aduniad
報告書13
今日は怪我した野良犬を治してあげた、動物には好かれる自信があるのに凄く嫌がられてしまった。何度か噛まれたけど傷は直ぐに治ったし、あの子が元気になって良かった。
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報告書420
今回含め、今までにあった140件の動物捜索の依頼のうち62件がブランコの犬猫だった。この子達は私が触れる時は嫌がらないのに治癒を付与しようとした時のみ全力で拒絶した。ブランコは誰かに治療されるのを嫌がる性質があるのかもしれない。試行回数を増やして検証してみようと思う。
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報告書1760
依頼人…26歳、ブランコ、捜索依頼を出した猫に対する異常な執着あり。前世で深い繋がりを持ったものだと推測。
定説より治癒能力の拡散・収縮を行い黒猫のブランコを確保。取り出した記憶の欠片は██のものであると確認。
依頼達成から1週間後、店の前に黒猫の亡骸を確認。傍に██████と手紙を発見。手紙の内容は以下の通りである
──この糞親父に復讐する機会をくれてありがとうございました。それと、自分のいる地域だとこの惨状の死体の処理が難しいので追加依頼として処理をしてくれませんか?依頼料はこれでいいですよね──
◆
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「──で、何が死体の処理をしろだよあの女…自分がした事の始末くらい自分でしろよ」
不満そうな様子で手紙をクシャッと丸めた蒼は、それを後ろに放り投げた。それを見ていた真矢は今回の依頼料を頬張りながら言う。
「ゴミ増やさないでよね。ってか何が嫌なの?ちょうど切り刻まれてるし、そのサイズならあんたの空間操作で適当に捨ててこれるでしょ」
真矢は言いながら「まぁ切り刻まれてんのが嫌なんだろうけど」とは思いつつ言い切った。これで処分係が自分に回ってきたらたまったもんじゃない。
「…お前はいいよな、欠片が手に入って?その謎の麺も貰えて」
「しょうがないでしょ。記憶の欠片貰っといてこれ以上の報酬をふっかける訳には行かないんだから。あとカップメンね、文句あるなら1回食べてみれば?美味しんだから」
「やめろ、近づけんな。俺はそんなもん食わない」
蒼が席を立って部屋に戻ろうとした時だった。
『こんばんはー』
1人の女性が店の中に入ってきていた。真矢はともかく、蒼がここまで人の気配を察知出来ないのは異常だ。外見は一般人そのものだが世間で言う一般には当てはまらない人間なのだと2人は瞬時に理解した。
「…珍しいわね」
そして過去1000年に遡ってもブランコが1ヶ月以内に2件依頼してくるなんて事がは無かった。真矢は異常事態を察知したが、それより早く蒼が行動に移した。
「お前はなんだ」
剣を取り出した蒼は店の入り口付近にいる女の喉元に剣を突きつけていた。
『……あれ?』
ぽかんとした顔をした女は状況が分かっていないようだった。
「蒼、やめて。お客様でしょ」
蒼は剣を下ろそうとしない。だが女はその声を聞いて瞬時に真矢の方へ顔を向けた。真矢と目が合い、泣きそうな表情になったと思いきや直ぐに持ち直して落ち着いた様子で話し出す。
『不審なようならこのままでも大丈夫です。あぁそう、まず自己紹介を。私は“”結宮葵ゆみやあおい“”です。危害を与えようとかは考えてなくて、この人を探して欲しくて来ました。』
結宮葵は写真を取り出して蒼に向けて見せた。真矢の位置からはよく見えなかったが蒼がその写真を見てから周囲の空気が変わるのを肌で感じた。蒼は結宮葵に突きつけていた剣を更に押し込めながら震える声で言った。
「…お前は、何だ」
結宮葵が見せてきた写真には1人の男が映っていた。正面を向いておらず、おそらく盗撮と思われる構図だ。真矢がその写真を覗こうとした時、蒼が結宮葵に切りかかろうとした。
「蒼!やめっ…」
真矢は止めに入ろうとしたが割れるような頭の痛みによって膝をついた。結宮葵が外に逃げるのを蒼は追いかけたが、真矢は立ち上がることが出来ずに遠のく背中を見ていることしか出来なかった。
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