第28話 登校した結果
「すみません、少々コンビニへ寄りたいので、こっちから行きませんか?」
「あぁ、別にいいぞ」
通学路とは別の道を進み、マトイが目指しているコンビニへ向かう。
今日からはマトイがお昼のお弁当を作ってくれているから、特にコンビニへ用とかはないはずだが………一体何を買うつもりなのだろうか。
それから約5分、コンビニの前にて一緒に入ろとする俺を、マトイが止める。
「あなたは外で待っていてください。すぐ終わりますから」
「え? 飲み物でも買おうと思ってたんだけど………」
俺はこめかみ辺りを人差し指でポリポリと掻く。
「なら、私が買って来ます。何を飲むのですか?」
「ココア………」
「分かりました。待っててください」
「あっ、おい………お金」
俺がバックから財布を出そうとしている間に、マトイはスタスタとコンビニの中へ入って行ってしまった。
コンビニの中には少なくとも店員さんが1~2人は居るが、そこまでして見られる事に気を使う必要は………あるのだろうか。
もっと普通にしててもいいと思うんだけどな。
「………金は後で渡そう」
☆☆☆
マトイがコンビニに入ってから3分も経たない間に、マトイが手に2つの紙パックを持ってコンビニから出て来た。
「はい、ココア。これで合ってますか?」
「おう、ありがとう。合ってるよ」
「それなら良かったです。さぁ、行きましょう」
マトイは俺に紙パックのココアを手渡す。そして、マトイはもう1つの紙パックからストローを外すと、ストローの挿入口からストローを刺す。
マトイが手に持っている飲み物は………牛乳だ。
突き刺したストローの先端に、プリッとした柔らかそうな唇をつけ、チュ~ッと牛乳を吸い上げる。
「マトイ、牛乳飲むんだな………」
「えぇ。美味しいですし、日課ですから」
「日課………?」
少し引っ掛かるところがあったが、牛乳を飲みながら歩き始めるマトイを見て、俺はふと思い出す。
「あっ、そうだ。140円、お釣りはいい」
「………料金は結構です。お気になさらず」
バックから財布を取り出し、140円をマトイに手渡そうとするが、マトイは受け取る事なく再び歩き始めた。
「………? 何してるんですか瑞希さん。早く行きますよ」
「………あぁ、すまん」
『さん』付けで呼ばれた。ずっと『ミズキ』って呼び捨てされてたから、なんか違和感がある。
小銭を財布に戻して、財布をバックの中にぶち込んだ俺は、歩いて行くマトイの後ろをおいかけ、再び肩を並べて登校を再開した。
☆☆☆
目的の学校がある坂が見えてきた。だがしかし、辺りは薄暗く空は雲っていた。家を出て時も、少し曇り気味ではあったが、完全に曇で空が覆われた。
「なんか、天気悪くなってきたな」
「そうですね。それに、今日はやけに人が居ないですね。車もほとんど通っていません」
コンビニから出た後、すぐに大通りに出てここまで歩いは来たが、時間が少し早いとは言え、車の通りも全くなかった。
とても静かだ。
妙に思いながらも、俺とマトイは歩き続け、学校の坂の下までやって来る。そして、坂に一歩踏み出したその時だ。
………ポタッ。
「………ん? 雨?」
空から一滴の雫が落ちてきた。そして、一滴………また一滴と雫が落ち始め、次第に雨が強くなってくる。
「うわっ!? 急に降りだしやがった!?」
「瑞希さん、急いで登りましょう………!」
この急な坂をダッシュで登るのは、体力をエグイほど消耗するが、緊急事態だ。つべこべ言ってられない。
俺とマトイは駆け足で坂を登り、下駄箱まで猛ダッシュ。下駄箱前に着いた頃には、すでに雨はどしゃ降り。
見事に俺とマトイはずぶ濡れ状態。
「参ったなぁ………こんなに雨が振るとは思わなかった」
「………制服がびちょびちょ。瑞希さん、タオルとか持ってないですよね?」
「あぁ、雨なんか降ると思わなかったから、タオルどころか替えすら持ってきてねぇ」
まだ4月に入ってそんなに経っていないのに、この時期に大雨とは珍しい。
替えがない以上、濡れたままではあるがこの状態で居なければならない。見た感じ、まだ誰も来てはなさそうだが、制服を全部脱ぐ訳にもいかん。
「とりあえず、教室に行こう」
「そうですね。ブレザーだけでも乾かしたいです」
まずは学校指定の上靴に履き替える必要がある。俺は自分の下駄箱へ向かうべく、閉じてある扉の取っ手を握って引っ張る。
だが………なぜだ。開かない。
朝の7時になった地点で下駄箱前の扉は解錠されているはずだ。なぜまだ鍵が閉まった状態なんだ!
「どうしたんですか?」
「開かない………これじゃあ上靴に履き替えられんがな」
「おかしいですね………すでに開いている時間のはずですが………学校のホームページを見てみます」
マトイはバックからスマホを取り出すと、電源を入れて学校のホームページを調べる。
ホームページからお知らせ事項のところをタップし、お知らせ内容がズラッと表示される。そして、一番上の欄に、『NEW』とマークがついたお知らせを発見する。
『本日、朝7時以降より大雨警報が出た為、臨時休校とさせて頂きますので、各生徒は家から出ないようにお願いします。なお、状況によっては明日も休校とする可能性があります。再度お知らせをしますので、お待ちください』
「だそうです。瑞希さん」
「おぉ………マジか」
今日が休校と言う事を知り、頭を悩ませる俺。
「………雨、当分このままでしょうね」
「そうだな。雨宿りしてても意味ねぇなこれ」
全身びちょびちょな姿のまま、俺とマトイはザーザーと降る雨を眺める。
さて、どうしたものか………。
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