「...お願いがある。私を助けて欲しい」
カ「助けて欲しい?」
女の子「...そう」
そう言う目の前の女の子は綺麗で金髪、青目だけど明るい性格には見えないどこか暗い。しかし目を見ればどこか覚悟が決まってるそんなふうに見えた。
カ「内容によるかなあ」
なんか訳ありっぽいしどんな依頼でも面白そうだけどね。
女の子「...私の国を返して欲しい」
カ「国?」
女の子「...そう、私の名前はアサウ・ガルガロット」
カ「下も名乗るとは珍しいなあ。というかガルガロットと言うと人間が住んでいるところのどこかの王族だったな」
魔人が住んでいるところには魔王一人の一国制度になってて細かい領地は貴族制度を用いて管理している。
しかし人間が住んでいるところは複数の国に分かれていて戦争の時だけで一致団結みたいな感じで動くらしい。要は王が一人か複数ってことだな。
他にも特殊な種族だけで住んでいるところもあったりするが私は外部に関しては戦争以外じゃそんなに出なかったのでめちゃくちゃ詳しいってほどじゃない。
でも異世界なんだしそう言った住処行ってみたいよなー。
ア「...人間国に詳しいね」
カ「旅人ですので」
てきとうにでっち上げる。
ア「...ならば話は早い。ガルガロット王国の前国王って知ってる?」
知ってるような知らないような。全部ルルに任せていたからいまいちとしか。
ア「...知らないんだね。王様だからしょうがないけどさ。それでね。王様...父上が最近亡くなってしまったの」
カ「そりゃご愁傷様で」
ア「...ごしゅ?...よくわからないけど、でその後に王の座を争って姉上と争ったの」
カ「で、負けたのか」
ア「...うん。姉は国民を考えないタイプで私は国民を重んじるタイプ。この国のように国民投票ならいいけど、私の国は王座で争うとどちらかが手を引かない限り殺し合い」
カ「随分と自分のことを綺麗に見せているんだこと。ま、事実なら色々と可哀想だね。わーお、そりゃ物騒だ」
昔の天皇争いも色々とあったからなあ。ああ言うのってなんか年上のほうが勝ってること多いよな。多分貴族を先に丸めこめたからかな?
ア「...貴族たちは姉上の味方だから、兵士の質や人数で負けた」
カ「まあ貴族からしてみれば姉上の制度のほうが何かと都合良さげだもんな」
ア「...その後私は捕まって奴隷商人に売られたけど、なんか私を他の商人?に盗まれて。あなたたちが解決してくれたから自由の身だけど」
カ「なるほど、それが一連の流れか。じゃあ自由の身なんだしてきとうに田舎に行ってのんびり過ごせば?」
ア「...それも考えた。もうどこか遠いところで一人のんびり過ごそうかなと。でもそれはダメ」
カ「ダメなの?」
ア「...ガルガロット王国を見捨てることはできない。姉上に代わったから多分国民は今虐げられている。それは許さない」
アサウはそう言うと立ち止まって真剣な目でこちらを向いた。
ア「私だけが逃げるなんてダメ!絶対に助けに行く」
私はそう言われて少しだけニヤリとして
カ「いい心がけだな。まさに理想の王様だな。で、私にどうしろと?」
ア「...私を王にしてほしい」
私たちは歩き出して
カ「なんで私なんだい?私はGランクのしがない旅人だよ。そういった問題は前に助けてもらった兵士とかに頼むべき案ではないのかな」
ア「...それはそうかもしれない。でもあの人だけの力じゃ足りない。国との戦争ならもっと力を貯める必要がある。それだったら色々と旅をしてそうな貴方の方が人脈とかありそうだし」
別に私に力がありそうとかじゃなくてそう言った観察力があるからこうやって話かけてきたのか。
カ「それでもラツカは強い。私も長年生きてきたがあれほど強いやつはそうそうはいない。なぜ私にだけこんな話を?」
ア「...子供たちが好きだったり、お嬢様とか言ってたし多分あの人は他の人に丸投げしてきそう」
おーなんとなくわかるわ。
しかしそうか、王になりたいのか...
私はチラッとアサツの方を向いた。
...なんかこいつ胡散臭いんだよな。動きとか話し方とか色々。ただガルガロット王国の娘がやばい奴とは言われていたしなあ。話の内容は間違ってないと思うんだよな。
まあ間違っていたとしても王の座を手助けってまさに暗躍者の仕事だよな?知り合いにめちゃくちゃやばい奴がいるとでも言って私は暗躍ムーブができる。
王を裏で操る謎の人物...かっよすぎじゃあねえか!?
いける。これは間違いない。ただ近くにいる私は相当怪しまれるから幻影かなんかでこいつの近くにずっと置いておけば...闇の、裏の、謎の、ふっふっふ。誰にも正体はバレない...!
カ「いいだろう。ちょうど知り合いに当てがいるし手伝ってやろう」
ア「...本当に!?」
カ「ああ、我々はこのままガルガロット王国に直行でいい。そいつも確か近くにいたはずだしな」
そんなことを話していたら宿に着いた。
カ「おーいムイ、部屋を一つ追加で」
ア「おかえりなさーい、って拉致ですか?」
カ「んなわけあるか!」
ーーーーーーーーーー
ぐーぐーぐーzzzZZ、ぐーぐーぐーzzzZZ。それは寝音。
可愛い女の子の寝息かと思った?残念。ジジイの寝息です。朝に弱い私は起こされなかったり用事がない限り昼までは寝る。
しかしそこまでは許してくれなかった。
『ドンドンドン』扉をノックする音が部屋に轟いた。
ア「...カルゼル寝過ぎ」
カ「わたしゃあ朝は弱いんだ。もっとゆっくりせんかい」
ア「...私はお嬢様、そんな不健康な生活を送るわけがない」
ちっ、そうだった。しょうがなく起きて魔法で服装と髪型を整えて部屋を出た。
カ「朝は寝てろ」
ア「...違う。朝は起きるもの」
カ「私は正論を聞きたいわけではない。でそんなお嬢様は何を食べたいですか?」
ア「...なんか気持ち悪いからアサツ様でいいよ」
カ「...どこまでも偉そうなんだな」
ドヤ顔でそんなことを言われても困る。
カ「アサツさんでいいや。でどこ食べに行きたいですか?やっぱり高級レストラン?となるとファルンとかになるけど」
ア「...いや待って、ここは庶民がよく行くお店にしよう」
カ「いいのか?」
ア「...こういったお店を使うのも冒険の醍醐味」
カ「お嬢様にやぁ外の世界はなんだって冒険か」
そこで食事を取り、私もちょっとした用事があったので寄り道をした。
ア「...まさか、ここって」
カ「ああ想像通りの冒険者ギルドだ。依頼と言っても簡単なやつだがちゃんとやらないとな」
ア「...どんな荒れ狂い者がいるのかワクワクする」
私が想像したのは180度違ったけどな。
カ「じゃあ入るか?」
ア「もちろん!」
扉を開けると何人かに見られた。というよりアサツを見ている。
アサツは見られているのがわかってるのか少し微笑んでいた。こいつはそんな目で見られるのが癖なのか?
そんなことを思いながら掲示板から薬草集めという初心者テンプレ依頼を受け取り受付に渡す。
受「カード」
カ「はい、これですね」
依頼をカードに貼り付けて、
受「はい」
カ「どうも」
相変わらず愛想がない。
とりあえず用事はないのでそろそろ行こうとしたところ
チ1「おいおい爺さん。なんだか随分と可愛い連れがいるじゃねえか?」
前に絡まれた四人組に囲まれた。
アサツは絡まれたのを見て、ワクワクしていた。まるでこれが荒れ狂れ者かと言わんばかりに。
チ2「おい爺さん、わりぃことは言わねえ。そいつをここに置いてけ」
カ「なぜですか?」
チ1「なぜってそりゃ」
すると息を合わせたように
チ1、2、3「誘拐されそうになってる子供を見て助けないわけないでしょうが!」
四人目のチンピラはうんうんと頷いていた。
アサツはポカンと顔をしていた。そりゃそうだ。急に善人みたいなことを言うんだもんな。
チ1「おい嬢ちゃん。こいつに何か悪いことされてないだろうな?」
チ3「安心しろ、俺たちが責任を持って君を保護しよう」
ア「え?あーはい?」
チ2「おら爺さん、お前、未来ある若者の人生を壊して楽しいか!」
カ「ちがーう!」
私は大声で言った。
カ「私が誘拐やら拉致をするわけないでしょうが!こいつはただの孫だ」
チ1「え?そうなのか?」
ア「え?あーはい?」
チ2「おいおい爺さんだったら最初からそう言ってくれよ」
カ「お前らが勝手に勘違いしたんでしょうが...。それに誘拐した子供をここに連れてくるわけないでしょうが」
チ1、2、3「あっ、確かに」
手をポンと叩き納得する四人。
こいつはなんで喋らないんだ。
カ「まったく、ほれ行くぞ」
ア「あっ、はーい」
私はアサツとギルドを出て門へ向かう。
カ「いつまで呆けているんだ」
ア「...なんか全然想像と違くてむしろ優しいからびっくりして」
カ「まっ、そりゃそうでしょうね」
ア「...世界を知らなすぎた」
カ「...これから知ればいいのでは?」
ア「...だね」
門に着くと知っている顔がいた。
ラ「よう爺さん」
カ「何でここにいるんだ?」
ラ「今日でここを出るってなんとなく思ったから、勘が当たったんです」
カ「どうでもいいことに運を使ってんな、でその娘さんは?」
7歳ぐらいの子を見ると
ラ「紹介しましょう!この方が我が君主リンシュ・パラリー嬢です」
リ「どうもお初にお目にかかります、この度は事件に解決してくださり、ありがとうございます」
青髪で可愛らしいロリをとても感じさせる見た目とは裏腹に丁寧な挨拶と口調、そして身分関係なく腰の低さを7歳からやれている見て将来良い人になるなと感じた。
カ「これはどうもお初にお目にかかります。私の名はカルゼルと申します」
こちらも深く挨拶をする。
カ「すいません、リンシュ様ちょっとこちらへ」
ーーーーーーーーーー
カルゼルが二人に話しかけているのを外で見ていた。するとカルゼルはリンシュと聞こえない程度に移動した。
私はラツカという男と二人きりになってしまった。
ラ「やあ、君は...うん。あの時の子だね」
カ「...ええ、そうです」
ラ「どうして、カルゼルさんとご一緒に?」
カ「...私を自宅まで送ってくれるので」
ラ「そうですか」
特にこれと言った関わりもないのでこれで話は終わり方思ったらラツカは何か考える仕草をして私に耳打ちをしてきた。
ラ「今、ガルガロット王国は亜人族を奴隷にしようと考え中です」
私はその言葉を聞いて驚いた。
ア「それは本当ですか!?」
そんなことをしたら今後、他の王に代わっても亜人族とは友好な取り引きができなくなる。
ラ「ええ、取り引きよりも奴隷にしようと今の国王は考えているらしいんですよ。と言ってもおそらくまだ実行はしないでしょうから3ヶ月ほどの猶予はありますよ」
ア「...なんでそんなことを知っているですか?」
ラ「ふふ、なぜでしょうね」
私の正体にすぐ気づきこんなやばい情報を持っている時点でただ者じゃない。でもこれを伝えるってことは少なくとも敵ではないので、目を逸らした。
ア「...情報提供感謝する」
ラ「まあ今後どうなるかは見ものですね」
ア「...それはカルゼルの問題」
ラ「彼ならなんとかできますよ」
そう言ってカルゼルの方を見ると何やら魔道具を渡していた。そして
カ「よしでは行こうか、じゃあなラツカ。そしてリンシュ様、もしもの時は」
リ「ええありがとうございます」
ラ「それではお元気で」
私もぺこりとお辞儀だけしてこの街を出た。
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